ドッグフード

子犬のフードはどう選ぶべき?特徴や選び方のポイント

執筆者:葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師 ...プロフィールをもっと見る

お家に子犬を迎えることは、とても楽しみな出来事ですよね。

「どんなグッズを選ぼうか」「何をしたら喜んでくれるか」を考えるのもワクワクする時間でしょう。

その中でも、とくにしっかりと選びたいのが「ごはん」です。

健康に体を維持するために欠かせないごはんは、愛犬にとって最適なものを与えてあげたいものです。

では、どのようなポイントに気をつけて選べばよいのでしょうか?

フード選びの前に気をつけたいポイント

ごはんを食べる目的は「美味しく楽しむこと」はもちろんですが、それだけではありません。

健康を維持し、とくに子犬にとっては元気に成長するための栄養素やカロリーを摂取する目的があります。

フードトラブルで健康を害してしまうおそれもあるため、まずは愛犬の健康状態やこれまでのごはんの内容をしっかりと把握しましょう。

食べているごはんの内容

子犬がはじめてお家に来るとき、直面しやすいのがごはんのトラブルです。

ペットショップやブリーダーさん宅などで食べていたごはんとは違うものに突然切り替えると、お腹がびっくりしてしまいます。

その結果、下痢や嘔吐などの消化器トラブルにつながるおそれがあるのです。

お家に迎えた当初は、できるだけお迎え前に食べていたものと同じものを選ぶことをおすすめします。

環境に慣れてきたら、徐々に変える予定のものを混ぜ込み、少しずつ割合を増やしていくようにしましょう。

食べているごはんの回数

成犬になると、基本的に朝と夜の2回ごはんを食べますが、実は離乳したての子犬たちは3回〜4回に分けてごはんを食べることが多いです。

これは、消化器の発達が未熟なことに加えて、栄養素や熱量が成長に必要であるためです。子犬は低血糖、いわゆるエネルギー不足の状態に陥ってしまうことがあります。

低血糖は、状態が進んでしまうと死に至る危険性もある怖いトラブルです。

そのため、一回に少量しか食べられない子犬たちは、ごはんを数回に分けて食べなければなりません。

いま安定して維持できているごはんの回数や一回量を、しっかりと把握しておきましょう。

お腹のコンディション

子犬期は、消化機能も未発達で不充分なため、温度差や疲れなどが原因で消化器トラブルを起こしやすいです。

また免疫力も低く、同じような子犬がたくさん集まる場所では、消化器に感染する寄生虫の感染も蔓延してしまうことがあります。

お迎えする前に、お家に来る子犬のお腹のコンディションを確認しましょう。

病気でなくても、体質として消化機能が弱く、下痢や嘔吐を繰り返しやすい子もいます。

寄生虫の感染の有無は、事前に検便をして確認をしてくれる場合もあるでしょう。

それでもお家に来てからの環境変化で体に負荷がかかり、消化器症状が現れてしまうケースもあります。

トラブルがあった際に慌てないように、事前にかかりつけとなる動物病院を探しておくと安心です。

子犬用のごはんとは?特徴について

トラブルを避けるのはもちろん、より健康に成長してもらうためにも、最適なフードを選んであげることが大切です。

しかし、たくさんのフードが市販されている中で、お家に迎える子犬にとって最適なものを選ぶのは至難の業かもしれません。

子犬用のごはんには、子犬の成長に欠かせない工夫がたくさん盛り込まれています。どのような特徴があるのかをチェックしていきましょう。

カロリー

日々の生活をするだけでも代謝には熱量が必要です。

加えて、子犬は成長して体を大きくさせ、機能も発達させる必要があるため、成犬よりも多くのカロリーを摂取しなければなりません。

しかし、子犬は消化機能がまだまだ未発達です。

子犬用のフードは、より効率よくカロリーを摂取できるよう工夫がされています

組成

成長期には、骨や筋肉をより強固にして、体の機能を充分に発達させる必要があります。

そのために欠かせないミネラルやビタミン、そして良質なたんぱく質が多く含まれているのも子犬用ドッグフードの特徴です。

成犬用のフードでは、子犬用と比較するとこれらの組成が不充分であることが多く、栄養不足になってしまうおそれがあります。

しっかりとした体づくり・機能づくりのためにも、月齢にあったフードを選んであげましょう。

性質

前述したように、子犬期には効率よくエネルギーや栄養素を吸収することが重要です。

消化機能が未発達な子犬にとって、消化吸収しやすいかどうかもフード選びのポイントといえます。

子犬用のフードは、粒が小さく、胃に到達したときに細かく分解されて負担になりにくいなど、子犬の消化機能に見合った性質を持っていることが多いです。

また、消化機能がとくに弱い体質の子犬には、療法食でも成長に必要な栄養素や熱量が摂れるような性質を持っているものもあります。

食べやすさ

成犬に比べて噛む力が未発達な子犬にとっては、食べやすさも大切です。

つぶれやすい硬さになっていたり、ふやかして与えることが多いため、吸水しやすいようになっていたりするものが多いです。

ただし、ふやかして与えることは、消化器への負担は軽減できますが、歯の汚れの付着がしやすいデメリットもあります。

成長に応じて徐々にフードのふやかす時間を短くするなど、硬いものを食べる練習が必要になるでしょう。

最初はふやかしで与えるため、食べやすさまで考慮する必要はありませんが、硬さに慣れさせていく段階で食べやすいフードに切り替えてあげることも検討してください。

体質に合っているかな?気をつけたい日々の変化

与えるフードが決まったら、本当にそのごはんがお家の子に合っているかを確認すべきです。

しかし、初めてわんちゃんと生活する飼い主さんは、言葉を話せないわんちゃん達の何を見て判断すればよいか混乱してしまうこともあるでしょう。

子犬たちを以下のポイントで毎日観察すると、健康状態がだんだんわかってきます。

排泄

食べたものが栄養として吸収されて、残りかすとして排出されるのが便です。

健康状態を知るために、毎日の排泄の状態を把握しておきましょう。

良いうんちとは、体に必要な栄養素や水分を吸収され不要なものが出てきたものであり、水分をあまり含まない固形のものと言われています。

取り除く際に排便回数や便の状態を確認する習慣をつけましょう。

水分を多く含んでつかみにくかったり、悪臭が残ったりする場合は、消化吸収が効率よく行われていない可能性が高いです。

体重

子犬がごはんを食べる一番の目的は、「健康を維持し、しっかりと成長すること」です。

週に1回程度、体重をはかる習慣をつけましょう。

子犬の時期ではきちんと成長できているか、成犬になってからは肥満にならないためにも大切です。

小型~中型犬の子犬であれば、ペット用の体重計や人間の新生児用の体重計に乗せてはかることができます。

大型犬の場合は、人間用の体重計に抱っこをした状態で乗り、その後に飼い主さんだけが体重を測って、引き算をする方法が有効です。

家庭ではかることが難しい場合は、月に1回程度動物病院を受診して、体重をはかってもらってください。トリミングサロンでお願いするのもよいでしょう。

成犬になってからであれば数ヶ月に1回でも充分肥満は予防できますが、子犬の時期はごはんの量が成長に見合っているかを確認するためにも、こまめに体重をはかる必要があります。

肉付き

成長に見合ったごはんの量や質を選べているかは、体重だけでは評価できません

体に適度な筋肉や脂肪がついているか、肉付きを確認する必要があります。

このような評価の指標をボディコンディションスコアと呼び、痩せ気味から肥満までを5段階で評価します。

とはいえ、チェックする項目がどんどん増えて、日々こなしていくのは、忙しい飼い主さんにとっては大きな負担となるでしょう。

そこで、スキンシップをとって撫でたり、抱っこをしたりするときに、一緒にお肉の付き方をチェックするのがおすすめです。

わんちゃんが家庭でも病院のように台に乗せられて、体の隅々まで触られたり、じっと見られたりすると、ストレスを感じてしまう場合もあります。

抱っこをしたり撫でたりしながら、肋骨や背骨が触れるかどうか確認してみてください。

理想的な肉付きは、脂肪が薄く存在し、肋骨や背骨が触れられるくらいと言われています。

肋骨や背骨の存在が目に見えて確認できる場合は「痩せ気味」、逆に脂肪で埋もれていて肋骨などが触れない場合は「肥満気味」であることが多いです。

困った……お家に来たばかりの子犬が起こしやすいごはんトラブル

お家に子犬を迎えて、適切なごはんを選び、毎日のチェックを欠かさず行うようになっても、避けて通れないのが「ごはんトラブル」です。

急に直面するとどうしたらよいか焦ってしまう飼い主さんも多いでしょう。

ここでは、よくあるごはんトラブルとその対処法についてご紹介します。

食べムラ

お家に慣れてきて、飼い主さんとの関係もだんだんと完成してくると、わがままを言い始めるわんちゃんもいます。

たとえば、「美味しいごはんを持ってくるまで食べない!」とストライキをする、おやつの時間は食欲旺盛なのに、ごはんの時間になると急に食べるスピードが遅くなる・食欲がなくなる、などは良く聞く話です。

かわいいわんちゃんをつい甘やかしてあげたくなる飼い主さんは多いでしょう。

しかし、このわがままに付き合ってしまうと、「美味しいものは食べる」「自分が嫌いなものは食べない」という食べムラにつながってしまうおそれがあります。

しつけの一環として、わがままから食べムラにつながっている場合は、要求に応じず、わんちゃんが食べるべきものを与えるようにしましょう。

そのためにも、幼い頃からおいしいおやつや人間の食べ物を与えるのは控えるべきです。

また、普段からわがままなわんちゃんでも、精神的な食べムラだけでなく、何かの病気のSOSサインかもしれません。

食べムラと併せて、元気がないなどの変化が見られる場合は、早めに受診しましょう。

消化器トラブル

消化機能が未発達な子犬たちは、少しの変化でも消化器トラブルを起こしがちです。

疲れや温度差などの自身の体調の変化はもちろんですが、急なごはんの質や量の変化などでもお腹がびっくりしてしまい、下痢や嘔吐などの症状につながることがあります。

ごはんを変える際は、少しずつ新しいフードを混ぜ込み、割合を増やしていくなど、お腹がびっくりしないよう工夫をすることが大切です。

また、コストパフォーマンスをよくするために、大袋を買って与える飼い主さんも多いですが、とくに夏場は脂質が酸化してしまい、劣化をして消化器トラブルを引き起こすこともあります。

人間と同様、劣化したごはんを食べることは下痢や嘔吐などの消化器トラブルにつながるだけでなく、肝臓などの内臓への負担も加わる場合があるため、注意しなければなりません。

品質の劣化が起こらないよう、食べるスピードに見合ったものを選んだり、大袋のものは小分けにして真空保存をしたりなどの工夫をしましょう。

万が一下痢や嘔吐などの消化器トラブルが生じた場合は、できるだけ早めに受診してください。

悪化すると、栄養失調や脱水症状となり、最悪の場合死にいたる危険性もあります。

とくに体力の少ない子犬は、消化器トラブルによる体力の消耗が命にかかわることもあるため、十分に気を付けましょう。

食べ過ぎ・痩せすぎ

食べ過ぎ、および痩せすぎも起こりやすい問題です。

成長期の子犬たちは、成犬よりも多くのカロリーや栄養素を必要とします。

とはいえ、ごはんの量が多すぎれば、簡単にカロリーオーバーになり、肥満につながってしまいます。逆に、量や質が体の成長に足りていなければ、栄養失調を起こしてしまうでしょう。

フードのパッケージには、体重や月齢に見合った適切な給餌量が表記されています。

肥満や栄養失調になってしまうのを防ぐためにも、この給餌量をもとにごはんを与えるようにしましょう。

ダイエット中や急激な成長のスピードで、与える量に自信がない場合は、かかりつけの獣医師の先生にパッケージの表を見せて相談してみてください。

まとめ

ごはんは美味しく食べるだけでなく、健康な体づくりのために欠かせない要素の一つです。

成長期の子犬たちがしっかりとした体を作るためには、適切な質や量のごはんを与えなければなりません。

飼い主さんには、子犬たちが成犬になるまでに、より健康的で良い体づくりをサポートしてあげる責任があります。

健康チェックも兼ねて、ごはんが合っているかを日常的に確認する習慣をつけましょう。

最初は負担に感じるかもしれませんが、スキンシップの一環にするなど、わんちゃんと飼い主さんが楽しみながら行えるような工夫を見つけていってください。

参考:

飼い主のためのペットフード・ガイドライン – 環境省

ABOUT ME
葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。
獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。
開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。
皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、得意分野とさせていただいています。
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