病気・ケア

【獣医師執筆】犬が自分の手を舐めるのはなぜ?原因と対処法・おすすめフードを紹介

執筆者:松本 千聖
獣医師。岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師とし ...プロフィールをもっと見る

「愛犬がずっと手(前足)を舐めている」

「触るたびに手が濡れている」

「手の毛の色のみ茶色くなっている」

こうした状況にお困りではありませんか?

猫にはグルーミングのために自分の手足や体を舐める習性がありますが、犬にはありません。

そのため、上記のような様子が見られた場合は、愛犬の健康に何らかのトラブルが生じている可能性があります。

今回は、犬が自分の手を舐める原因と対策、おすすめフードを紹介します。原因に合わせた対策を講じて、愛犬の健康を維持しましょう。

犬が自分の手を舐める理由

猫とは異なり、「手を舐める」行為は犬本来の習性によるものではありません。

犬が手をずっと舐めているときに考えられる主な原因は以下のとおりです。

  • 手にかゆみや痛みが生じている
  • ストレスを抱えている
  • さみしさを紛らわせている

それぞれ詳しく解説していきます。

手にかゆみや痛みが生じている

私たち人間がかゆいときに患部をかきむしったり、痛みがある部分に手を置いて撫でたりするように、犬は手に感じているかゆみや痛みなどの症状を和らげるために舐めることがあります。

愛犬が手を舐めている場合は、まず手が赤くなっていないか、ケガをしていないかなどを確認することが大切です。

また、直前に段差から飛び降りたり、抱っこしていて思わず落としてしまったりしていないか、思い当たる行動がないかを考えてみましょう。

愛犬の痛みに気づかず悪化させてしまった事例

小型犬とともに暮らしていたある飼い主さんは、スキンシップの一環として愛犬を抱っこしてなでていたところ、インターフォンが鳴ったため急いで応答しようとしました。

すると、インターフォンの音に興奮した愛犬が暴れて、飼い主さんが立ち上がると同時にフローリングに飛び降りてしまったそうです。

翌日から愛犬が前足を舐める様子が見られたものの、痛がる様子や歩き方の異常はなかったため問題ないと判断し、いつもどおり散歩に出かけていました。

すると数日後、急に愛犬が前足を上げるようになり、慌てて動物病院を受診したところ、レントゲン検査で骨折が判明。手術が必要な状態となっていました。

飛び降りてから数日間は「舐める」以外の症状が見られなかったことから、その時点では骨折ではなくひびが入った程度だったと考えられます。

もし飼い主さんが、手を舐めている様子を異常と感じて早めに受診していれば、包帯による固定とケージレストという安静処置のみで治療できていたかもしれません。

ストレスを抱えている

「ストレスや不安感によって起こる意図がわからない繰り返し行動」を、専門用語で常同行動(じょうどうこうどう)といいます。

犬にも常同行動は見られることが知られており、手足の先や体の同じ部位を舐めたり噛んだりする行動を繰り返す傾向があります。

とくに、環境の変化が起こったあと、急に手を舐める様子が見られたら、愛犬が強いストレスや不安感を抱いている可能性があります

動物病院への通院途中やお客さんが自宅に来ているときなど特定の時間のみ、引っ越しをしたばかり、新しい家族が増えたばかりなど、環境の変化がなかったかどうかを思い出してみてください。

さみしさを紛らわせている

犬は、さみしさを紛らわせるために手を舐めることもあります。

たとえば、愛犬がお留守番中の見守りカメラの動画に手を舐めている様子が写っていたら、さみしさが原因である可能性が高いでしょう。

また、一緒に遊んでいるときは舐める様子がまったくないのに、飼い主さんの関心が自分から離れると手を舐め始める子もいます。

犬が手をずっと舐めているときはまず動物病院へ相談を

愛犬が手を舐めている原因が健康トラブルなのか、ストレスや不安からくる常同行動なのか、もしくはさみしさを感じているからなのかを飼い主さんのみで判断することは難しいでしょう。

そのため、まずはかかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。

受診する際には、可能であれば手を舐めている様子を撮影した動画を持参しましょう。また、いつから舐め始めたか、思い当たる原因はないかなどをあらかじめメモしておくと、診察がスムーズに進む可能性があります。

動物病院では、赤みや腫れ、痛みなどの異常がないかを確認するために、患部の視診や触診を行うのが一般的です。また、飼い主さんには症状の開始時期やノミダニ感染予防を実施しているかなどを問診として尋ねます。

その後、患部の状態によっては細菌感染の有無やレントゲン検査、血液検査などに進む場合もあります。

【原因別】犬が手をずっと舐めているときの対処法

動物病院を受診し、犬が手を舐める原因がわかったら、原因に合わせた対処が必要です。

かゆみや痛みがある場合

何らかの皮膚病によるかゆみや痛みを和らげるために手を舐めている場合、皮膚病の治療が最優先となります。

犬の皮膚病の原因としては、ダニやノミ、細菌などの感染や食物アレルギー、アトピー性皮膚炎などさまざまなものが考えられるため、症状に応じた投薬療法が必要です。

また、飼い主さんには日常的なケアの一環として、獣医師に指示された種類のシャンプー剤を用いて適切な頻度でシャンプーすることが求められるケースもあります。

病気の原因によっては、獣医師に指示された療法食のみを与える食事療法を行うこともあります。

ストレスを抱えている場合

健康状態に問題がなく、手を舐める原因がストレスや不安感からくる「常同行動」の場合は、可能な限りストレスを取り除く必要があります。

たとえば、お客さんが自宅に来ることが愛犬にとってストレスとなっているのであれば、家ではなく外で会ったり、その時間帯には犬を散歩やドッグランに連れて行ったりする対策がおすすめです。

私たち人間とは違って、犬は自分自身でストレスを解消できないことを忘れないようにしてください。

さみしさを感じている場合

愛犬がさみしさを感じて手を舐めている場合は、生活スタイルを見直してみることが重要です。

犬種によって多少の差はありますが、基本的に犬は飼い主さんとのスキンシップや一緒に過ごす時間をとても大切に感じる動物です。

仕事から帰宅してすぐに愛犬を抱きしめたり撫でたりする時間をとる、休日は外出せず愛犬と一緒におうち時間を楽しむなど、愛犬中心のスタイルをとってみてはいかがでしょうか。

手を舐める原因がさみしさにあった犬の事例

ある日、急に愛犬が手をずっと舐めるようになってしまい、動物病院を受診された飼い主さんがいました。

直近でケガをするようなハプニングはなく、歩き方にも異常はないため皮膚病を疑いましたが、患部の手に赤みは見られません。

ノミダニ予防も適切なスケジュールにて実施されていることから、細菌感染を疑って顕微鏡で確認しましたがとくに異常はない状態でした。

そのため、病気ではなくストレスやさみしさによる行動の可能性が高いと判断。飼い主さんに何か変わったことや環境の変化はなかったかを確認すると、数日前に子犬を新しい家族にお迎えしたとのことでした。

そして、つい子犬を優先してしまい、ご飯も先に子犬へ与えてしまっているとのこと。飼い主さんには、何においても先住犬を優先してあげるようにお伝えしました。

それから1週間、すべてにおいて先住犬を優先したところ、手を舐める様子はまったく見られなくなったとのことで、笑顔の飼い主さん、先住犬、子犬とともに再診されました。

犬が自分の手を舐めているときのおすすめフード

犬が自分の手を舐めているときに取り入れたい、おすすめドッグフードを紹介します。

皮膚の健康を維持するのに効果的な商品をピックアップしました。

ただし先述したとおり、手を舐める原因は多岐にわたるため、まずは動物病院を受診することが重要です。また、原因によっては食事療法が必要となる場合もあることを覚えておきましょう。

サイエンス・ダイエット〈プロ〉 犬用 皮膚サポート機能 小粒 1~6歳

ポイント:
成犬、皮膚ケア

「サイエンス・ダイエット〈プロ〉 犬用 皮膚サポート機能 小粒 1~6歳」は、1歳〜6歳の成犬用ドッグフードです。科学的に裏付けされた抗酸化成分であるビタミンEとビタミンCを含み、愛犬本来の健康な免疫力の維持をサポートします。

主に推奨する犬種は、柴犬、コーギー、ゴールデンレトリバー、ラブラドール、パグ、シーズ、チワワなどです。食物アレルギーに対する配慮から、アレルゲンになりにくいラム肉が主原料に使用されています。オメガ3系不飽和脂肪酸とオメガ6系不飽和脂肪酸が配合されているため、健康的な皮膚と被毛の維持にも役立ちます。

ヒルズ サイエンス・ダイエット 敏感なお腹と皮膚の健康サポート 小型犬用 1歳以上の成犬・高齢犬用 チキン ドライフード

ポイント:
成犬、シニア、皮膚ケア

「ヒルズ サイエンス・ダイエット 敏感なお腹と皮膚の健康サポート 小型犬用 1歳以上の成犬・高齢犬用 チキン ドライフード」は、1歳以上の小型犬の成犬と、シニア犬の健康的な腸内環境、皮膚、美しい被毛をサポートする総合栄養食です。このフードは、亜麻仁やビートパルプなどの可溶性・不溶性繊維を組み合わせることで、腸内環境の健康をサポート。また、配合されているプレバイオティックファイバーが有益な腸内細菌に栄養を与え、腸内細菌叢のバランスを整えます。

さらに、敏感なお腹のために、消化に良い自然素材と食物繊維を使用。消化に負担をかけにくいチキンを主原料とし、消化吸収を促進する食物繊維を配合することで、健康的な消化と便通をサポートします。

ロイヤルカナン ミニ-ダーマコンフォート(皮膚の健康を維持したい犬用-小型犬専用-成犬〜高齢犬用)

ポイント:
子犬、成犬、シニア、皮膚ケア

皮膚には角質層という異物の混入を防ぐバリア機能がありますが、バリア機能を健全に保つためには皮膚の健康状態を維持する必要があります。「ロイヤルカナン ミニ-ダーマコンフォート」は、皮膚の健康を維持したい犬用のドッグフードです。

皮膚の健康維持やバリア機能のサポートに必要な、オメガ6系不飽和脂肪酸(γーリノレン酸を含む)とオメガ3系不飽和脂肪酸(EPA・DHAを含む)などの栄養素が独自のバランスで配合されています。

【まとめ】犬が手を舐める原因を知って適切に対処しよう

犬が手を舐める主な原因と対策について解説しました。

愛犬がずっと手を舐めているときは、皮膚トラブルが生じているか、ストレスやさみしさを感じているのが原因と考えられます。まずは動物病院で受診し、獣医師の指示を仰ぎましょう。

皮膚トラブルが原因の場合は、ドッグフードを変更することで症状が改善される可能性もあります。

普段から愛犬の様子をよく観察し、手を舐める様子が見られたら早めに対策をおこなってください。

ABOUT ME
松本 千聖
獣医師。岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師として動物愛護団体付属動物病院やペットショップ付属動物病院にて主に一次診療業務、ペット保険会社では保険金査定業務などに従事しました。現在は製薬関係の業務に携わり、プライベートでは個人で保護猫活動並びに保護猫達の健康管理を行っています。
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