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【獣医師執筆】犬と猫を一緒に飼うときに気をつけるべきこと・必要なもの

執筆者:松本 千聖
獣医師。岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師とし ...プロフィールをもっと見る

「犬と猫、どちらが好きですか?」という質問は、多くの動物好きの方にとってはとても答えにくい質問ですよね。

犬と猫にはそれぞれまったく違う可愛らしさや魅力があるため、どちらも飼いたいと思う方は多いかもしれません。

では、犬と猫を一緒に飼っても問題はないのでしょうか。この記事では、犬と猫を一緒に飼うときの注意点や準備すべことについて解説します。

 犬と猫を一緒に飼う前に考慮すべきこと

犬と猫を一緒に飼う前には、いくつか確認しておかなければならないことがあります。飼い始めてから後悔しないよう、注意点を考慮したうえでお家にお迎えするかを検討しましょう。

経済的な負担が大きくなる

犬と猫ではフードやおやつはもちろん、おもちゃや食器、洋服といったあらゆるペット用グッズにおいて基本的に犬用、猫用に分けられています。

犬と猫を一緒に飼うと、あらゆる点において2倍以上の金銭的負担が生じることになるため、金銭的な余裕があるかどうかを事前に把握しておきましょう。

犬と猫との暮らしがうまくいかない場合もある

最近では、SNSの投稿やエッセイ漫画などで、犬と猫を両方飼う魅力を発信する人が増えています。しかし、犬と猫が一緒に暮らすというスタイルが、必ずしも成功するわけではありません

とくに、猫は単独行動を好む傾向が強いため「血がつながっていない猫を同じ空間で多頭飼育する行為は、猫にとって最大のストレス」と言い切る獣医師もいるほどです。

そのため、犬と猫との暮らしをいざ始めてみたらうまくいかなくなった場合の対策を、飼う前にきちんと用意しておかなければなりません。

もちろん安易に手放すなどの身勝手で無責任な行動はしないでください。

先住のペットと喧嘩になるおそれがある

「犬が先住であとから猫を迎える」または「猫が先住であとから犬を迎える」というように、先住のペットが存在しているケースが多いでしょう。そのため、先住の子がフレンドリーか、独占欲が強くないかなどをよく確認することをおすすめします。

また、喧嘩にならないよう十分に配慮したうえで、犬または猫を飼っている家庭に先住ペットを連れていき、どのような態度をとるかを観察するのもおすすめです。

あらかじめ準備しておきたいグッズ

「仲間意識が強くて基本的には昼に活動し、夜は眠る犬」と「単独行動を好み、かつ夜行性の猫」というように、そもそもの行動習性が犬と猫では大きく異なります。また、どちらもテリトリー意識が強い動物です。

そのため、それぞれ一匹だけで安心して過ごせる専用のスペースを用意してあげる必要があります。

犬用には平面で十分な広さがあるケージを、猫用には高さがあり、中で上下運動ができる3段以上のケージを準備するとしておくことをおすすめします。また、ケージに加えて犬用のふかふかした専用のベッドや、猫用のキャットタワーも置いてあげると喜んでくれるでしょう。

これらの住環境以外にも、前述したようにペット用グッズは基本的に犬用、猫用に分けなければいけません。

さらに、犬も猫も嗅覚が非常に優れていることから、食器やキャリーなどに自分以外の臭いがついているとストレスを感じてしまう危険性があります。

節約のために共用という考えは捨て、可能な限りそれぞれ専用のものを購入してください。

犬と猫では与えるフードの種類が異なる

犬は肉食傾向が強い雑食で、猫は真性の肉食と食種が異なり、必要とする栄養素などに大きな違いがあります。そのため「どちらも肉食動物だから」という間違った考えで同じフードを与えてはいけません。

必ず、パッケージなどに総合栄養食と記載されたドッグフードを犬に、キャットフードを猫にそれぞれ食べさせましょう。

また、フードを与えるときはそれぞれが相手の餌を食べてしまわないように、食べる場所を分ける、飼い主さんが食べ終わるまで側にいるなどの対策が必要です。

まだ子犬と子猫の年齢から一緒に飼うのベスト

ほかの動物やさまざまな音などに対して物おじしない感情を抱くようになるための特別な時期が「社会化期」です。一般的に犬は生後3〜16週齢ごろ、猫は生後2〜9週齢ごろが該当します。

この社会化期の年齢から一緒に飼うことで、お互いを遊び相手として認識し、仲良くなりやすいといわれています。

ただし、子犬や子猫のときはまだ成長期に該当するため、健康状態に気をつけることはもちろん、適切なワクチンスケジュールに基づいた予防接種や、とくに子犬の場合はトレーニングなどが必要です。

飼い主さんが行うべきことがたくさんあるため、金銭的かつ時間的にも余裕がある方でなければ、なかなか子犬と子猫を一度に育てることは難しいかもしれません。

先住ペットが老犬または老猫の場合は同居を避けるべき

私たち人間においては、高齢期になっても若い人たちとともに働くことで気力や体力の充実につながったり、孫と遊ぶことで生き甲斐ができたりと、高齢者と子どもや若い年齢の人々との組み合わせにはメリットがあると考えられています。

しかし、動物の場合はそうではありません。先住ペットが老犬または老猫のときに新しい家族を迎えると、たとえ同じ種類の動物でも環境の変化により大きなストレスを感じ、健康状態の悪化につながるため、可能な限り避けるようにしましょう。

先住ペットのお世話を優先する

犬と猫といった動物の種類に関係なく、すべての先住・新入りとの関係においていえることですが、新入りの子が病気などの緊急事態以外は、必ず先住ペットのお世話を先に行う必要があります。

あとからやってきた新入りは、先住ペットにとって飼い主さんの愛情や関心を奪ったり、自分のテリトリーを侵略したりする、歓迎できない存在となります。

よって、帰宅したらまずは先住ペットに先に声をかけて撫でたり、食事の際はフードを先にあげたりして、優先しているという姿勢を飼い主さんが示すことで、新入りへの嫉妬心や敵対心を軽減できるでしょう。

最後に

犬と猫を一緒に飼う際には,、同じ種類の動物を多頭飼育する以上にさまざまなことを考えておく必要があり、用意すべきグッズも多くなります。

しかし、犬と猫、両方との暮らしが成功すれば、飼い主さんにとって喜ばしい状態であることは間違いありません。

どちらも幸せにしてあげることに精一杯お金や時間をかけられる方は、ぜひ挑戦してみてください。

ABOUT ME
松本 千聖
獣医師。岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師として動物愛護団体付属動物病院やペットショップ付属動物病院にて主に一次診療業務、ペット保険会社では保険金査定業務などに従事しました。現在は製薬関係の業務に携わり、プライベートでは個人で保護猫活動並びに保護猫達の健康管理を行っています。
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