病気・ケア

犬がブラッシングを嫌がるのはなぜ?理由や対処法を紹介

執筆者:原 京子
動物看護士、ペットショップでの生態管理、動物園飼育スタッフなどを経験 ...プロフィールをもっと見る

犬を飼う場合、ブラッシングは欠かせない日課の一つです。
しかし、いざブラッシングをしようとしても、抵抗されたり暴れられたりと、ブラッシングを嫌がる愛犬に頭を抱えている方も少なくないでしょう。

愛犬がブラッシングを嫌がるのには、必ず理由があります。
ここでは、犬がブラッシングを嫌がる理由と、対処方法を紹介します。

そもそも犬にブラッシングは必要?

短毛種長毛種問わず、犬にとってブラッシングは欠かせません。
犬にブラッシングをするメリットは、以下の通りです。

・抜け毛や汚れの除去
・毛玉や絡みの除去
・美しい被毛の維持
・新陳代謝アップ
・皮膚病予防
・皮膚疾患や寄生虫の早期発見

ブラッシングの効果は、美しい見た目の維持や抜け毛対策だけではありません。
毛玉や汚れが取れるため、皮膚の通気性や新陳代謝が上がります。また、ブラッシングの際に体を触ることで、身体異常の早期発見に繋がります。

犬がブラッシングを嫌がる理由

室内飼育の場合、定期的にブラッシングをしないと、家中が抜け毛だらけになってしまいます。
しかし、ブラッシングをしようとすると暴れたり、嫌がったりして思うようにできないケースも少なくありません。
愛犬がブラッシングを嫌がる主な理由として、以下が考えられます。

・体を触られることに慣れていない
・ブラシを警戒している
・痛い思いをしたトラウマがある
・ブラッシングに慣れていない
・ブラッシングが痛い

それぞれ詳しく解説していきます。

体を触られることに慣れていない

飼育下の犬でも、人に体を触られることに慣れさせていないと、触られることを嫌がる場合があります。
とくに脚先や尻尾・お尻周り・鼻回りは、犬が触られるのを嫌がる部分です。

ブラシを警戒している

ブラシをはじめて見る犬は、ブラシが安全かどうかわからなくて、警戒することがあります。
この場合は、ブラシは安全なものだと学習させなければなりません。
飼い主さんの近くや愛犬の近くにブラシを置いて反応を確かめ、近づけたら褒めてあげましょう。

また、電動ブラシを使用する場合は、音に対して嫌がることもあるため、静穏設計の商品を選んだり、音に慣れさせたりする必要があります。

痛い思いをしたトラウマがある

ブラッシングやマッサージ・触られることで過去に痛い思いや嫌な思いをしたトラウマも、ブラッシングを嫌がる要因です。
また、暴れた際に叱ることで、余計にトラウマが酷くなってしまいます。

ブラッシングに慣れていない

ブラッシングを始めたばかりの頃は、飼い主さんも犬もブラッシング自体に慣れていません。
いきなり体全体にブラッシングをしようとすると、愛犬は何事が分からず混乱してしまいます。
愛犬のブラッシングは、飼い主さんの意志だけではなく、愛犬の気持ちも汲み取って行うことが大切です。

ブラッシングが痛い

犬の皮膚は人間の3分の1程度の薄さしかないため、痛みを感じやすく傷つきやすいです。
そのため、人間の力加減でブラッシングをすると、刺激が強すぎるおそれがあります。
脚や関節部分はとくに痛みを感じやすいため、注意が必要です。

スリッカーブラシは使い方を間違えると、皮膚を傷つけるリスクがあります。
痛がる場合は、ラバーブラシなど柔らかい素材を使う、力加減を優しくするなどの対策が有効です。

ブラッシングを嫌がるときの対処法

愛犬がブラッシングを嫌がる理由が分かったら、その理由に合った対処が必要です。
ブラッシングを嫌がる犬に試したい主な対処方法をご紹介します。

体を触らせるトレーニング

全身に触れても嫌がらないトレーニングは、健康チェックやスキンシップ向上のうえでも欠かせません。 はじめは耳の後ろや首回り・顎の下など、撫でられるのを好む場所から優しく触り、大人しく触らせてくれたら褒めて、場合によってはご褒美をあげても構いません。

徐々に背中・脇腹と範囲を広げ、最終的に嫌がる場所にも触れるようにします。
脚先や鼻周り・尻尾・お尻周りは、犬が触られるのを嫌がる場所です。
しかし触れなければ、体全体にブラッシングをすることができません。
子犬の頃から触らせる習慣をつけておくと、成犬時にも役立ちます。

トラウマの克服方法

一度トラウマになってしまったことを克服するのは、容易ではありません。
ゆっくり時間をかけながら、「ブラッシングは痛くない」「嫌なものではない」と学習し直す必要があります。以下のポイントを押さえてブラッシングを行いましょう。

・優しく声を掛けながらブラッシングをする
・はじめは手ぐしで行う
・いきなりスリッカーブラシは使わない
・短時間ずつ行う
・背線マッサージを行う

背線マッサージには、犬の背中にある自律神経を刺激し、落ち着かせる効果があります。

<背線マッサージの方法>
・5本の指の爪を立て、尻尾の付け根から首の付け根までのラインをマッサージする
・何度か繰り返す

愛犬の毛並みを逆立てるように行うのがポイントです。
愛犬の様子を観察しながら行い、リラックスしているようであれば何度か続けていきます。

背線マッサージを行うことで、ブラッシングの疑似体験ができるほか、飼い主さんに触られることへの嫌悪感も改善する効果が期待できます。

ブラッシングに慣れさせる方法

愛犬をブラッシングに慣れさせるためには、以下の方法で行うのがおすすめです。

・愛犬がリラックスしている時に行う
・はじめは触られることに慣れさせる
・ブラシに慣れさせる
・ブラッシングは顎の下や頭部など触られるのを好きな場所から行う。
・はじめから全身をブラッシングしない
・褒めながらブラッシングする
・短時間から行う

はじめは体に触れられることや、ブラシに慣れさせることからはじめます。
慣れないうちは、柔らかいブラシを使い、そっと頭や顎の下を撫でてみます。
いきなり全身をブラッシングするのではなく、優しく褒めながらブラシをあてることに慣れさせましょう。

短時間から徐々に慣れさせ、褒めたりご褒美をあげたりしながら、徐々に時間や部位を広げていきます。
犬が嫌がる尻尾やお尻周り・鼻先・脚先もブラッシングをさせてくれたら、少しオーバー気味に褒めてあげましょう。

犬の毛質に合ったブラシを選ぶ

ブラッシングを快適に行うには、愛犬に合ったブラシ選びも欠かせません。
とくにスリッカーブラシは、角度や力加減を間違うと、皮膚を傷つけてしまう危険性があるため注意しましょう。
ブラッシングに使用する代表的なブラシの種類をご紹介します。

スリッカーブラシ

剣山のように針金がたくさんついたブラシです。
長毛種やダブルコートの抜け毛対策や毛玉・ノミダニ除去などに使用します。
力加減や角度などを間違えると、痛みを与える場合があります。

ピンブラシ

ピンブラシは、ブラシの先にピンのような球体が付いており、痛みを感じにくい点が特徴です。
痛がりやすい子や、皮膚が弱い子に適しており、マッサージ効果も期待できます。

コーム

コームは、残っている毛玉や絡みがないかをチェックする際に使用します。
また、被毛をかき分けることで、皮膚の状態確認にも役立ちます。
美容室では、カットの際にも使われています。

獣毛ブラシ

豚毛などでできている柔らかい獣毛ブラシは、主にブラッシングの仕上げに使用します。
静電気が起きにくく、被毛に艶が出てより美しく仕上げることができます。

ラバーブラシ

ラバーブラシは、ゴムでできているため柔らかく、硬いブラシを嫌がる子に最適です。
主に短毛犬と相性が良いブラシで、皮膚が弱い子にも使用できるほか、グローブ型ブラシではマッサージやスキンシップをとりながらのブラッシングができます。

ブラッシングは教えないと分からない

私たちは、当たり前のように愛犬にブラッシングを行おうとします。
しかし、愛犬にとっては飼い主さんが自分に何をするのか分からず、恐怖や不安心を抱いてしまいます。
そのような状態で、いきなりブラッシングをしようとしても、嫌がるのは当然だといえるでしょう。

もともと犬にとってブラシで被毛をとかす習慣はないため、一から飼い主さんが教える必要があります。
「ブラシとは何か」「自分に害はないのか」「ブラッシングは痛くないのか」など、一つずつ覚えさせていきましょう。

最終的には、「ブラッシングは気持ちの良いもの」「飼い主さんに褒めてもらえるもの」だと学習できるのが理想です。

なお、ブラッシングは社会化期(生後3〜12週齢)の間に始めると、好奇心が恐怖心よりも強く、あらゆるものに順応しやすいためおすすめです。

褒めながら行うことが大切

ブラッシングを嫌がる場合、叱ったり押さえつけたりするのではなく、褒めながら慣れさせることが大切です。

また、ブラッシングに慣れたからといって、褒めることをおろそかにせず、ブラッシングを大人しくさせてくれたら、毎日欠かさず褒めてあげましょう。

まとめ

・犬がブラッシングを嫌がる理由は「体を触られることに慣れていない」「ブラシを警戒している」
「痛い思いをしたなどトラウマがある」「ブラッシングに慣れていない」「ブラッシングが痛い」が挙げられる
・対策方法は嫌がる理由に応じて体に合ったブラシを選んだり、体を触らせることに慣れさせたりする
・ブラッシングは抜け毛対策や健康な被毛維持のほかも、新陳代謝アップや皮膚異常の早期発見などの効果がある
・ブラッシングは褒めながら行うことが大切
・犬にはブラッシングをするという習慣はないため、一から学習させる必要がある

ブラッシングは、飼い主さんと愛犬との距離が縮まるため、コミュニケーション向上にも良い機会です。
飼い主さんは、なぜ嫌がるのか理由を突き止めて適切な対処を行い、楽しくブラッシングを習慣化していきましょう。

参考:
ブラッシングを嫌がる犬には背線マッサージでリラックスさせる – トイプードル達との暮らしブログ

ABOUT ME
原 京子
動物看護士、ペットショップでの生態管理、動物園飼育スタッフなどを経験。ペットと飼い主さんが正しい知識で生活できるよう情報を発信している。
保有資格:愛玩動物介護士、愛玩動物救命士、愛玩動物搬送士、ドッグライフカウンセラー
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