執筆者:原 京子
動物看護士、ペットショップでの生態管理、動物園飼育スタッフなどを経験 ...プロフィールをもっと見る
現在では、犬の飼育は室内が主流となっています。
「愛犬と一緒に過ごす時間が多くなる」「体調不良に気づきやすい」など、室内で飼うことにはさまざまなメリットが存在します。しかし、気を付けなければならないポイントもあります。
また、室外飼育との違いも把握したうえで、愛犬に合う環境を用意してあげたいものです。
この記事では、室内飼育・室外飼育それぞれのメリット・デメリットや、室内飼いをする際の注意点についてまとめました。
犬は室内飼育と室外飼育どちらが適している?
一昔前は、犬は「番犬」として人間に飼われていたため、室外飼育が一般的でした。
しかし、現在では「家族」の一員であるため、室内飼育が増えています。
実際のところ、犬は室内飼育と室外飼育のどちらが適しているのでしょうか。
ここでは、室内飼育と室外飼育のメリット・デメリットを紹介します。
<室内飼育のメリット>
- 一緒にいる時間が増える
- 体調の異変に気が付きやすい
- 愛犬を清潔に保つことができる
- しつけがしやすい
- 糞尿によるトラブルを防ぐことができる
<室内飼育のデメリット>
- 抜け毛やにおいの問題が生じる
- 家具をかじったり破壊されたりする可能性がある
<室外飼育のメリット>
- 家中に抜け毛やにおいがつく心配がない
- 家具を破壊されない
<室外飼育のデメリット>
- 愛犬が汚れやすい
- 感染症や寄生虫のリスクが高まる
- ストレスを感じやすい(騒音や寒暖差など)
- 犬の状態を観察する機会が少ない
- 他人に吠えてトラブルになるおそれがある
- 糞尿によるトラブルが起きやすい
室内飼育のメリットは、体調管理がしやすいことや、愛犬とのコミュニケーションがとりやすいことなどが挙げられます。
室外飼育では、家の中ににおいがつかないことや、抜け毛による掃除が楽なことなどがメリットです。
愛犬の健康を考えるのであれば、室内飼育が適しています。
外で飼育をする場合も、犬小屋に繋ぎっぱなしにするのではなく、日中は柵があるバルコニーや庭に出し、夜間や雨天の際は室内に入れるとよいでしょう。
ただし、室内・室外どちらであっても毎日の散歩は必要です。
犬を室内飼いする際の注意点
犬の室内飼育には、以下のような注意点も存在します。
- 肥満に注意する
- 誤飲誤食に注意する
- かじってはいけないものは置かない
- 人間の食べ物を与えない
- 入ってはいけない場所は柵を設置する
- 床は滑らない加工をする
- 温度管理に気を付ける
- トイレやケージは適切な場所に設置する
それぞれ詳しく解説していきます。
肥満に注意する
室内飼育では、愛犬が肥満になりやすいです。
接する時間が長くなり、ついついおやつを与え過ぎてしまったり、散歩に連れて行く機会が減ったりするためです。
肥満はさまざまな病気のリスクを高め、寿命を縮める原因となります。
基本的に、何もないときにおやつを与える必要はありません。
トレーニングのご褒美や、万が一の際のトラブル回避など、特別なときのみに与えるようにしましょう。
大切な愛犬のためにも、定期的に体重測定や目視をして、肥満を予防しましょう。
また、小型犬や超小型犬でも、毎日散歩に連れていくことは必要です。
「家の中だけで運動は十分」と考える方もいるかもしれませんが、散歩には運動不足解消以外にも、さまざまな健康効果が期待できます。
誤飲誤食に注意する
人間が暮らす家の中には、犬が誤飲すると危険なものが多いです。
犬には空腹時や退屈なとき、人間が物を手に取るように口に入れてしまう習性があります。
以下のようなものはとくに誤飲しやすいため注意が必要です。
- たばこ
- 薬
- 電池や磁石
- チョコレートやネギ類
- つまようじ
- 輪ゴム
- プラスチック類
- 殺虫剤や洗剤
犬が誤飲するもので圧倒的に多いとされているのが、たばこの吸い殻です。
たばこの吸い殻には有害物質が含まれており、誤飲すると中毒を起こす危険性があります。
たばこの吸い殻は灰皿などに放置せず、愛犬の手の届かない所に処分しましょう。
また、薬の保管場所にも注意が必要です。
人間の薬はどの種類にも、犬の摂取規定量を超えた成分が含まれています。
飲み忘れや片づけ忘れのないよう、注意してください。
殺虫剤や洗剤などはもちろん、チョコレートやネギ類などの食べ物も、犬が誤飲すると中毒を起こしたり、内臓を傷つけたりするため危険です。
愛犬が誤飲してしまう可能性のあるものは、事前に手の届かない場所に保管することが大切です。
かじってはいけないものは置かない
犬は、家具など家中のものをかじってしまうことがあります。
犬がかじってしまう原因として、歯の生え変わりの際のムズムズ感や、退屈しのぎ、欲求不満やストレスなどが考えられます。
犬の噛み癖をトレーニングすることは可能ですが、容易ではありません。
犬がかじることに対して叱るよりも、あらかじめ対策をしておくことで、トラブルを回避できるでしょう。
かじってほしくないものを愛犬の手の届く範囲に置かないことや、カバーなどの防具をつける方法がおすすめです。
また、電気コードなど愛犬がかじると危険なものは、しっかりとカバーをかけたり、整理したりして対処しましょう。
人間の食べ物を与えない
室内飼育では、人間の食べ物を目にする機会が多くなります。
可愛いからとついつい与えてしまったり、いたずらで食べてしまったりすることは、犬の健康のためによくありません。
人間の食べ物は犬にとって肥満の原因に繋がるほか、食材によっては中毒症状を起こす場合があります。
愛犬には犬用の主食(総合栄養食)を適量与え、おやつを与える際には、犬用の商品に限定してください。
入ってはいけない場所は柵を設置する
犬に入ってほしくない部屋には、柵を設置するのがおすすめです。
たとえば、調理中に、犬がキッチンに入ってくると危険です。
犬が食べると危険な食材も多くあるため、入らせないようにするのが無難です。
ほかにも、抜け毛がついては困る洋服がある部屋には入らせないようにするなど、空間を仕切る工夫をしましょう。
床は滑らない加工をする
フローリングは犬にとって滑りやすく、関節や四肢に負担がかかります。
そのままにしておくと、膝蓋骨脱臼や股関節形成不全・椎間板ヘルニアなどにかかるリスクが高まります。
フローリングの滑り止め対策としては、マットやカーペットを敷いたり、フロアコーティングをしたりする方法がおすすめです。
愛犬の健康を守るためにも、フローリング対策は必ず行いましょう。
温度管理に気を付ける
夏場や冬場は、室内の気温にも注意が必要です。
密室では、夏場は高温多湿になり、熱中症にかかるリスクが高まります。
一方冬場は、室内の温度が低すぎて風邪を引いてしまうおそれがあります。
子犬やシニア犬の場合は、とくに注意しなければなりません。
一人でお留守番をさせる際には、夏場はエアコンをつけっぱなしにし、冬場はペット用の電気カーペットを使用するなどして、愛犬が安全で快適に過ごせる環境作りを心がけましょう。
トイレやケージは適切な場所に設置する
室内で犬を飼う場合、ケージやトイレは必須アイテムです。
しかし、置き場所を間違うと、使用を嫌がることがあります。
ケージやトイレは、適切な場所に置くことが大切です。
具体的には、以下の場所への設置がおすすめです。
【ケージ】
- 家の中心(リビングなど)が良い
- 玄関や窓際、ドアの隣は避ける
- 人が良く行き来する場所は避ける
犬のケージは、リビングなど家の中心に置くのが理想です。
また、外の景色が見えたほうが良いと考えて窓際や玄関に置く飼い主さんもいますが、警戒心の強い犬にとっては、落ち着かず、逆にストレスに繋がります。
さらに、人が頻繁に行き来する場所や廊下・ドアの側は、騒がしく愛犬がゆっくり休めません。
ケージは愛犬がゆっくりくつろげる空間でなければならないため、置き場所には注意が必要です。
【トイレ】
- 脱衣所や洗面所
- 人の死角になる場所
愛犬のトイレを置く場所は、「寝床と距離がある」「人目に付きにくい」「十分な広さがある」場所がおすすめです。
排泄中は無防備になるため、人目につく場所は適していません。
脱衣所や洗面所は、人の出入りが少なく人目につかないため、トイレの設置場所としておすすめです。
ケージにトイレを設置する場合は、寝床と仕切りのあるものが良いでしょう。
また、リビングにトイレを置く場合は、デッドスペースなどをうまく活用すると効率的です。
室内では放し飼いでよい?
室内飼育の場合、放し飼いがよいのか、ケージを使用するべきか悩む方も多いと思います。
お留守番の時間にケージに入れておくことは、犬にとってさほどストレスではありません。
犬はもともと暗い穴倉を寝床として生活してきた動物のため、ケージ内は落ち着く空間でもあります。
また、放し飼いはしつけがある程度できていることや、以下の注意点を守ることで可能です。
- キッチンには入れさせない
- ケージは用意しておき、自由に出入りできるようにしておく
- 犬が行動できる場所をある程度制限する
室内を自由にすることは、家中が縄張りになり、主従関係が乱れがちです。
そのため、リビングと廊下だけなど、ある程度行動を制限することが大切です。
また、キッチンは犬にとって危険が多いため、柵を設置して入れないようにする対策も必要です。
家の中を自由に行動するといっても、ケージは必要です。
ケージは愛犬専用の部屋であるため、安心できる場所として欠かせません。
ケージに入る習慣を作っておけば、急な来客時でも、愛犬をスムーズに避難させることができ、トラブル回避に役立ちます。
散歩は毎日連れていく
とくに小型犬を室内で自由に飼育している方は、散歩に連れて行かない方もいるでしょう。
体が小さいため、運動は家の中だけで十分足りると思いがちです。
しかし、散歩には運動以外にも以下のような健康効果が期待できるため、毎日連れていくべきです。
- 外の空気を吸うことでリフレッシュやストレス発散効果
- 飼い主とのスキンシップ向上や主従関係の確立
- ほかの犬とのコミュニケーションで社会性を身につける
- 寒暖差に負けない丈夫な体を作る
- 日光浴で栄養補給やストレスに強い体を作る
散歩には、適度な運動や肥満予防の効果もありますが、それだけではありません。
外の空気を吸ったり、地面の感触を味わったりすることは、室内では体験できません。
また、危険なものから愛犬を守ることは、飼い主とのスキンシップ向上や主従関係の確立に効果的です。
さらに、犬はにおいで会話をしているとされており、散歩でほかの犬のにおいを嗅ぐことで、コミュニケーション能力や社会性が身につきます。
外は快適な室内とは異なり、暑さや寒さがあります。
適度な寒暖差に体を慣れさせることは、風邪をひきにくい丈夫な体作りをサポートします。
ほかにも、日光浴ではビタミンDなどの栄養補給や、美しい被毛の維持、セロトニンなど抗ストレスホルモンの分泌を促します。
紫外線は窓ガラスで大幅にカットされてしまうため、外に連れていくことが大切です。
まとめ
- 室内飼いのメリットは一緒にいる時間が増える、体調管理がしやすい
- 室内飼いのデメリットは家が汚れやすい、家具を破壊されることがある
- 室内飼育の注意点は、肥満に注意する、誤飲誤食に注意する、かじってはいけないものは置かない、人間の食べ物を与えない、入ってはいけない場所は柵を設置する、床は滑らない加工をする、温度管理に気を付ける、トイレやケージは適切な場所に設置する
- 家の中を放し飼いする場合はある程度ルールーを作る
- 小型犬でも毎日の散歩は必要
愛犬は可愛らしく、ついつい甘やかしてしまいますが、結果愛犬のためにならないこともあります。
室内飼育では、犬と人との距離が近づくため、飼い主さんは犬という生き物の習性を詳しく理解し、人間の考えを押し付けないよう、正しい飼育が大切です。
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