執筆者:今井 貴昌
日本獣医生命科学大学卒。地方の動物病院と都内のグループ動物病院で数年 ...プロフィールをもっと見る
ジャガイモは私たちの食卓によく並ぶ食材の一つです。食事中に愛犬が寄ってきておねだりをすることはよくあるのではないでしょうか。
この記事では、ジャガイモを与える際に飼い主様である皆さんが知っておくべきことを、臨床獣医師目線でまとめました。ぜひ最後までお読みください。
ジャガイモは犬に与えても大丈夫
ジャガイモは犬に与えても問題のない食べ物です。
栄養素が豊富で低脂肪であり、嗜好性も高いため、食欲が減退傾向である犬にも効果的でしょう。
また、メインクーンや男爵などの一般的に売られている品種についても与えて問題はありません。
ただし、与える際には注意すべきこともあるため、必ずこの記事の内容を確認しましょう。
ジャガイモに含まれる主な栄養素と効果
ジャガイモは炭水化物や食物繊維・ビタミンCなど豊富な栄養素を含んでおり、私も飼い主様に食事療法として勧めることがあります。
ジャガイモ100gには主に、糖質(炭水化物)が約16g、食物繊維が約1.3g、ビタミンCが約35mg、カリウムが約410mg含まれています。
では、これらの栄養素に期待できる愛犬への効果とは何でしょうか。
ただし、皮や芽にはソラニンやチャコニンといった毒素も含まれるため、与え方には注意が必要です。
糖質(炭水化物)
ジャガイモは糖質(炭水化物)、すなわちでんぷん質で構成されています。
ジャガイモ100gあたりのエネルギー量は76kcalです。そのため、運動量の多い健康的な犬では、効率的なカロリー摂取が期待できると言えます。
食物繊維
ジャガイモは、食物繊維が豊富であるため整腸作用も期待できます。腸内細菌叢のバランスを整え、便通をよくすることでその効果を発揮します。
ただし、ジャガイモが原因で下痢をするようであれば、与えるのは控えましょう。
ビタミンC
ビタミンCは抗酸化作用によりフリーラジカルから体を守ってくれます。
その結果、老化の防止や免疫力の向上が期待できます。
カリウム
カリウムは生体の恒常性を保つうえで非常に重要な栄養素ですが、食欲の低下により不足しがちです
カリウムが不足すると、体がうまく動かせなくなったり、元気がなくなったりしてしまいます。ジャガイモは嗜好性も高いため、カリウム摂取の点においてもその効果が期待できると言えるでしょう。
ジャガイモが勧められる状況
ここまで、ジャガイモに含まれる栄養素と効果についてみてきましたが、愛犬の状況によっては、獣医師から強く勧められることがあるかもしれません。
ジャガイモを利用した療法食は、「蛋白漏出性腸症」と診断された場合に有効である可能性が報告されています。
病気の詳細は割愛しますが、「超低脂肪食」としてササミ:ジャガイモ(or白米)=1:2で愛犬の必要なカロリーに合わせて一定期間給餌します。
また、食欲が低下している犬に対し、与えても問題のない場合には、トッピングとして利用してもらうこともあります。
ジャガイモを与える際の目安量
一般的に、おやつとして与える際には1日に必要な適正摂取カロリーの10%までとされています。
摂取カロリーの詳細については、こちらの記事をご参照ください。
愛犬のフードをうまく切り替える方法と、切り替えるべきタイミング
ここではRER(安静時の1日に必要なエネルギー量=kcal/day)をもとに、犬のサイズごとに計算しています。
以下の給餌量はあくまでも目安量かつ最低用量として算出しているため、愛犬の運動量などを考慮し、様子を見ながら与えてください。
RER | 10%RER | 目安量 | |
トイ犬種(5kg) | 234kcal | 23.4kcal | 30g未満 |
小型犬(10kg) | 394kcal | 39.4kcal | 52g未満 |
中型犬(15kg) | 534kcal | 53.4kcal | 70g未満 |
大型犬(20kg) | 662kcal | 66.2kcal | 87g未満 |
ジャガイモを与える際の注意点
ジャガイモを愛犬に与えるときは、以下の2点に注意しましょう。
加熱調理する
生のジャガイモは消化に悪いため、与える際には加熱調理をしましょう。
また皮や芽には、ソラニンやチャコニンといった毒素が多く含まれています。これらの摂取により、嘔吐や下痢といった消化器症状が発現してしまうため、必ず取り除いてください。
加熱後は大きいままだと喉に詰まってしまうこともあるため、食べやすいように小さくカットしてあげてください。
なお、ポテトサラダには玉ねぎが入っていたり、フライドポテトは油が多量に含まれていたりするため、ジャガイモの加工品は犬が食べるのに適切ではありません。
玉ねぎは少量であっても中毒症状を引き起こします。油も同様で、個体差はありますが、少量であっても急性膵炎を発症し、最悪の場合は命を落としかねません。
糖尿病の犬には与えない
ジャガイモの主成分はでんぷん質=炭水化物です。炭水化物は、体内で分解され、糖質として利用されます。
犬猫の糖尿病は、自宅での採血はほぼ不可能であり、血糖値のコントロールが非常に困難です。インスリンの投与量は、通院あるいは入院下にて決められるため、普段の食事を変更することは基本的にできません。
したがって、ジャガイモは糖尿病の犬では不適切な食べ物ということになります。
また、ジャガイモは食物アレルギーの原因物質にもなりえます。ジャガイモを与えた後に、下痢や皮膚炎などが生じるようであれば、与えるのは控えてください。
余談にはなりますが、先に述べた「超低脂肪食」として利用する場合は、必要な栄養素に満たないため、2週間ほどの短期間にとどめましょう。
ほかのイモ類は食べられる?
最初に述べましたが、一般的なジャガイモの品種であれば、それぞれに大きな差はありません。では、ほかのイモ類はどうなのでしょうか。
「サツマイモ」も基本的には与えて問題はありません。生のままでは消化に悪いため、必ず加熱調理をしてから与えましょう。ただし、糖分が多いため、与えすぎには注意してください。
「里芋」も与えて問題はありませんが、サツマイモと同様に加熱調理をしたものを与えましょう。もちろん皮を与えるのは控えてください。
「山芋」は粘膜刺激や誤嚥の危険性があることから、与えるのは避けたほうがよいでしょう。犬に対する中毒性はないため、絶対に与えてはいけないわけではありません。
病院に行くべき症状とは
私が臨床現場にて、飼い主様にお伝えすることは、以下の症状が出た場合には病院に連れてきてほしいということです。
とくに、のどに引っ掛かった場合には命に危険が及ぶおそれがあるため、よく覚えておきましょう。
吐出
犬が何かを吐く際には、それが「吐出」なのか「嘔吐」なのかを考えなくてはなりません。
「吐出」とは、食後に食べ物が胃内に到達する前に、吐き戻すことです。一方で「嘔吐」は、食後しばらくしたあとに胃の内容物が出てくることです。
ジャガイモがのどに引っ掛かった場合には「吐出」をするようになります。
のどに引っ掛かるのは、大きくカットされたジャガイモだけではありません。実際の症例で、ペースト状のジャガイモがのどに張り付いてしまったケースもありました。
いずれにしても食後すぐに吐いたり、飲水後にすぐに吐いたりするようであればすぐに動物病院を受診しましょう。場合によっては、全身麻酔下にて内視鏡検査が必要になるかもしれません。
嘔吐、下痢
ジャガイモがのどに引っ掛かった場合には、吐出することが多いですが、消化不良や体質的にあっていない場合には、嘔吐や下痢をしてしまいます。
また、食物アレルゲンとしてポテトが陽性であった場合には、なんとなく軟便が続いたりする場合もあります。
嘔吐や下痢、軟便といった症状が数日以上続く場合にも、獣医師に一度相談してみましょう。
皮膚炎
食物アレルギーでは、皮膚炎を起こすことがあります。
皮膚炎が生じる部位は、口や目周り・足先が一般的ですが、外耳炎の場合にも食物アレルギーを疑うケースがあります。
とくに、1年を通してかゆがっている場合には、食物アレルギーの可能性を考慮し、獣医師と検査や対策などの方針を決めましょう。
まとめ
ジャガイモは適切な量であれば、犬もおいしく食べられる食べ物です。
また、嗜好性の高さから、お薬の投薬や「超低脂肪食」として利用されることもあります。
ただし、初めて与える際には、いくつかの注意点を踏まえたうえで、様子を見ながら少しずつ与えるようにしましょう。
いかがでしたでしょうか。この記事を通して、みなさんが幸せなペットライフを送っていただけることを切に祈っております。
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