ドッグフード

愛犬のフードをうまく切り替える方法と、切り替えるべきタイミング

執筆者:今井 貴昌
日本獣医生命科学大学卒。地方の動物病院と都内のグループ動物病院で数年 ...プロフィールをもっと見る

はじめて犬を飼う方も、すでに飼っている方も、「愛犬のフードがずっと同じでいいのか」と考えたことがあるのではないでしょうか。

犬も人間と同じように、ライフステージに合わせて食事内容を変更し、病気にかかったときは療法食を取り入れる必要があります。

この記事では、フードをうまく切り替える方法や、切り替えるべきタイミングについて、獣医師目線で解説します。

愛犬の健康寿命を延ばすためにもぜひご参考ください。

フードの切り替え時に考えるべきポイント

当たり前のことですが、人間と同様に犬も歳を取るにつれて、代謝機能が低下したり、病気にかかったりするリスクも増加します。

そのため、愛犬のライフステージや健康状態などを把握することは非常に重要です。

犬のライフステージ

犬のライフステージは、子犬期・成犬期・シニア期に大きく分かれます。
子犬期は、小型犬では9〜12ヶ月齢、大型犬では18〜24ヶ月齢と言われています。

また子犬期は成長期にあたるため、多くの栄養素が必要なステージであり、愛犬の体格に合わせたフードの選択が必要です。

成犬フードへの切り替えは、愛犬の体高(地面から背中までの高さ)が成犬に近づいたころが良いとされています。

成犬用フードを購入する際は、サイズ・犬種・健康状態などを考慮しましょう。

例えば、活発な中型犬は、より高濃度のビタミンが必要です。
大型犬は2歳前後で成犬となるため、体重の維持を考慮し、脂肪があまり濃縮されていないフードが必要になります。

シニア期の始まりは、一般的には、小型犬では9歳くらい、中・大型犬では7歳くらいです。
必要なカロリーは少なくなりますが、繊維質やタンパク質は通常より多く必要となります。

また、この時期は何らかの病気が発見されやすい時期でもあるため、その疾患に合わせた療法食が必要となるでしょう。

1日に必要なエネルギー量の計算

我々獣医師は、入院患者が必要とする1日のエネルギー量を計算し、その犬の負担にならないように調整しながら給餌しています。

代表的な計算方法に、RER(安静時に必要な1日のエネルギー量)やDER(日常で必要な1日のエネルギー量)があります。

DERは、その犬のライフステージ・活動量・体格を考慮し、RERに各係数をかけて算出します。
計算方法は以下の通りですが、DERは個体差が大きいため、あくまで参考程度にとどめてください。

RER(kcal/day)=70×(体重kg)0.75
DER(kcal/day)=各係数×RER

各係数の参考値は、カナダのウィルモット大学病院の資料を参考にしてください。
参考:Estimated Energy Requirements

愛犬の肥満傾向を知る

一般的に、犬や猫の体型の指標にはBCS(Body Condition Score)が用いられます。

以下に、WSAVA(世界小動物獣医師会)が決定した、犬のBCSの基準のリンクを載せましたので、愛犬がどれにあたるか確認しましょう。
Body-Condition-Score-Dog.pdf (wsava.org)

理想体型はBCSが4〜5/9ですが、実際に病院に健康診断で来院する犬は、BCSが6~7/9に該当することが大多数です。

多くの飼い主さんは、愛犬が太っていることに気付いていません。

もし愛犬が理想体型ではなかった場合、これを機にダイエットを計画してみても良いかと思います。

うまく切り替える方法

フードの変更は、7〜10日ほどかけて切り替えることをおすすめします。
徐々に切り替えることで、愛犬と愛犬の消化管(胃や腸)が、新しいフードに慣れていきます。

具体的な変更スケジュールは以下の通りですが、これも個体差があるため、必ず守らないといけないわけではありません。

1日目から2日目:現在のフードの量を通常の3/4に減らし、新しいフードを1/4に増やします。
3日目から4日目:現在のフードと新しいフードを半量ずつ与えます。
5日目から7日目:新しいフードを3/4、以前のフードを1/4与えます。
8日目から10日目:新しいフードだけにします。

愛犬が新しいフードを好まなかったり、消化不良を起こしたりするようであれば、移行期間をさらに数日延長してみましょう。

各疾患におけるフードの選び方

昔とは異なり、現在ではドッグフードメーカーが乱立しており、我々獣医師もすべてのフードを把握することは不可能です。

一般的に、病院で紹介されるフードは限られています。
その理由として、製造過程が明確であることや、療法食の特色を、病院向けのセミナーなどを通して病院スタッフと共有していることが挙げられます。

ここでは、各疾患におけるフードの選び方について、簡単に解説いたします。

肥満

犬や猫では、適正体重の15~20%を超えると肥満に相当します。

特に、犬は食べられるときに食べておく、という習性が残っているため、体重の20%ほどを食べることができると言われています。
50kgの大人に換算すると、10kgのご飯を一気に食べられる計算です。

そのため、単純に現在のフードの量を減らすと、空腹状態が続いてしまい、ダイエットはなかなかうまくいきません。

また、フード量を減らすと必要な栄養素が不足してしまいます。

ダイエットフードはカロリーを抑えているため、フード量はそのままに必要な栄養素も摂取できる特徴を持っています。

メーカーによるかもしれませんが、ダイエットフードに記載されてある給餌量は、目標体重の項を参照しましょう
ただし、急激なダイエットは体調不良の原因になりかねないため、1週間で1〜3%の減量を目指します。

とはいえ、肥満の原因の多くが、摂取カロリー過多とされています。おやつを与えている場合、まずはそこから見直しましょう。

糖尿病

糖尿病は、血糖値を下げるためのインスリンが不足する病気です。

体内のインスリンが不足すると血糖値が上昇して、さまざまな臓器に悪影響を及ぼし、最悪の場合死に至ります。

犬の糖尿病は、人間のⅠ型糖尿病(インスリンが必須)に似た病態であることが多いとされています。

基本的には、フードは炭水化物の含有量が低いものを選びましょう。

皮膚疾患

代表的な病気は、アレルギー性皮膚炎です。

アレルギー性皮膚炎は、病態が複雑であるため、治療も一筋縄ではいかず難儀することが多い疾患の一つです。

人間の花粉症のような環境要因に依存した病態なのか、あるいは食物アレルギーなのか、あるいはその両者混合タイプなのかに分けられます。

放置してしまうと、難治性の皮膚炎となったり、下痢や嘔吐が続いてしまったりするため注意が必要です。

特に食物アレルギーは、理論的には子犬の時期に摂取したたんぱく質が原因で発症します。
そのため、新奇タンパク(食べたことのないタンパク)や免疫細胞が反応しないレベルにまで分解されたタンパクを食べさせることが必要です。

まずは、動物病院に行き、フードの選択も含めた今後の治療方針を獣医師と相談しましょう。
アレルギー性皮膚炎は、多くの症例で長期にわたる治療が必要となります。

下痢

下痢は、小腸性下痢と大腸性下痢に分類されます。

小腸性下痢の代表的な病気は、蛋白漏出性腸症や急性膵炎、食物アレルギーなどです。

蛋白漏出性腸症や急性膵炎の場合は、低脂肪食の継続給餌が推奨されます。

また、食物アレルギーは前述のとおり、反応するアレルゲンに考慮したフードを選択しましょう。

大腸性下痢は、一過性のことが多いですが、間欠的に続いてしまう場合には高線維食や乳酸菌のようなプロバイオティクス配合食への変更も検討します。

肝臓病

肝臓は、食べ物の栄養素や毒素を代謝する重要な臓器です。

肝臓が機能不全に陥るような病気にかかった場合、タンパク質の代謝時に生じるアンモニアを解毒できず、神経症状を引き起こしてしまいます。

しかしながら、肝臓の再生のためにもタンパク質は必須であるため、消化性の良い良質なタンパク質が配合されたフードを選択するべきでしょう。

肝臓病療法食は、メーカーが限られているため、まずは獣医師に相談することをおすすめします。

心臓病

心臓は、血液を全身に送るためのポンプです。

犬における代表的な心臓病として、僧帽弁閉鎖不全症が挙げられます。
いわゆる弁膜症であり、治療および定期検査をしっかり行わないと、呼吸困難となり、死に至る恐ろしい病気です。

ACVIM(アメリカ獣医内科学学会)が発表したガイドラインでは、薬物治療が必要なレベルであるステージから食事療法の併用が推奨されています。

フードのコンセプトとしては、塩分濃度が低く設定されており、それにより飲水量を減らすことで血液量の過多を防ぎます。

腎臓病

腎臓は、血液からできる限り老廃物のみをろ過する臓器です。

慢性腎臓病では、このろ過フィルターを担う糸球体という組織が、減少することで老廃物が体内に残存してしまいます。

腎臓にダメージを与えてしまう最たる物質はリンとタンパク質であり、これらを制限したフードが腎臓病療法食です。

ただし人間と同じように、腎臓病は基本的にはゆっくりと進行してしまうため、治すことはできません。

あくまでも病態の進行を抑えることが、治療のコンセプトです。

下部尿路疾患

尿は腎臓で生成され、尿管を通って膀胱で貯留し、膀胱から尿道を通り体外に排出されます。

「下部尿路」とは、膀胱と尿道を指します。
下部尿路疾患の代表は、膀胱結石や膀胱炎です。

膀胱結石は、多くの犬でストラバイト(リン酸マグネシウムアンモニウム)とシュウ酸カルシウムに大別されます。

詳細な病態メカニズムは未解明ですが、いずれも食事に関連していることが分かっています。

ストラバイトはフードの変更などにより消失しますが、シュウ酸カルシウムは消失しないため、手術が必要となるケースが多い結石です。

また、膀胱炎とも関連していることがあるため、頻尿傾向や粗相・血尿などの症状が認められた場合には、動物病院で検査をしてもらいましょう。

まとめ

フードの変更は、愛犬のライフステージや体格・病気にかかった際に検討します。

人間が年齢とともに塩分や脂の多い食事を控えるのと同様に、愛犬の食事もその都度考えてあげましょう。

また、いずれのフードの切り替えにおいても、愛犬の負担にならないように、徐々に変更してください。

この記事を通して、みなさんが幸せな愛犬ライフを送れますことを切に祈っております。

参考:
Changing Dog Food: How to Switch Dog Food | Purina
ワンちゃんネコちゃんの病気と食事|プレミアムペットフードのROYAL CANIN<ロイヤルカナン>

ABOUT ME
今井 貴昌
日本獣医生命科学大学卒。地方の動物病院と都内のグループ動物病院で数年間の勤務を経て、母校の臨床研修医として研鑽を積む。獣医師として社会に貢献するため日々奮闘中。
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