ドッグフード

犬にアーモンドを与えるのはNG?注意点や食べてしまったときの症状・対処法

執筆者:葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師 ...プロフィールをもっと見る

香ばしいアーモンドは、おつまみやおやつとして人気です。最近ではアーモンドをそのまま食べるだけではなく、アーモンドミルクと呼ばれるアーモンドを粉砕して液状にしたものが健康によいと注目されています。

人間にとっておいしく感じるアーモンドですが、わんちゃんが食べることはできるのでしょうか。今回は、わんちゃんにアーモンドを与える危険性について解説します。

わんちゃんと飼い主さんは同じものを食べられる?

「自分がおいしいと感じるものを、愛するわんちゃんにも共有したい」と願う飼い主さんも多いでしょう。一緒においしさを共有して、嬉しそうに食べる姿を見るのは幸せな時間です。

しかし、人間が食べられるすべての食物を、わんちゃんに与えてよいわけではありません。なかには、わんちゃんが食べると消化機能に大きな負担がかかったり、中毒症状を起こしたりするものも存在します。飼い主さんとわんちゃんがまったく同じものを食べてはいけない理由として、以下が挙げられます。

消化機能の問題

私たち人間が問題なく消化できるものでも、わんちゃんの消化器にとっては大きな負担となってしまう食材もあります。

たとえば、食物繊維の多い野菜や、硬い・大きい果物などは要注意です。わんちゃんの消化機能では、人間と同じように食べると大きな負担がかかってしまい、消化不良につながることがあります。

そのため、与える際には加熱をしたり、細かく切って消化器への負担を軽減したりする必要があります。

味付けの問題

わんちゃんはもともと人間ほど味覚が発達しておらず、嗅覚などと併せて食材の風味を楽しむと言われています。甘みがあるものは好む傾向がありますが、好むからといって人間と同じように甘みを足して与えていると、糖分の摂り過ぎになってしまうおそれがあります。

塩分も、体を維持するために少量は必要ですが、過剰摂取すると内臓に負担をかけてしまいます。わんちゃんは塩分を尿として体外へ排出する「塩分排出能」は高いと言われていますが、健康面への配慮からも塩分の過剰摂取はおすすめできません。また、トウガラシのような刺激的な味付けももちろんNGです。

わんちゃんが食べる場合は、素材そのものの風味を楽しめるよう、ほとんど味付けはせずに、わんちゃん用に作ってあげる必要があります。

起こり得る中毒の問題

人間は問題なく食べれても、わんちゃんたちにとっては中毒の原因となる食材も多く存在します。玉ねぎ中毒や、ブドウによる腎毒性などは、ご存知の飼い主さんも多いのではないでしょうか。

そのほかにも、アボカドやキシリトールなど、中毒を起こす危険性のある食材は身のまわりに潜んでいます。知らずに与えてしまうと大変危険です。

食材への反応は個体差があり、少量で偶然大きな症状につながらずに済む子もいれば、少量でも命にかかわるほどの強い症状が出てしまう子もいます。わんちゃんが食べても大丈夫な食材と、絶対に与えてはいけない食材は、しっかりと把握しておくことが大切です。

わんちゃんにアーモンドを与えてはいけない

では、アーモンドはわんちゃんが食べても大丈夫なのでしょうか。健康面でも注目されている食材であるため、わんちゃんと一緒に楽しみたいと思っている飼い主さんもいるでしょう。

結論から言うと、わんちゃんはアーモンドを食べられません。「おいしいし健康によさそうなのになぜ?」という声が聞こえてきそうですが、わんちゃんの消化機能や消化器の構造に基づいた理由がきちんとあります。

消化によくない

食物繊維を多く含むアーモンドですが、非常に硬いため、細かく刻んだとしても、わんちゃんの消化機能に負担がかかってしまいます。

人間のようにしっかりと臼歯ですりつぶして飲み込むのではなく、わんちゃんは犬歯で肉を切り裂くように細かくして飲み込みます。そのため、アーモンドのような硬い粒は、消化器に負担をかけないほどの細かさになるまでよく噛むことが難しいでしょう。

わんちゃんたちの消化器に負担がかかると、下痢や嘔吐を起こしやすくなるため危険です。

高脂肪・高カロリー

アーモンドをすりつぶした「アーモンドミルク」が最近注目されています。このことからもわかるように、アーモンドは脂肪分を多く含んでおり、カロリーも高いです。カロリーの摂りすぎは肥満につながり、健康を害する危険性もあるでしょう。

人間と同様、わんちゃんは消化をする際に胃や腸だけではなく、肝臓や胆嚢・膵臓(すい臓)などの消化器も利用して栄養を吸収し、便を作り出しています。脂肪分が多すぎると、とくに膵臓に負担がかかり、膵炎(すいえん)と呼ばれる炎症を起こします。

膵炎は激しい下痢や嘔吐を引き起こし、脱水や栄養失調につながり、ひどい場合には死に至る怖い病気です。膵炎の引き金になる可能性があるため、脂質を多く含むアーモンドはおすすめできません。

詰まらせやすい形状

アーモンドは小さくて丸く、そのままの大きさで飲み込むこともできる形状です。わんちゃんはあまりかみ砕かずに食べることが多く、丸呑みをしてしまうケースも考えられます。しかし、そのまま飲み込むと閉塞を起こすおそれがあります。

とくに腸が細い子犬の場合は、そのまま腸で閉塞を起こしてしまい死に至る危険性もあります。与えないようにするだけではなく、誤食にも気をつけましょう。

アーモンドを食べてしまったときの症状

ここまで、わんちゃんにアーモンドを与えてはいけない理由についてお話しました。少量食べただけで死に至らせるほどの危険な食材ではありませんが、わんちゃんの体にさまざまな症状が出る場合があります。

万が一誤食してしまった際に、すぐに対処できるよう、どのような症状が出るのかを把握しておきましょう。

下痢・嘔吐

硬く、食物繊維を多く含むアーモンドは、わんちゃんの消化器には大きな負担がかかり、消化不良を起こしやすいです。また脂質の過剰摂取により、膵炎を起こすおそれもあるでしょう。

膵炎は激しい下痢や嘔吐を伴います。下痢や嘔吐が長く続けば、栄養吸収が上手くいかなくなったり、脱水が起こったりして、命に危険が及びます。下痢や嘔吐の頻度が増し、程度がひどい場合は、早めに動物病院を受診してください。

アレルギー症状

アーモンドそのものに対するアレルギーは、わんちゃんではあまり見られません。しかし、アレルギー反応で気を付けなければいけない性質の一つに「交差反応」があります。

交差反応とは、食物や植物そのものに対するアレルギー反応だけではなく、近い属性を持つ食物・植物に対してもアレルギー反応を示すことです。

たとえば、アーモンドに近い属性を持つものだと、リンゴや桃・白樺花粉などが挙げられます。アレルギー検査でこれらの食物や花粉への反応が見られたわんちゃんは、アーモンドに対してもアレルギー反応を示すおそれがあるため注意が必要です。

アレルギー反応が出ると、顔の腫れ・アレルギー性の腸炎や嘔吐・口周りや肛門周囲の皮膚の炎症などが見られます。

まずは、アレルゲンとなっているアーモンドを与えない配慮がもっとも大切ですが、抗アレルギー剤の投与など、負担を軽減させるための処置をしたほうがよい場合もあるため、一度受診することをおすすめします。

物理的な閉塞による異変

あえて丸呑みをすることは少ないかもしれませんが、いたずらで遊んでいるうちに思わず丸呑みしてしまうケースも起こり得ます。仔犬の場合、食道や腸が細く閉塞してしてしまう危険性があります。

閉塞している部位にもよりますが、激しい嘔吐や吐き出そうとする仕草のほか、物理的に閉塞をして通過できないために、食欲不振や食べた後に胃などの消化器まで到達せずに吐き出す「吐出」という変化が見られます。

大型のわんちゃんでは閉塞する確率は低いですが、食道に違和感があるために吐き出そうとする行動が見られるかもしれません。

閉塞は緊急性が高い状態です。死に至る危険性がある場合には、外科的な手術が必要となります。閉塞が疑わしいときは、ただちに受診しましょう。

誤って食べてしまったときの対処方法

アーモンドを食べると起こり得る症状について解説してきました。万が一アーモンドを食べてしまった場合、できれば大きな負担がかかってしまう前に対処するのが望ましいですが、飼い主さんはどのような行動をとったらよいのでしょうか。アーモンドを口にした可能性があるときの対処法についてまとめました。

口に入れているのを見つけたら落ちついて取り出す

まず、まさに口に入れているのを見つけたら、そっと声をかけ、口に手を入れてアーモンドを取り出しましょう。このとき、慌てて大きな声をあげたり、急に近づいたりすると、わんちゃんもあせってしまって、丸ごと飲み込んでしまう場合があります。

飼い主さんは落ち着いて声をかけ、ゆっくりと確実に取り出せるように行動しましょう。

普段から、飼い主さんに声をかけられたら何かに夢中になっていても注意を向けられるようにしつけたり、口の中に手を入れられることに慣らしたりしておくと、誤食トラブルの際に役立ちます。

このようなケースは、飼い主さんが在宅中でも、その目を盗んでいたずらをした際によく起こります。わんちゃんの手が届かないところにアーモンドを保管するといった工夫が必要です。

いつ、どの程度食べたのか、冷静に把握する

口から取り出すことができずに飲み込んでしまったり、食べた後の残骸を飼い主さんが発見したりすることもあるでしょう。予想外のトラブルに、パニックになってしまいがちですが、落ち着いて冷静に判断しましょう。

確実に食べてしまったのか・どのくらいの量を食べたのか・どのタイミングで食べたのか、などの情報を整理する必要があります。

これらは、受診時に獣医師が「どのような状況なのか」「どんなことが起こり得るか」を診断する際に有意義な情報となります。受診するまでに、その場所から少しでも多くの情報を集められるよう、よく観察をして、家族とも情報の共有を心がけましょう。

受診する

アーモンドを食べてしまい、症状が出ていたらすぐに受診が必要です。「たかが消化不良の一時的な下痢や嘔吐……」と様子を見がちですが、年齢や体の状態によっては大きな脱水や栄養失調につながり、死に直結してしまうリスクもあります。

下痢や嘔吐の場合、吐物や排泄物の状態を記録しておくと、受診のタイミングが把握しやすいです。状態の明らかな悪化・頻度が増す・食欲不振や元気消失などの変化は、メモで構いませんので、細かく記録して家族全員で共有しましょう。

また、激しい嘔吐がある場合や、明らかな丸呑みが見られ閉塞につながる危険性がある場合は、様子見はせずただちに受診してください。怒られるのではないかと、アーモンドを誤食してしまった・与えてしまったという情報を隠してしまいがちですが、スムーズな診断および処置のためにも、情報は少しでも多く獣医師の先生に伝えることが重要です。

まとめ

好きな食べ物を、わんちゃんと一緒に楽しみたいと感じる飼い主さんも多いでしょう。しかし、体の構造や機能の違いがあるため、まったく同じように食べるのは困難です。場合によっては、命にも危険が及んでしまいます。

アーモンドは死に直結するような怖い食物ではありませんが、体調不良を起こしやすいため、与えないのがベストです。また、わんちゃんが誤って口にしまうことのないよう、置き場所にも気を付けましょう。

ABOUT ME
葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。
獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。
開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。
皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、得意分野とさせていただいています。
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