執筆者:岡田 京子
北里大学 獣医畜産学部 獣医学科2008年卒業。金沢医科大学 大学院 ...プロフィールをもっと見る
「愛犬が玉ねぎを食べてしまった」……そんなとき、飼い主さんはどう対処すればよいのでしょうか。
今回は、玉ねぎ中毒の恐ろしさと、愛犬を守るための知識を、わかりやすく解説します。
犬は思いがけない瞬間に、食べてはいけないものを口にしてしまうことがよくあります。いざというときにために、ぜひご一読ください。
1年間でどれくらいの誤飲誤食が起こっている?
一般社団法人ペットフード協会の調べによると、年間20万件以上もの誤飲誤食が発生しています。
経過観察で問題がなかったケースから、緊急手術が必要となったケース、死亡してしまったケースまで誤飲誤食の症例はさまざまです。
犬が食べてはいけないものは多く存在し、家庭内やお散歩中にも誤食が起こるおそれもあります。誤食により健康に害を及ぼす危険性があるものは以下のとおりです。
- ひも
- 布(靴下、タオル、衣類など)
- 焼き鳥などの竹串
- 果実や梅干しの種
- トウモロコシやリンゴの芯
- 石や砂
- ボール
- 犬用ガムの丸のみ
- おもちゃ
- プラスティック
- 肉や魚のニオイがついたラップ など
- 玉ねぎ
- ブドウ
- チョコレート
- キシリトール
- コーヒー、紅茶、緑茶
- 人間の医薬品 など
犬が玉ねぎを食べてはいけない理由
玉ねぎをはじめとして、ニラ、長ネギ、にんにくなどには有機チオ硫酸化合物が含まれています。
有機チオ硫酸化合物は、人に対しては血栓予防や抗がん作用などの良い効果がある成分です。
しかし、犬や猫は有機チオ硫酸化合物を分解する酵素を持っておらず、赤血球や赤血球内のヘモグロビンと結合して、赤血球を破壊してしまいます。この破壊される現象を溶血(ようけつ)といいます。
溶血を起こすとさまざまな不調につながり、最悪の場合死に至る危険性があるため、玉ねぎは与えてはいけません。
犬が玉ねぎを食べるとどうなる?
犬が玉ねぎを食べると中毒を起こし、以下のような消化器症状が見られる場合があります。
- 食欲不振
- 嘔吐
- 下痢 など
また、溶血が起こると、酸素を運ぶ働きが生涯されるため、以下のような症状が見られます。
- 血色素尿(オレンジ色の尿)
- 粘膜蒼白~黄疸
- ふらつき(酸欠による)
玉ねぎをなめる程度であれば、中毒を起こすリスクは少ないと考えられます。しかし、症状の発現には個体差がかなりあるため、最低でも1週間は注意して観察しましょう。
玉ねぎを摂取後、すぐに中毒の症状が表れるわけではなく、早くて1日、おそくて5日程度かかるといわれています。
約3kgのポメラニアンが、サラダに入っていた玉ねぎスライスを2枚食べてしまった事例です。
食べた直後に来院されて、すぐに催吐処置を行いました。その後、血液検査を実施し、活性炭の内服も処方してその日は問題なく帰宅されました。
しかし数日後、様子がおかしいと再来院されたため血液検査をしたところ、重度の黄疸と貧血、肝臓・腎臓の数値の上昇が見られ、明らかな中毒症状を呈していました。
食べると危険な参考量よりもかなり少ない摂取量で、適切な処置を早期に行ったにもかかわらず、中毒症状が起こってしまったのです。
先述したとおり、中毒症状には個体差があり「少しだから大丈夫」とは言い切れないのが玉ねぎ中毒の恐ろしいところです。
どれくらいの量の玉ねぎを食べると危ない?
犬は体重の0.5%以上、体重1kgあたり15~30gの玉ねぎを摂取すると中毒症状が出るといわれています。
一般的に販売されている玉ねぎはMサイズで、おおよそ200gです。また、にらは1束100g、長ネギ1束100g、にんにく1片8gが目安です。
たとえば、体重3kgの子が食べると危険な量は以下のとおりです。
- たまねぎ:1/5個
- にら:1/2束
- 長ネギ:1/2本
- にんにく:5片
これらは生の状態の量であり、加熱してある状態ではさらに少量にとなります。チオ硫酸ナトリウムは、乾燥させても加熱しても毒性がなくなりません。
加工したたまねぎ、スープ、ジュース、ソース、すき焼き、肉じゃが、ドレッシング、ハンバーグなどにも注意が必要です。
ただし、上記はあくまで目安であり、これより少ない量でも症状が出る子はいるため気をつけてください。
玉ねぎを食べてしまったときの対処法
犬が誤って玉ねぎを食べてしまったら、早急に吐かせる処置が必要です。
まずは落ちついて、どれくらいの量を食べて、今どれだけの時間が経っているのかをメモし、かかりつけの動物病院に連絡しましょう。
たまねぎを食べたときの病院での治療
食べた量にもよりますが、摂取してから30分~1時間以内であれば吐かせる処置(催吐処置)を行います。状態によっては、麻酔をかけて胃洗浄を行う場合もあります。
摂取してすぐは血液に異常が出ることはほとんどありませんが、念のため血液検査も行うのが一般的です。食欲や元気があれば、活性炭の内服を処方します。
すでに中毒症状が出ており、貧血が重度である場合は、酸素室での入院、輸血が必要です。
まとめ
たまねぎはさまざまな料理に使用されており、どれだけ注意していても口にしてしまう危険性はゼロにはなりません。
とくに、BBQの時期になると、ふと目を離した瞬間に食べてしまうケースがよくあります。また、赤ちゃんの離乳食にもたまねぎが多く使用されているため注意が必要です。
誤飲誤食を未然に防ぐ対策を行うほか、万が一のトラブルを想定して、対処法をしっかりと確認しておきましょう。
「愛犬に合うドッグフードがわからない・選べない」と思いませんか?
愛犬の情報を入力するだけで、合う可能性のあるフードを診断します。