執筆者:原 京子
動物看護士、ペットショップでの生態管理、動物園飼育スタッフなどを経験 ...プロフィールをもっと見る
愛犬をお迎えすると決めたら、これからはじまる犬との生活に心踊る方も多いことでしょう。
しかし、飼い主は可愛がるばかりではなく、届け出やしつけなど、やらなければならないこともたくさんあります。
ここでは、子犬をお迎えする前や迎えた当日・一週間以内にやるべきことについて詳しくまとめました。
家に連れてくるまでにすること
ペットショップやブリーダー・里親などから愛犬を引き取る際、愛犬が自宅に到着する前に、愛犬の情報を確認したり、飼育グッズを用意したりする必要があります。
引き取り先から情報を聞く
引き取り先からは、おもに以下のことを確認しておきましょう。
- 食事の種類や回数、与え方
- トイレトレーニングの状態やおおよその回数、タイミング
- ワクチンや健康診断の有無
- 癖、性格などの特徴
子犬は、食事の種類や与え方・与える回数が週齢によって異なるため、詳しく聞いておきましょう。
また、引き取り当日の給餌は済んでいるかも確認しておきます。
トイレを指定の場所でするトイレトイレーニングは、お迎え初日から開始します。
そのため、どこまでできているのかや、おおよその回数や排泄のタイミングなどを把握しておくと、今後のトレーニングがスムーズになるでしょう。
狂犬病予防注射や混合ワクチン・健康診断が済んでいるのか否かも確認することが大切です。
そのほか、お迎えする子の癖や性格などの特徴をある程度把握しておくと、これから生活していく上で役に立ちます。
飼育グッズの準備
愛犬をお迎えする前に、最低限揃えておきたい飼育グッズは、以下の通りです。
- サークル(ケージ)
- キャリー(クレート)
- 食事
- 食器類
- ペットシーツ
サークルやケージは、室内で犬を飼育するうえで欠かせません。
犬専用の居場所を作ることは、留守番時のいたずらや事故の防止はもちろん、安心できる場所にするためにも重要です。
また、サークルは子犬時のトイレトレーニングや遊び場所として適しています。
ケージよりも目が届きやすいことや、飼い主の出入りが楽なこと、広々としたスペースが確保できるなどの特徴があります。
キャリーやクレートは、愛犬をお迎えする際はもちろん、外出時や動物病院の待合室での使用や、そのままハウスとして日常的に使用することも可能です。
「小型犬は普段は抱っこでいい」と考える方も、動物病院など公共の場でのマナー、災害時の避難や移動手段として、キャリーやクレートは常備しておきましょう。
食事は今まで食べていた種類を、同じやり方や回数で与えます。
食器類(エサ入れと水入れ)は、愛犬の大きさや高さに合ったものを選ぶと良いでしょう。
ペットシーツは、トイレトレーニングの際にたくさん使用するため、多めに購入しておくと安心です。
また、床がフローリングだと愛犬が滑ってしまい、脚や腰に負担がかかります。
クッション材を敷いたり、フロアコーティングをしたりするなど、愛犬が安全に過ごせる環境を整えましょう。
お迎え当日の過ごし方
お迎え当日は、長旅と環境の変化で疲れている愛犬のために、構いたくなる気持ちを抑え、ゆっくり休ませてあげることが大切です。
ここでは、お迎え当日の愛犬との過ごし方のポイントを紹介します。
無理に遊んだり、エサやおやつを与えたりしない
愛犬が遊びたがっている場合を除いて、無理に遊ばせずに、静かな環境でそっと休ませてあげましょう。
また、緊張や不安からご飯を食べない場合もありますが、翌日になれば食べることもあるため、初日は無理に食べさせる必要はありません。
翌日になってもまったく食べない場合は、愛犬をお迎えした場所や動物病院に相談すると安心です。
トイレトレーニングを開始する
ペットシーツの上で排泄をしてもらうトイレトレーニングは、お迎え当日から開始します。
まずは愛犬のいるクレートやケージの底全体に、ペットシーツを敷き詰めます。
どこで排泄をしても、ペットシーツの上になることが狙いです。
そして排泄をしたらすぐに褒めます。
初日のトレーニングから数日間は、この方法を繰り返して行ってください。
体調を崩さないか観察する
もともと免疫力の低い子犬は、緊張や不安が重なると体調を崩してしまいがちです。
体調を崩さないよう温度管理を徹底することや、異常がみられた際には直ちに相談できるよう、動物病院をリサーチしておくことも大切です。
子犬の場合、適切な室温は25度前後、湿度は40〜60%とされます。
ケージを置く場所は、エアコンの直風が当たる場所や、窓やドアの傍など寒暖差が激しい場所を避けましょう。
寒い時期は、エアコンのほかに、犬用のペットヒーターを併用するとよいでしょう。
子犬の体調不良として見られる主な症状は、以下の通りです。
- 下痢
- 嘔吐
- 異常な鳴き声を発する(キャンキャンなど)
下痢や嘔吐は、何度も繰り返すと脱水症状を起こすリスクがあります。
また、キャンキャンと悲鳴のように鳴く場合は、痛みや苦しみが原因かもしれません。
子犬の体調不良は、環境の変化によるものが考えられますが、病気の可能性もあります。
どの症状も、続くようであれば動物病院へ相談すると安心です。
夜泣きの対策方法
子犬の夜泣きの原因は、一人になることや、新しい環境に慣れていないために生じる不安や寂しさです。
対策として、以下の方法がおすすめです。
- サークルやクレートに慣れてもらう
- 数日間は人間が同じ部屋で寝てあげる
- 母犬のにおいのついたものを寝床に置く
子犬の場合は不安や寂しさが原因であるケースが多いため、飼い主さんが同じ部屋で寝てあげることで、独りぼっちからくる不安を軽減する効果が期待できます。
また、ブリーダーからお迎えした場合は、母犬の臭いのついたタオルなどを一緒に入れておくと、安心感から眠りにつきやすくなります。
ただし、環境に慣れることが子犬の夜泣き対策になるため、ある程度は夜泣に対して無視をすることも必要です。
いつまでも飼い主さんが横で寝ていると、子犬はいつになっても一人で眠ることに慣れません。
子犬の様子をよく観察しながら、徐々に一人で眠れるよう工夫をしていきましょう。
お迎えから1週間の過ごし方
次に、お迎えから1週間にやるべきことについて解説します。最も重要なのは、新しい環境に慣れてもらうことです。慣れるペースには個体差があるため、何事も焦らずに行わなければなりません。そして、様子を見ながら、徐々にしつけを始めていきましょう。
新しい環境に慣れてもらう
新しい環境に慣れるとは、「生活環境」に慣れることだけではありません。
- 住んでいる環境に慣れさせる
- 体を触らせることに慣れさせる
- 音やものに慣れさせる
体を触らせることに慣れてもらうことは、ブラッシングや歯磨き・健康チェックの際などに役立ちます。
はじめは触りやすいあごの下からはじめ、徐々に嫌がりやすい口まわり・お腹・尻尾・お尻周り・足先なども触れるようにします。
また、テレビや洗濯機・掃除機・ドライヤーなど、環境音や物に慣れさせることも重要です。
機会があれば、第三者やほかの動物とも接する機会を作りましょう。
ただし、免疫が不十分な場合は、無理に行う必要はありません。
子犬の「社会化期」はしつけに最適
子犬には社会化期があり、生後3〜12週齢が該当します。この時期は、恐怖や警戒心よりも好奇心が有利に働くことが特徴です。
そのため、人間社会に慣れさせ、しつけをするのに最適な時期だといわれています。
人や物に慣れさせることはもちろん、ほかの動物や犬同士のコミュニケーション作りをしっかりと行うのが理想です。
社会化期を過ぎると、自我が芽生えて徐々に警戒心が強くなります。
しつけを覚えにくくなるほか、物や第三者などに対して神経質になり、不安やストレスを感じやすくなります。
しつけを開始する
お迎えして1週間以内にはじめたいしつけは、以下の通りです。
- トイレトレーニング
- アイコンタクト
- 「まて」「よし」
トイレトレーニングは、前述した通りお迎え初日からはじめます。
アイコンタクトは、名前を呼んだ際に飼い主の目を見て集中できるようにするしつけです。
アイコンタクトを覚えると、散歩時の危険やトラブル、問題行動の回避、飼い主さんとのスキンシップ向上など、さまざまな面で役に立ちます。
「まて」や「よし」を覚えさせることは、お散歩デビューした際の信号待ちなどで必要になるほか、遊びで興奮しすぎてしまった際のクールダウンに役立ちます。
これら3つのしつけは、犬を飼う上で必ずと言ってよいほど覚えさせたい項目です。
犬の飼い主として知っておきたいこと
犬の飼い主になったら、狂犬病予防やフィラリア予防など、愛犬や人間が安全に暮らすために行わなければならないことがあります。
ここでは、犬の飼い主として知っておくべき項目をまとめました。
登録や狂犬病予防注射を忘れずに行う
犬をお迎えしたあとは、以下の手続きが必要です。
- 登録の届け出
- 狂犬病予防ワクチン
生後90日を経過した日から、30日以内に登録の届け出が必要になります。
登録時には、犬の鑑札と犬門表が交付されます。
届け出に関しては、犬が死亡した際にも「死亡届」を提出する必要があります。
狂犬病予防注射は、犬を飼い始めた日から30日以内に接種させ、届け出る必要があります。
翌年以降は各市町村によって異なるため、お住まいの役所に確認をとると安心です。
混合ワクチンはいつから打てる?
犬には、混合ワクチンを打つことができます。
混合ワクチン接種は義務ではありませんが、かかってしまうとほかの犬や人間に感染するおそれがあり、場合によっては命にも関わるため、なるべく接種しましょう。
・混合ワクチン:初回6~8週で開始し、16週齢になるまで2〜4週ごとに接種する。
それ以降は1年に1回接種する。
混合ワクチンは主に2種類あり、全世界に見られ感染すると命に関わるもの(コアワクチン)と、犬に感染のリスクがあるもののみ接種がすすめられる(ノンコアワクチン)に分けられます。
それぞれの内容は、以下の通りです。
・コアワクチン:犬ジステンパーウイルス感染症、犬パルボウイルス感染症、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス2型感染症
・ノンコアワクチン:犬パラインフルエンザウイルス感染症、犬コロナウイルス感染症、レプトスピラ感染症
混合ワクチンは、このなかから組み合わせによって2〜11混合まで種類があります。
何種を打つべきかは、飼育環境などによって異なるため、獣医師と相談するとよいでしょう。
また、この時期に一緒に健康診断を受けるとより安心です。
フィラリア予防はいつから開始する?
フィラリアとは、蚊に刺されることでミクロフィラリアという犬糸状中(フィラリア)の子供が体内に侵入し、やがて成長しながら肺動脈や心臓などに寄生する病気です。
体の中で成虫になると、治療が難しいほか、血尿や貧血などさまざまな症状を引き起こし、最悪の場合命に危険が及びます。
フィラリアを予防するには、毎年フィラリアの検査をして、駆除薬を飲ませます。
子犬の場合は生後60日から投与が可能です。
また、飲ませる期間は一般的に4〜11月と言われていますが、地域によって蚊の発生期間が異なるため、お住まいの地域にある動物病院に相談しましょう。
散歩はいつからしてもいい?
子犬の散歩は、ワクチン接種後、抗体のできる20〜100日後がおすすめです。
外にはさまざまな感染症ウィルスや菌が存在するため、ワクチン未接種で外に連れ出すのは危険です。
ワクチンを打つ際に、動物病院で確認をとっておくと安心です。
まとめ
- 犬を迎える前には、情報を聞いておくことや飼育グッズを用意しておくことが大切
- お迎え当日は疲れているため、ゆっくり休ませる
- お迎えから1週間は、環境に慣れてもらうことが大事
- 犬を飼ったら登録と狂犬病予防注射の届け出が必要
愛犬をお迎えしてからの日々は、良い意味でも毎日振り回されることになるでしょう。
これから10年以上共に暮らす愛犬が、人間社会で迷惑になったり、ストレスを感じたりすることなく生活するためにも、飼い主さんは可愛がるだけでなく、しつけや予防注射・届け出などしっかりと行い、飼い主としての責任をもつことが大切です。
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