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犬の吠え癖は直る?吠える理由や対処方法まとめ

執筆者:原 京子
動物看護士、ペットショップでの生態管理、動物園飼育スタッフなどを経験 ...プロフィールをもっと見る

犬の吠え癖は、近隣の迷惑になる問題行動の一つです。
愛犬が世間の迷惑者にならないためにも、吠え癖の対策は必要不可欠と言えるでしょう。
吠え癖を直すには、なぜ吠えるのか理由を突き止め、それに応じた対処が必要となります。
今回は、犬の吠え癖の原因や対策方法を詳しくまとめました。

吠え癖は問題行動の一つ

飼い主さんにとっては、吠えることも普段の可愛さから許せてしまうかもしれません。
しかし、近隣からすれば騒音でしかなく、犬に対して悪いイメージを持つ方もいるでしょう。
人間社会の中で暮らす犬にとって、周囲から悪いイメージがつくことは、私生活に影響を及ぼしかねません。

周囲に迷惑をかけずに気持ちよく愛犬と暮らすためにも、しっかりとしつけを行い、吠え癖を直すことが飼い主さんの責任です。

犬が吠える理由

犬にとって「吠える」ことは、遺伝子レベルで組み込まれた生理現象です。
犬はもともと群れをつくって生活する動物であり、吠えることは意思表示やコミュニケーションの一つとされています。
そのため、まったく意味のない「無駄吠え」は存在せず、何らかの理由があって吠えていると考えられます。
犬の吠え癖の主な理由は、以下の通りです。

  • 要求
  • 威嚇
  • 興奮
  • 遠吠え
  • 夜泣き

愛犬の吠え癖をなくすためには、まずなぜ吠えているのかを把握することが大切です。

1. 要求

要求吠えは、その名の通り飼い主さんに何かを要求するためのものです。

  • ご飯の時間に吠える
  • 散歩の時間に吠える
  • 遊んでほしいときに吠える

吠えることで、飼い主さんに要求をアピールしています。
この時、要求に答えてしまうと、どんどん要求吠えは悪化します。
飼い主さんとの主従関係がうまくいっていない場合が多く、愛犬が飼い主さんに指示を出している状態です。

2. 威嚇

威嚇や恐怖から吠えてしまうのが、威嚇吠えです。

  • 来客時に吠える
  • 宅配便が来たら吠える
  • 第三者や他の動物に対して吠える

犬にとって、威嚇や警戒は本能の一つです。自分にとって危険だと感じると、犬は吠えてしまいます。
たとえば、縄張りである家に知らない人が侵入することや、いつもの散歩コースにいる人や動物に対して警戒心を抱き、吠えることがあります。
来客時には、インターフォンの音に対して警戒吠えをはじめる犬も少なくありません。

警戒吠えをした際に、飼い主さんが抱っこをしてなだめると、褒められていると勘違いして余計にエスカレートするおそれがあります。
また、すぐに帰る宅配便の人などに対しては、吠えたら帰ったと勘違いして、同じくエスカレートすることがあります。

3. 興奮

「嬉しい」「楽しい」などの感情が収まらずに興奮状態になると、吠えてしまうこともあります。

  • 走っているとき
  • 嬉しいとき
  • 他の犬を遊びに誘うとき
  • 大好きなおもちゃやおやつを前にしたとき

少しだけなら良いのですが、大きな声でいつまでも吠えられると迷惑行為に繋がります。
「嬉しいから吠えても良いのでは」と飼い主さんが許してしまうと、余計に興奮吠えが悪化してしまうため注意しなければなりません。

4. 遠吠え

以下のような際に、犬はよく遠吠えをします。

  • サイレンが鳴ったとき
  • 救急車のサイレン音が聞こえたとき

犬がこの二つのサイレン音に反応しやすいのは、オオカミが発する周波数と似ているからとされています。
とくに、オオカミの原種に近い犬種(シベリアンハスキー)は遠吠えをしやすく、原種から遠い愛玩犬(小型犬や超小型犬)は、遠吠えをしない個体が多い傾向があります。

5. 夜泣き

夜中に泣き続ける「夜泣き」は、犬の年齢によって原因が異なります。

【子犬期】

  • 一人で眠ることに慣れていない
  • 環境に慣れていない

子犬が夜泣きをするときは、不安を感じている可能性が高いです。
とくにブリーダーからお迎えした子犬は、一人で眠ることに慣れていません。
また、新しい環境に慣れていないことも一因です。

【成犬期】

  • トイレが汚い
  • 睡眠環境が不適切である
  • 分離不安

成犬の場合は、トイレが汚いことや寝床が騒がしいなどのストレスから、夜泣きをすることがあります。
また、飼い主と離れることを異常に不安がる、分離不安から夜泣きをする場合もあります。

【高齢期】

  • 排泄が間に合わない
  • 病気の痛みや苦しみによるもの
  • 飼い主への要求
  • 認知症によるもの

シニア犬の場合は、排泄が間に合わない、喉が乾いたが自力で水が飲めないなど、要求をするために夜泣きをする場合が多いです。
また、病気からくる痛みや苦しみ、自由に体が動かない不安なども、原因として考えられるでしょう。

そのほか、高齢犬の夜泣きは、認知症が原因の可能性もあります。
認知症の場合は、夜泣き以外に粗相や昼夜逆転などの症状が見られることがあります。

とくによく吠える犬種はいる?

吠えやすい犬種としては、以下の種類が該当します。

  • 牧羊犬や狩猟犬(ボーダーコリー、ジャックラッセルテリア 、ダックスフンド、ビーグルなど)
  • 小型犬または超小型犬(チワワ、ポメラニアン、パピヨンなど)

これらの犬種がよく吠える理由として、吠えることが仕事の一つだったり、体が小さい分警戒心が強かったりすることが挙げられます。
しかし、個体差や生活環境にも影響されるため、一概に吠え癖がつきやすいとは言い切れません。

吠え癖の対処法

犬の吠え癖は問題行動のため、やめさせる必要があります。
しかし、吠えることは犬の本能であり、吠え癖の対策は簡単ではありません。
吠え癖がついてしまう前に対処することが理想ですが、吠え癖がついてしまった場合は、吠える理由に応じて適切に対処するべきです。

要求吠えの対処法

要求吠えの主な原因は、飼い主さんが甘やかして愛犬の要求に答えてしまっていることです。
「吠えるからおやつをあげた」「吠えるから散歩に連れていく」「吠えるから遊んであげる」などの行動パターンが、要求吠えを悪化させます。
要求吠えへの主な対策方法は、以下の通りです。

  • 吠えても無視をする
  • ご飯や散歩の時間をずらしてみる
  • 「おすわり」や「待て」をさせ、静かになってから行動する

要求吠えは、犬が人間に指示を出している状態が多いため、あえて無視をするのも有効です。
また、ご飯や散歩の時間が決まっていて、その時間に吠える場合には、時間をずらしてみるとよいでしょう。
そのほか、「おすわり」や「待て」など、行動を停止させるコマンドを使い、吠え止むまで待つ方法もおすすめです。

普段から甘やかしすぎないよう、飼い主としての立場をしっかりと確立することが大切です。

威嚇吠えの対策方法

威嚇吠えの対策は、インターフォンやすれ違う人などに対して、「危険ではない」と学習させる必要があります。

インターフォンが鳴ったら、「おすわり」や「待て」など停止のコマンドを使ったり、ケージやクレートに愛犬を移動させたりして、吠えるのをやめさせます。
犬が吠えるのをやめたら、褒めてあげましょう

散歩のすれ違い時も同様に、停止のコマンドを使用して、吠えるのをやめたら必ず褒めてあげることが大切です。
小さなお子さまが多く危険な場合には、散歩コースを変えてみるのも解決策としておすすめです。

遠吠えの対策方法

遠吠えへの対処方法としては、アイコンタクトがおすすめです。
アイコンタクトは、名前を呼んで飼い主さんの目を見てもらい、集中させるしつけです。
サイレンなどの音から注意を逸らす効果が期待できます。

遠吠えは犬の本能であり、離れた相手とのコミュケーション手段であるため、完全に止めるのは難しいかもしれません。
しかし、サイレンが鳴った際にアイコンタクトを使うことで、遠吠えを中断させるようにしつけることは可能です。

夜泣きの対策方法

夜泣きは、年齢と状況によって対策方法が異なります。

【子犬の場合】
お迎えして間もない場合は、飼い主さんが側で寝てあげる、母犬の臭いが付いたタオルなどを側に置くことで、安心させる効果が期待できます。
しかし、いつまでも飼い主さんが側で寝ていると、一人で眠ることに慣れないため、数日間だけに留めましょう。

【成犬の場合】
成犬の場合は、愛犬にとって寝床が安眠できる場所であるか、環境を見直すことが大切です。
寝床は暗く静かな場所に置き、トイレは不衛生にならないよう、多めに用意しておきましょう。
また、分離不安が疑われる場合には、早めに動物病院に相談すると安心です。

【老犬の場合】
不安や要求が原因で夜泣きをする場合には、飼い主さんが近くで眠ってあげると効果的です。不安の解消や要求が伝わりやすくなります。
病気からくる痛みや、認知症が原因の場合には、動物病院に相談するとよいでしょう。

吠え癖対策には叱らない

犬が吠えたとき、叱って止めようとする方も多いと思います。
しかし、吠えた際に叱ると、飼い主さんが「自分に興味を持ってくれた」「構ってくれた」と勘違いをしてしまいます。
そうなると、逆に吠え癖がエスカレートする場合があります。

吠え癖の対策方法としては、吠えることを停止させ、やめたら褒めることを繰り返すことが、もっとも効果的です。

まとめ

  • 犬が吠えるのは本能で、犬同士のコミュニケーションをとる手段の一つ
  • 吠え癖の理由は要求、警戒、興奮、遠吠え、夜泣きがある
  • 吠え癖対策には、理由に応じた適切な方法でトレーニングをする
  • 吠え癖のトレーニング中は叱らないことが大切

吠え癖を直すには、吠える理由を知り、適切な方法で対処することが大切です。
吠え癖対策はしつけのなかでも難しいとされており、根気のいるトレーニングになります。
できるだけ吠え癖がつかないよう、子犬の頃から予防・対策を始めましょう。

参考:
RPTM Japan│犬の遠吠えの不思議~救急車のサイレンにどうして鳴くの?~

ABOUT ME
原 京子
動物看護士、ペットショップでの生態管理、動物園飼育スタッフなどを経験。ペットと飼い主さんが正しい知識で生活できるよう情報を発信している。
保有資格:愛玩動物介護士、愛玩動物救命士、愛玩動物搬送士、ドッグライフカウンセラー
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