ドッグフード

【獣医師執筆】マルチーズを飼うときの注意点と対策、ドッグフード選びのポイントを解説

執筆者:葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師 ...プロフィールをもっと見る

古くから家庭犬として日本で親しまれているマルチーズは、現在でも多くの家庭に迎えられている人気の犬種です。

マルチーズと生活するにあたって、健康管理のためにはどのようなことに気をつければよいのでしょうか。

この記事では、マルチーズの特徴や起こりうるトラブル、健康管理に欠かせないドッグフードの選び方について解説します。

マルチーズとの生活で必要なことは?

マルチーズといえば、白いふわふわの被毛や小さくて愛らしい容姿が特徴的です。

初めてマルチーズと生活する飼い主さんは、どのような生活を送るのか、マルチーズのお世話には何が必要なのかをイメージしづらいかもしれません。

まずは、マルチーズと生活するうえで必要なお世話について確認していきましょう。

定期的なトリミング

マルチーズの被毛は伸び続けるのが特徴です。

マルチーズの白くてふわふわの被毛を維持するために、定期的なトリミングでカットしてあげましょう。

トリミングの目的は、愛らしい容姿を保つことだけではありません。

眼周りや口周りの被毛も同様に伸びるため、汚れやすい部分の涙やよだれやけ、汚れによる皮膚炎の予防にもつながります。

サロンでのトリミングだけではなく、家庭でのこまめなケアも大切です。家庭でケアがしやすいスタイルにカットしてもらうことをおすすめします。

1日15~30分の散歩

明るい性格のマルチーズですが、小型の家庭犬であるため、長時間の散歩は必要ありません。

生活環境への適応や気分転換、周りの犬との関係構築、飼い主さんとのコミュニケーションの方法として散歩を取り入れるとよいでしょう。

マルチーズのなかには関節トラブルになりやすい個体もいるため、体重や関節の状態によって適切な運動時間は異なります

体力があり、散歩が好きな子であれば、もう少し時間を伸ばしたり、散歩の頻度を増やしたりしてもよいかもしれません。

適切な運動時間がわかりづらい場合は、定期的な健康チェックの際にかかりつけの獣医師に相談してみてください。

散歩が好きな子は白い被毛に汚れが付着したり、毛玉ができたりすることもあるため、定期的なトリミングに加えて、家庭でもこまめなブラッシングやシャンプーが必要です。

1日2~3回のごはん

大型犬と異なり胃が小さく、一度に食べられる量が少ないマルチーズは1日2〜3回のごはんが必要です。

多くの成犬は1日2回のごはんで問題ありませんが、消化機能の不充分な若齢の仔犬や、消化機能の問題で空腹時間が長いと胃液を嘔吐してしまう子は、ごはんの回数を増やすことがあります。

また、マルチーズは関節トラブルや心疾患などが起こりやすい犬種です。とくに肥満の場合、体に大きな負担がかかり、関節トラブルや心疾患のリスクが高まるため注意しましょう。

予防のためには肥満にならないことが大切ですが、犬は運動でのダイエットが難しいため、徹底した食餌管理が必要です。

マルチーズで気をつけたいトラブル

マルチーズは小型の家庭犬です。ふわふわの白い被毛や小さな容姿が、トラブルにつながることもあります。

マルチーズに起こりうるトラブルについて紹介します。

涙やけ

涙やけとは、眼がしらなどの眼周りが涙によって着色するトラブルです。

被毛のカラーが白であるマルチーズは、涙やけが目立ちやすいため注意が必要です。

涙やけの原因はさまざまで、鼻涙管の狭窄や閉塞により涙液があふれてしまうことや、眼周りの皮膚の軽度の炎症・コンディションの悪化などが挙げられます。

関節トラブル

膝関節の膝蓋骨と呼ばれる骨の脱臼を起こす膝蓋骨脱臼や亜脱臼、股関節の大腿骨の骨頭が変性してしまうことによるレッグペルというトラブルなどにより、関節に痛みや違和感が生じるケースが多くあります。

関節トラブルを起こすと、歩き方に変化が見られたり、触ろうとすると怒るなどの行動変化が見られたりするのが特徴です。

心疾患

加齢とともに増えるのが心疾患です。どのような器官も加齢とともに機能が低下し、トラブルが起こりやすくなります。

マルチーズは、とくに僧帽弁と呼ばれる左心房と左心室を隔てる弁の機能が低下することで、心臓に負担がかかりやすい点に注意が必要です。悪化すると循環不全により肺に水がたまってしまう肺水腫が起こり、死に至る危険性もあります。

マルチーズのトラブル対策

では、起こりやすいトラブルを避け、健康的に生活するために、飼い主さんはどのような取り組みをするとよいのでしょうか。

すでに疾患がわかっている場合でも、再発を防止したり、進行を遅らせたりできる可能性があるため、事前に対処方法を確認しておきましょう。

健康な皮膚や被毛の維持

涙やけを防ぐために大切なのは、健康な皮膚や被毛の状態を維持することです。

すべてを家庭で行うと、飼い主さんの負担が大きくなってしまいます。家庭でのケアとトリミングサロンでのケアを併せて行うことで、より良い状態の皮膚や被毛を維持できるでしょう。

家庭でできるケアの範囲をトリマーに伝えることで、そのケアに適したスタイルを維持するために必要なトリミングの頻度や、行うべきカットスタイルを提案してもらえる可能性があります。

かわいさももちろん大切ですが、かわいさを追求するあまり毛玉がたくさんできてしまったり、汚れが付着してしまったりして、愛犬に負担をかけてしまいかねません。

家庭でしやすいケアのアドバイスも受けながら、トリマーと上手に連携をとって愛犬の健康を維持しましょう。

肥満防止

肥満にならないよう、食事の管理を徹底することも大切です。食欲旺盛な子にはついドッグフードを多く与えたり、おやつを過度に与えたりしがちですが、これらは肥満につながります。

愛犬の運動量や体格に合った適切な給餌量を守りましょう。ドッグフードのパッケージに表記された、体格や年齢に応じた給餌量を与えることが大切です。

そして、週1回から月1回程度のこまめな体重測定や、スキンシップ時に肉付きをチェックする習慣をつけましょう。

家庭で行うことが難しい場合は、トリミングの際にチェックするか、月に1回程度体重チェックのためにかかりつけの獣医師に受診することをおすすめします。

サプリメントの使用

健康的な体づくりのために、サプリメントを取り入れることも有効です。

コンドロイチンやグルコサミンなどの関節液や軟骨となる成分を摂取することで、より良いクッション材をつくるため、関節トラブルの予防につながります。

関節をより健康にするためのドッグフードに、これらの成分が含まれていることも多いでしょう。また、関節を守るための筋肉をつけやすくするサプリメントを使用するのもおすすめです。

定期的なチェックによる早期発見

トラブルを早期発見することで、症状の悪化を防ぎ、愛犬への負担を軽減できます。

スキンシップの一環として家庭でこまめにチェックする、かかりつけの動物病院を受診して定期的な健康診断を行うなどの習慣をつけましょう。

動物病院は病気になってから受診をする場所というイメージが強いかもしれませんが、健康なうちから体重管理や定期的なチェックのために受診することで、愛犬の状態や管理方法の見直しなども行えるためおすすめです。

トラブル対策につながるドッグフードの選び方

毎日摂取するドッグフードは、健康的な体づくりに大きく影響する要素です。トラブルを防ぐためには、マルチーズの体質に合ったドッグフードを選んであげる必要があります。

マルチーズのフードの選び方と、おすすめの商品を紹介します。

皮膚や被毛の健康維持に特化したドッグフード

とくに皮膚がデリケートな子の場合は、皮膚や被毛の健康に特化したドッグフードがおすすめです。

皮膚や被毛の健康維持につながる、おすすめの商品を2つ紹介します。

ドクターズダイエット 犬用 皮ふと毛づやの健康維持

ポイント:
成犬、皮膚ケア

「ドクターズダイエット 犬用 皮ふと毛づやの健康維持」は、獣医師のアドバイスのもと開発した、成犬の健やかな生活と皮ふと毛づやの健康維持を食事からサポートする動物病院専用ドッグフードです。皮ふと毛づやの健康維持に配慮して、オメガ3脂肪酸・米胚芽油・亜鉛アミノ酸複合体を配合しています。また、食物アレルギーに配慮して主たんぱく源としてチキンと米を使用しています。

弱酸性尿となるよう栄養学的にミネラル・アミノ酸のバランスを調整し、腸内細菌のバランス維持のためのフラクトオリゴ糖(可溶性食物繊維)を配合しており、1歳以上の成犬、皮ふと毛づやの健康を維持したい成犬におすすめです。

健康な皮膚と毛づやの良い健康な被毛の維持に良いとされるミネラルやアミノ酸、不飽和脂肪酸などを含んでいます。1歳以上の成犬であればどの年齢でも食べられるドッグフードのため試しやすいでしょう。

ロイヤルカナン マルチーズ-専用フード-成犬〜高齢犬用

ポイント:
成犬、シニア

マルチーズは、白く滑らかな被毛を持つ犬種です。その特徴的な被毛を維持するためには、日頃の食事に特別な配慮が必要です。

「ロイヤルカナン マルチーズ」は、マルチーズの白く滑らかな被毛の健康を維持するために、オメガ3系不飽和脂肪酸(EPA・DHA)やオメガ6系不飽和脂肪酸(大豆油)、ルリチシャ油やビオチンが独自のバランスで配合されたドッグフードです。超高消化性たんぱく質(L.I.P.)を使用することで、消化率を高め、健康的な消化を維持し、便の量と臭いを軽減します。

白い被毛を美しく維持できるような成分として、ミネラルやたんぱく質、不飽和脂肪酸の配合が工夫されたドッグフードです。マルチーズという小型犬種特有の被毛の問題や消化機能を考慮してつくられているため「どのようなものを与えたらよいかわからない」という場合は、まず選択してみてもよいでしょう。

そのほか、犬種の限定がなくても、皮膚や被毛により良い成分が含まれるドッグフードであれば、涙やけ予防にもつながる可能性があります。

関節トラブル予防に有効なドッグフード

小型犬特有のトラブルである膝蓋骨脱臼や、レッグペルテスなどの膝関節や股関節のトラブルを予防するために、関節に良い成分を含んだドッグフードを選択することもおすすめです。

サイエンス・ダイエット〈プロ〉 小型犬用 関節サポート機能 超小粒 7歳以上

ポイント:
シニア

「サイエンス・ダイエット〈プロ〉 小型犬用 関節サポート機能 超小粒 7歳以上」は、7歳以上の高齢犬向けのドッグフードです。科学的に裏付けされた抗酸化成分であるビタミンEとビタミンCを含み、愛犬本来の健康な免疫力の維持をサポートします。

主に推奨する犬種は、トイプードル、チワワ、ミニチュアダックスフンドなどです。配合されているグルコサミンやコンドロイチン硫酸が、高齢犬の関節と軟骨の健康維持をサポートします。健康の維持、活発な運動能力をサポートする栄養成分として、高品質な魚油由来のEPAが配合されています。

こちらは7歳以上の子限定のフードですが、コンドロイチンやグルコサミンなどの関節に良いとされる成分が含まれます。超小粒のサイズであるため、顎の小さなマルチーズでも食べやすいでしょう。

ZIWI ピーク エアドライフード ビーフ(犬用)

ポイント:
子犬、成犬、シニア、グレインフリー

「ZIWI ピーク エアドライフード ビーフ(犬用)」は、最高の栄養が詰まった、全犬種・全ライフステージの犬に適したドッグフードです。たんぱく源には、ニュージーランドの牧草地で年間を通して道徳的に配慮した方法で放し飼いで育った牛肉を使用することで、シンプルかつ良質なたんぱく質が採用されています。

くわえて、ニュージーランド産緑イ貝を3%配合し、長期にわたって関節の健康と動きをサポートする天然のグルコサミンとコンドロイチンを含んだフードに仕上げています。余計なものを入れず、穀物類や砂糖、グリセリン、抗生物質や成長ホルモンは使用されていません。

全犬種全年齢向けに作られたドッグフードです。天然のグルコサミンやコンドロイチンなどの関節に良い成分を含むとする緑イ貝を原材料に含んでいます。若いころから健康な関節づくりに気をつけたい飼い主さんに適したドッグフードです。

ただし、関節に良い成分が含まれるドッグフードであっても、体質的に合わないケースもあります。その場合は、体質に合うドッグフードを与えながら、サプリメントで関節に良い成分を摂取する方法に切り替えましょう。

肥満予防につながるドッグフード

関節への負担や心臓への負担を軽減するために欠かせないのが、体重管理による肥満の予防です。

肥満の予防を考慮するのであれば、以下のようなドッグフードがおすすめです。

ペットカインド トライプドライ ウェイトマネージメントSAPラム 小粒

ポイント:
ダイエット、去勢・避妊後、低脂質、成犬、シニア、グレインフリー

「ペットカインド トライプドライ ウェイトマネージメントSAPラム 小粒」は、ラム肉とラムトライプを主原料とする、低カロリーかつ低脂質なドッグフードです。トライプとは、牛や羊、鹿などの反芻動物が持つ消化物の詰まった4つの胃のこと。豆原料や鳥原料は一切使用せず、抜群の嗜好性を実現。カロリーや脂質を気にする肥満犬や避妊去勢犬、シニア犬のような愛犬におすすめです。

加齢や運動不足とともに、体重や筋肉の維持が困難となった愛犬にとって、良質なタンパク源となるトライプは、関節や骨格、筋肉維持のサポートに役立ちます。

全犬種1歳以上の子であれば食べることのドッグフードです。さまざまなたんぱく質の原材料を使用することで、良質な筋肉の維持も期待できるドッグフードです。

肥満を予防するために、体重を減少させると起こりやすいのが筋肉量の減少です。関節トラブルを起こさないためには、良質な筋肉をつける必要があります。

ココグルメ フィッシュ&パンプキン

ポイント:
ダイエット、低脂質、子犬、成犬、シニア

「ココグルメ フィッシュ&パンプキン」は、ダイエット中や体重管理が必要な犬におすすめのドッグフードです。主な原材料には、高たんぱく質・低脂質の国産すけとうだら、中性脂肪の減少効果があるとされるオメガ3系不飽和脂肪酸を豊富に含むまぐろ、βーカロテンをはじめとした豊富なビタミンや食物繊維を持つブロッコリーやかぼちゃを採用。

素材そのもののおいしさや栄養成分にこだわり、酸化防止剤や発色剤、保存料や着色料などが一切添加されていません。獣医師監修のもと総合栄養食基準で作られているため、安全安心なフードです。

こだわりによるえり好みの多い小型犬に向け、手作りご飯をイメージしてつくられたウェットタイプのドッグフードです。

総合栄養食に順ずる栄養素が含まれるため、メーカーのサイトで体格や年齢などを入力することで、適切な給餌量を調べることが可能です。低カロリーで、不飽和脂肪酸などの身体に良い成分も含まれています。

【まとめ】マルチーズに合うドッグフードを選んで健康を維持しよう

家族の愛らしい一員であるマルチーズとの生活がより長く続くことは、すべての飼い主さんにとっての願いではないでしょうか。

より健康で充実した生涯であれば、最期を看取るとき、楽しいことだけではなかったとしても、きっと幸せだった生活が思い出として残るはずです。

そのためにも愛犬の健康維持は欠かせません。とくに、毎日食べるドッグフードのチョイスは大切です。

自分では判断できない場合は、かかりつけの獣医師やトリマーなどの専門家に相談してみてください。最適なドッグフードを見つけて、健康で楽しいマルチーズとの生活を送りましょう。

ABOUT ME
葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。
獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。
開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。
皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、得意分野とさせていただいています。
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