執筆者:葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師 ...プロフィールをもっと見る
飼い主さんと話していると、「涙やけ」に関する話題がよくあがります。
涙やけとは、涙や目やにによって目頭付近の毛が変色してしまう状態です。
「なぜうちの子の涙やけはこんなにひどいのだろう」「どうすればいいかわからない」と、原因や対処法がわからず悩んでいる飼い主さんも多いのではないでしょうか。
最近では、涙やけ対策のサプリメントや洗浄用シャンプーなども多く販売されています。また、ドッグフードを変更することで、涙やけの症状が軽減する可能性もあります。
本記事では、涙やけの主な原因や発症しやすい子の特徴、予防するための対策について詳しく解説します。
犬の涙やけとは?
涙やけとは、涙の量の変化によって、目頭付近の被毛が赤茶色や赤っぽく変化することです。
どんな犬種でも涙やけを起こす可能性があり、とくに被毛のカラーが薄い子は目立つ傾向があります。
犬自身が皮膚に違和感を覚えるケースもありますが、基本的には痛みや違和感は生じません。
涙やけが起こる主な原因
涙やけを起こす要因としては、以下が考えられます。
- 涙の量
- 目頭付近の皮膚のコンディション
- 細菌繁殖の有無
皮膚の状態や体調によって、涙やけの程度は異なります。皮膚のコンディションが不安定だと、慢性的な涙やけに悩まされるケースも少なくありません。
また、涙管(るいかん)と呼ばれる涙の通り道が詰まりがちになることで涙があふれてしまい、涙やけにつながることもあります。
フードの影響を受けることもある
ドッグフードの切り替えが原因で涙やけを起こす場合もあります。
皮膚のコンディションが不安定な子の場合、体質に合わないドッグフードを食べることで、皮脂の分泌バランスや皮膚表面の免疫バリアの状態が乱れやすくなります。その結果、細菌が繁殖しやすくなり、炎症が起こる危険性があるのです。
普段と変わらない涙の量でも、細菌への免疫力の低下により着色が目立つケースもあるため注意が必要です。
涙やけを予防するためには、愛犬の皮膚の状態を把握し、適したドッグフードを与えることが大切です。
ドッグフードを与えたあとの体の変化も、しっかりと観察してあげると変化に気づけるでしょう。
涙やけはどんな子に多い?
どんな子でも起こりうる涙やけですが、発症しやすい犬種もいます。涙やけになりやすい子の特徴をみていきましょう。
白っぽい被毛の子
被毛が白っぽいカラーの子は着色が目立ちやすいため、涙やけによる変色が顕著にみられます。
着色汚れは最初は薄く、だんだんと色が濃くなっていくことが一般的です。
被毛のカラーが白に近いほど、初期の薄い着色から飼い主さんの目につきやすくなるでしょう。
そのため、こまめにお手入れをして涙やけ対策を早期にできているケースが多いものの、わずかな着色でも目立つ傾向があります。
トリミングが必要な犬種
トリミングが必要な、被毛が伸びるタイプの犬種も涙やけが多く見られます。
たとえば、トイプードルやマルチーズなどです。目周りの毛も同様に伸びるため、被毛が眼球や結膜を刺激して涙の分泌量を増やしたり、分泌された涙が目頭にとどまる導線をつくったりする場合があります。
皮膚トラブルが多い子や涙の量が多い子
目やにの量や細菌繁殖のしやすさは、目頭付近の皮膚コンディションが影響している場合もあります。
皮膚コンディションが不安定だと、免疫バリアがうまく働かずに、細菌繁殖が増加して涙の量が増えてしまうのです。
犬の目頭付近は皮膚で覆われているため判断が難しいのですが、皮膚コンディションがあまり良くない場合は、赤みを帯びた皮膚の色をしている傾向があります。
また、とくに小型犬は、生まれつき涙管が細かったり、炎症によって詰まっていたりすることが原因で涙があふれ出てしまい、涙やけにつながるケースもあります。
皮膚トラブルや涙管の炎症が原因であると、場合によっては医学的な処置や治療が必要です。
ケアを見直しても涙やけが続いたり、悪化したりするようであれば、早めにかかりつけの獣医師に相談しましょう。
涙やけを予防するための対策
医学的なケアが必要となる場合もありますが、家庭での対策が涙やけの予防につながるケースも多くあります。
まずは、家庭でできる対策を考えてみてください。
こまめなケア
先述したとおり、涙やけの原因の一つは、涙や目やになどを栄養源として細菌繁殖が増加することです。そのため、目周りの被毛や皮膚を不潔にしていると、涙やけが悪化するおそれがあります。
涙の量が多い子や、目やにが多い子は、とくにこまめなケアを心がけましょう。
きれいな水道水や洗浄用の溶液を使って、目頭の部分や近くの被毛をふき取ります。溶液は、必ず目の中に入っても問題のないものを選んでください。
また、被毛をふき取る際に嫌がって暴れる子もいます。
眼球を傷つけてしまう危険性があるため、あまりに嫌がるようであれば中断しましょう。
若齢の子は、小さいうちからスキンシップの一環として、目周りも触れるような信頼関係を築くのがおすすめです。
目周りのお手入れや観察がしやすくなるため、目周りに問題がなくても、少しずつ慣らしていけるよう習慣づけましょう。
トリミングによるカットスタイルの見直し
目周りの被毛が長めのスタイルで涙やけに悩んでいる方は、トリマーさんに相談し、目周りをすっきりとさせるスタイルへの見直しを検討してみてください。
目周りや顔周りの被毛をふわふわとさせることでかわいらしい印象にできるため、あこがれる飼い主さんは多いでしょう。
しかし、被毛が長いと涙を被毛が含み、その涙を餌にして細菌が繁殖するおそれがあるため、お手入れをより丁寧に行わなければなりません。
家庭で行えるお手入れの頻度や時間を考慮し、愛犬に適した目周りのカットを見つけてあげることで、涙やけが目立ちにくくなる可能性があります。
ドッグフードの見直し
一般的に良いとされるドッグフードであっても、愛犬に適しているとは限りません。
愛犬の特徴や体質を理解したうえで、適切なドッグフードを選択してあげることが大切です。
愛犬に適したフードの選び方がわからないときは、かかりつけの獣医師やブリーダーさんなどの専門家に相談してみましょう。
健康に良いというお話を聞いてドッグフードを変えたら、涙やけがひどくなってしまったという飼い主さんがいました。
皮膚炎は起こっていませんでしたが、皮膚のコンディションが以前より安定せず、湿疹やふけの量が増えてしまったそうです。
涙やけが悪化した時期をうかがったところ、フードの切り替えのタイミングでした。
良質なたんぱく質を使用しており、組成も問題のないドッグフードでしたが、おそらくその子には合わなかったのでしょう。
そこで、フードを元に戻すことを提案するとともに、皮膚ケアに特化した療法食をおすすめしたところ、涙やけの症状が改善されました。
涙やけ対策におすすめのドッグフード
涙やけの原因に原因に応じて、適したドッグフードに切り替えることで症状が改善する可能性があります。
ここでは、涙やけ対策におすすめのドッグフードを紹介します。愛犬の適切なケアとともに、フードの見直しも検討してみてください。
低アレルゲンのドッグフード
アレルギー体質の子は、ドッグフードの中に含まれるアレルゲンに反応して涙の量が増加したり、皮膚の炎症が起こったりすることで、涙やけにつながっている可能性が考えられます。
アレルギーかどうかを判断するためには、アレルギー検査を受けることがもっとも近道です。しかし、検査項目へ含まれていないアレルゲンへの反応が起こるケースもあります。
また、費用の問題などにより、アレルギー検査を躊躇される飼い主さんもいるでしょう。
検査を行わないのであれば、低アレルゲンの原材料を用いたドッグフードを選択してあげることで、症状が改善する可能性があります。
たとえば、こちらのフードはアレルゲンになりにくい鹿肉や玄米を使用しています。
まれに、玄米にもアレルギー反応を示す子はいますが、まずは多くの子がアレルギー反応を示しにくい原材料のフードを与えて、反応を見ることも一つの方法です。
皮膚に良い成分を含むドッグフード
皮膚のコンディションが不安定な子は、皮膚の健康維持をサポートしてくれる成分が含まれたドッグフードを与えることで、細菌の繁殖を防ぎ、より安定させてあげる効果が期待できます。
こちらのフードには、健康な皮膚の構造を維持するために必要な栄養素や、皮膚のバリア機能を整える成分が含まれています。
魚類のたんぱく質が主原料のドッグフード
サーモンのような魚類のたんぱく質が原料となるドッグフードは、涙やけ対策に効果があるといわれています。
魚類に多く含まれるオメガ3脂肪酸などの不飽和脂肪酸は、炎症を起こしにくくする成分です。
皮膚がデリケートで皮膚炎を起こしやすい体質の子には、不飽和脂肪酸が有意義に働いてくれるでしょう。
また、オメガ3脂肪酸は、毛や皮膚の状態を健康に保つためにも大切な栄養素です。
こちらのフードは、新鮮なイワシやサバ、へイク、カレイなどの魚類を豊富に使用し、高たんぱくかつ高品質な原材料で作られています。魚に含まれる不飽和脂肪酸の摂取も可能です。
【まとめ】犬の涙やけは早めの対処・予防が大切
涙やけは、涙や目やにの量が増え、目頭付近の被毛が変色する状態です。愛犬自身が痛みやかゆみを感じることはほとんどありませんが、放置していると目周りの皮膚の状態が悪化したり、炎症につながったりする危険性があります。
適切なケアで目の周りを清潔に保ち、できるだけ涙の量を健康な状態で維持しましょう。日常的なケアを続けながら、定期的に診察を受けることで、医学的な処置が必要になったときも速やかに対処でき、愛犬の負担を軽減できます。
まずは、毎日の食事が愛犬に適切なものであるか、ドッグフードの見直しから始めてみてはいかがでしょうか。
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