執筆者:今井 貴昌
日本獣医生命科学大学卒。地方の動物病院と都内のグループ動物病院で数年 ...プロフィールをもっと見る
キャベツは愛知県、群馬県、千葉県で全国の出荷量の約5割を占め、私たちの普段の食卓によく並ぶ食材です。
調理中にうっかり落としてしまい、それを愛犬がパクっとしたり、食卓を囲んでいると愛犬が近寄っておねだりしたりすることは多いと思います。
結論から言うと、キャベツは犬に与えてもよい食べ物です。
ただし、正しい方法で与えないと、愛犬の体調を崩す原因になってしまうおそれがあります。
この記事では、キャベツの栄養素や効果・犬にキャベツを与える際の注意点について解説していきます。
キャベツの持つ栄養素とカロリー
一般的に市販されているキャベツのカロリーは、100gあたりおよそ23kcalと非常に低カロリーの野菜です。
また食物物繊維はさることながら、ミネラルやビタミンも豊富に含む食材です。
キャベツに含有されているミネラルには、カリウム・カルシウムなどが挙げられます。
また、ビタミンはなんといってもビタミンU(キャベジン)が豊富です。そのほか、ビタミンCやビタミンK・ビタミンB9(葉酸)も多く含まれています。
各栄養素の含有量と期待される効果
キャベツ100g中に含まれる主な栄養素の含有量は以下の通りです。
食物繊維 | 約1.8g |
カリウム | 約200g |
カルシウム | 約44mg |
ビタミンU | 約0.35mg |
ビタミンC | 約42mg |
ビタミンK | 約80μg |
ビタミンB9(葉酸) | 約80μg |
※参照: カロリーSlism│キャベツ
ここからは、各種栄養素に期待できる効果について詳しく見ていきましょう。
食物繊維
炭水化物は、糖質と食物繊維で構成されています。
さらに食物繊維は、可溶性食物繊維(水に溶ける)と不溶性食物繊維(水に溶けない)に分けられます。
キャベツに含まれる食物繊維は、不溶性食物繊維です。
体内で溶けないため、水分を含みながら大腸へと移動します。
その結果、糞便量が増えるとともに便が出やすくなるのです。
また、不溶性食物繊維は、いわゆるプレバイオティクスの役割を果たします。
プレバイオティクスとは、大腸内の特定の細菌の増殖および活性を選択的に変化させることより、宿主に有利な影響を与え、宿主の健康を改善する難消化性食品成分です。
プレバイオティクスの機能性については、整腸作用(便通改善)、抗脂血作用、インスリン抵抗性の改善、ミネラル吸収促進作用、尿中窒素低減作用、大腸がん・炎症性腸疾患の予防・改善、アレルギー抑制作用、腸管免疫の増強などが報告されています。
カリウム
カリウムは生体に必要なミネラル成分の一つです。
生体の恒常性を保つうえで非常に重要な栄養素であり、神経伝達や心筋の刺激伝導系、筋肉の収縮、その他血液pHを維持する作用があります。
生体内ではそのほとんどが細胞内に貯蓄されており、血液中のカリウム濃度は比較的厳密に維持されています。
しかし、食欲不振などにより体内のカリウムが不足(低カリウム血症)してしまうと、疲れやすくなったり、不整脈が生じたりします。
逆にカリウムが過剰(高カリウム血症)となると、最悪の場合、不整脈で命を落としてしまいます。
低カリウム血症は重篤化することはあまりありませんが、高カリウム血症は積極的な治療が必要な病態です。
ただし、一般的に食べすぎによる高カリウム血症は生じないため、安心してください。
カルシウム
カルシウムは生体内でもっとも多いミネラルと言われています。
骨や歯に貯蔵されているのはもちろんのこと、血中や細胞内にも存在し、生命活動に欠かせないミネラルの一つです。
血中のカルシウム濃度は厳密に維持されています。
一般的に、獣医療にてカルシウムが問題となる場合、もっとも命の危険があるのは血中のカルシウムが不足(低カルシウム血症)してしまう状態です。
低カルシウム血症の原因は多岐にわたりますが、血中カルシウム濃度が一定値を下回ると、食欲不振や虚脱・痙攣・意識消失などの症状が現れます。
逆に血中カルシウム濃度が上昇(高カルシウム血症)すると、腫瘍性疾患や上皮小体機能亢進症・アジソン病などが認められます。
悪性腫瘍による高カルシウム血症は、犬ではもっとも多いとされているため、精査をするとともに注意が必要です。
とはいえ健康な子であれば、キャベツの取りすぎによる高カルシウム血症は生じないため、ほとんど心配はいりません。
ビタミンU(キャベジン)
キャベジンは皆さんもよくご存知かと思います。
胃粘膜の修復作用が主な効果です。
ビタミンUは水に溶けやすい物質であるため、加熱調理時間には注意しましょう。
ただし、興和株式会社の商品であるキャベジンコーワαには150mgものキャベジンが含まれている(キャベツ約36個分)ことを考えると、キャベツの摂取のみでの効果はあまり期待できません。
犬に与える際には、あくまで嗜好品であると考えましょう。
ビタミンC
ビタミンCはアスコルビン酸としても知られる水様性ビタミンの一つです。
抗酸化作用を有しており、体内で産生されたフリーラジカルから細胞を守ってくれます。
摂取過多では嘔吐や下痢が、体内で枯渇すると壊血病という出血性疾患となりますが、いずれもかなりまれであるため、犬の場合は基本的には心配ありません。
ビタミンK
ビタミンKの主な作用は、血液凝固と骨形成です。
血液は、複雑な反応の繰り返しにより必要に応じて凝固します。
その過程に様々な因子が関与しますが、その因子を生成するためにビタミンKが必要となります。
また、ビタミンKは骨に存在するオステオカルシンというたんぱく質を活性化させ、骨沈着を増加させます。
したがって、ビタミンK不足では出血傾向が認められるようになりますが、一般的にその原因は末期の肝臓病(凝固因子の一部は肝臓にてビタミンKを材料に作られるため)であることが多いです。
一方で、ビタミンK過多による毒性は報告されていません。
ビタミンB9(葉酸)
葉酸は多くの女性に馴染みのあるビタミンです。
とくに妊娠期には、非常に重要な栄養素であると言われています。
犬においても、母体の葉酸不足による口蓋裂(上顎の正中歯肉が割れてしまう先天奇形)の発生が報告されています。
摂取過多による中毒は報告されていないため安心してください。
犬種と体重
与えてもよいキャベツの量は、愛犬の目安体重を把握したうえで計算する必要があります。
ここでは、とくに日本で人気の犬種の体重についてみていきましょう。
ジャパンケネルクラブでは、さまざまな犬種における厳密な規定がされてあります。
犬種の説明は当協会より引用させていただきました。
また、大まかな犬種と体重の指標となるデータは、アメリカンケネルクラブのサイトから引用しています。
以下では、1pound≒0.45kgとして計算しました。
プードル
プードルはフランス原産の犬種で、体高(起立位にて足先から背中まで)により小さい順に、トイ、ミニチュア、ミディアム、スタンダードと分かれています。
目安体重は以下の通りです。
種別 | 目安体重(kg) |
トイプードル | 1.8~2.7 |
ミニチュアプードル | 4.5~6.75 |
ミディアムプードル | 記載なし |
スタンダードプードル | 27~31.5 |
チワワ
チワワは第2位の人気犬種です。
性格は、注意深く勇敢であるとされていますが、怖がりな子が多い印象です。
チワワは世界最小の犬種であり、目安体重は1〜3kgです。
MIX犬
近年、上位2種を追い抜くほどの勢いでMIX犬が増えてきました。
特に、トイプードルやミニチュアダックスフント、チワワなどの小型犬同士の掛け合わせによる犬種が印象的です。
現在飼育頭数が伸びているMIX犬は、体重が10kg未満です。
MIX犬の体重指標はないため、BCS(body condition score)をもとに体重管理をしましょう。
柴犬
第4位は、和犬である柴犬がランクインしています。
現在のところいわゆる豆柴は、ジャパンケネルクラブでは公認されていないため、ここでは公認されている柴犬(体高38~41cm)で体重を記載いたします。上記の体高に当てはまらない場合には、BCSを参考に体重を管理しましょう。
柴犬の目安体重は、10.35kgです。
ミニチュアダックスフント
第5位にランクインしたのはミニチュアダックスフントです。
ダックスフントは胸囲のサイズにより小さい順に、カニーンヘン、ミニチュア、スタンダードに分かれています。
さらに、被毛がスムースヘアード、ワイヤーヘアード、ロングヘアードに分かれるため、サイズも考慮すると9種類のバラエティに富む犬種です。
目安体重は以下の通りです。
種別 | 目安体重(kg) |
カニーンヘンダックスフント | 記載なし |
ミニチュアダックスフント | 4.95以下 |
スタンダードダックスフント | 7.2~14.4 |
犬に与えてよいキャベツの量の目安
キャベツは栄養価が高い食べ物ですが、実際に愛犬に与えてもよいキャベツの量はどの程度なのでしょうか。
キャベツを嗜好品として与える際には、一日の適正摂取カロリーの10%未満にすべきであると言われています。
摂取カロリー(RER・DER)についてはこちらの記事を参照ください。
愛犬のフードをうまく切り替える方法と、切り替えるべきタイミング
前述した各犬種の目安体重から概算した10%にあたるキャベツの量を以下の表にまとめました。
犬種 | 目安体重(kg) | RER(kcal) | 10%RER(kcal) | 推奨量 |
トイプードル | 1.8~2.7 | 109~147 | 10.9~14.7 | >50g (葉2枚未満) |
チワワ | 1~3 | 70~160 | 7~16 | >50g (葉2枚未満) |
MIX犬 | >10 | >393 | >39.3 | >200g (1/6個未満) |
柴犬 | 10.35 | 404 | 40.4 | >200g (1/6個未満) |
ミニチュア ダックスフント | >4.95 | >232 | >23.2 | >100g (葉4枚未満) |
※参照: カロリーSlism│キャベツ
犬にキャベツを与える際の注意点
キャベツを初めて与える際には、愛犬の様子をよく観察しましょう。与えてから数日以内に下痢や嘔吐を引き起こした場合には、量の調節が必要です。
また、芯は与えないよう注意してください。
大きな芯は消化管閉塞を引き起こし、最悪の場合、死に至ります。
葉を与える際にも細かく切ってあげましょう。
そのほか、キャベツにはシュウ酸が多く含まれているため、与えすぎによるシュウ酸カルシウム尿石症の発症に注意が必要です。
とくに、尿路結石の治療中の子には与えないようにしましょう。
まとめ
キャベツはおやつ程度の量であれば、犬にとってもおいしく、食物繊維の作用が期待できる食べ物です。
ただし、与えすぎや芯の誤食には注意しましょう。
普段のご褒美や、少し分け与える程度であれば問題はありません。
また、紫キャベツや白菜も一般的なキャベツと同様に考えていただいて結構です。
いかがでしたでしょうか。
この記事を通してみなさんが幸せな愛犬ライフを送れることを切に祈っております。
参考:
厚生労働省eJIM(「統合医療」情報発信サイト)
公益財団法人 腸内細菌学会
「愛犬に合うドッグフードがわからない・選べない」と思いませんか?
愛犬の情報を入力するだけで、合う可能性のあるフードを診断します。