執筆者:原 京子
動物看護士、ペットショップでの生態管理、動物園飼育スタッフなどを経験 ...プロフィールをもっと見る
犬をお迎えした初日から、しつけをはじめます。
子犬期はしつけに適しているため、とくに重要なしつけはこの時期に行うことで、効率的に覚えさせることができます。
この記事では、犬をお迎えしたら優先して覚えさせたいしつけの種類や方法・注意点をまとめました。
犬にしつけが必要な理由
犬が人間社会で生きていくためには、さまざまなルールを守らなければなりません。
犬のしつけは「愛犬のため」「飼い主のため」「第三者のため」に必要不可欠です。
ここでは、なぜ犬にしつけが必要なのかを紹介します。
愛犬のため
- 人を噛みつく
- 人に飛び掛かる
- 人に吠える、唸る
犬が本気で噛みつくと、最悪命に関わる怪我を負わせてしまいます。
万が一人に噛みついて怪我をさせてしまうと、殺処分の対象となるおそれがあります。
大切な愛犬を殺処分にさせないためにも、しつけは必要不可欠です。
飼い主のため
- 家の中を荒らされる
- 散歩時に引っ張られる
- 言うことを聞かない
- 自由に排泄をする
せっかく愛犬をお迎えしても、言うことを聞かずに好き放題暴れられては、困ってしまうでしょう。
しつけには、やっても良いことと悪いことの判別を付ける意味合いもあります。
第三者のため
- 外には第三者や他の生き物もいる
- 犬が苦手な人もいる
- 車や自転車など危険物がある
- 第三者に吠えたり飛びついたりしてはいけない
散歩に出かけた際、第三者の存在や他の動物・自動車などの存在を認識させ、それに対してどう対応すればよいのかを学習させなければなりません。
また、自動車や自転車にぶつかってしまうと、愛犬はもちろんですが相手にも迷惑がかかってしまいます。
飼い主の言うことを聞くことや、アイコンタクト・まて・つけなどのしつけは、犬を危険から守ることに繋がります。
しつけは「社会化期」に行うのがベスト
犬には、人間社会に柔軟に対応できる時期があります。これを「社会化期」と呼び、およそ生後3~13週週齢にあたるとされています。
この期間が、しつけを行うのにもっとも適しています。
この時期を過ぎると、徐々に自我が芽生え、警戒心が強く出始めます。
社会化期にしつけを行わなかった場合、しつけを覚えさせにくくなるほか、初めて見るもの(第三者や物・音など)に対して怯える、不安や恐怖から無駄吠えや噛みつき癖が増える、などの問題行動を引き起こしやすくなります。
社会化期で犬が覚えるべき項目は、以下の通りです。
- 人に慣れさせる
- ものに慣れさせる
- 環境に慣れさせる
来客などの第三者や、掃除機・洗濯機・ドライヤーなどの生活環境、雷や雨、リードや首輪などの物や音に慣れさせましょう。
また、体を触らせる・歯磨きをするなど、習慣化したいことも覚えさせます。
犬のしつけとは、おすわりやまてといったコマンド操作だけでなく、人間社会に慣れさせるといった意味合いもあります。
お迎えから数日間は何もしない方がよい?
犬をお迎えしてはじめに行うトレーニングこそが「環境に慣れてもらうこと」です。
知らない環境は子犬にとって、不安とストレスを抱えやすくなります。
睡眠不足や食欲不振、下痢や夜泣きなど体調を崩してしまうこともあります。
弱っているなか構いすぎてしまうと、子犬は余計に体調を崩してしまいがちです。
無理に構うのではなく、寄ってきたときに撫でてあげる程度にとどめましょう。
しかし、トイレトイレーニングだけはお迎えしたその日から始めることが大切です。
初期のトイレトイレーニングは、ほぼ褒めるだけで完結するため、環境に慣れていなくても無理なく行うことが可能です。
最低限覚えさせたいしつけの種類と方法
愛犬をお迎えしたら、どのようなしつけを優先して行うべきなのでしょう。
ここでは、最低限覚えさせたいしつけの種類と方法を紹介します。
トイレトレーニング
トイレトレーニングは、排泄をペットシーツ上でするように覚えさせるもので、お迎え初日からトレーニングを開始します。
トイレトレーニングは、サークル内で行うのが基本です。
トイレトレーニングの方法
- サークル内全体にペットシーツを敷く
- シーツの上で排泄をしたら直ぐに褒める
- 排泄をしない場所のシーツを排除していく
- 最終的にペットシーツ1枚でも失敗しないようにする
- トイレを置きたい場所に、少しずつシーツを移動していく
- 指定した場所で毎回トイレができるようになったら完成
トイレトレーニングは、覚えるまでに1週間~1カ月ほどかかります。
トレーニング期間中は、トイレをしやすい時間帯やタイミングを把握して、排泄後直ぐに褒めることが大切です。
アイコンタクト
アイコンタクトとは、愛犬が飼い主の目を見て、こちらに意識を集中させている状態です。
アイコンタクトを覚えさせることは、愛犬との心の距離を近づけ、しつけをしやすくするために役立ちます。
アイコンタクトの覚えさせ方
- 近くにいるときに名前を呼ぶ
- 目があったら褒めてご褒美をあげる(名前は連呼しない)
- おやつなどに気をとられている状態で名前を呼ぶ
- 反応して目が合ったら褒める
- 背後からや散歩中、遊んでいるときなどあらゆる状況で名前を呼び、行動を中断して目を見て集中したら褒める
アイコンタクトを覚えると、散歩中に車や第三者が来た際、こちらの出したコマンドを聞きやすくなる、問題行動を中止できる、愛情を伝えられるなど、あらゆるシーンで役に立ちます。
体を触ることに慣れさせる
体を触られることに慣れておくと、シャンプーやブラッシング・歯磨き・体調チェックや動物病院での診察の際に役立ちます。
体に触れることの慣れさせ方
- 愛犬が自ら寄ってきたら手を少し離れた場所に差し出し、手のにおいを嗅がせる
- ゆっくりと愛犬の様子を見ながら、顎の下や首周りからそっと撫でてみる
- 慣れたら嫌がりやすい足先、口回り、お腹、耳、尻尾、お尻周りも撫でてみる
- 徐々に撫でる時間を増やしていく
- いつ、どこを撫でても抵抗しなくなれば成功
愛犬を撫でる際、力が強かったり無理に撫でたりすると、手に嫌なイメージをもってしまうことがあります。その結果、手を出した際に噛みついてしまう恐れがあるため注意が必要です。
また、こちらが怖がったり緊張したりしていると、その気持ちは愛犬にも伝わってしまいます。
愛犬に触る時は、優しく声をかけながらリラックスした状態で行いましょう。
「まて」や「よし」を覚えさせる
「まて」は愛犬の行動を停止させ、「よし」は各コマンドを終了させる合図です。
横断歩道や第三者とすれ違う時などに犬を危険から守る、遊びに夢中で興奮しすぎた際などにクールダウンさせ落ち着かせるといった、日常生活のさまざまな場面で、「まて」は役立ちます。
「まて」と「よし」は、セットで覚えさせると効率的です。
まての覚えさせかた
- 「すわれ」の状態で正面にしゃがみ、犬の目線の少し上に手を挙げ「まて」と言う(この時おやつを手にもって行っても可)
- おしりが浮く前(1秒ほど)に「よし」と言い、褒める(ご褒美を上げる)
- 徐々に「まて」の時間を長くしてみる(数秒単位で長くする)
- おしりが浮きそうになったら手を高くして目線を上げさせる
- 繰り返し行い、失敗が続いたら叱らず時間を短くしてやり直す
- 散歩時にも使えるよう、飼い主が立った状態、歩いている最中、リードにつないでいる状態など、あらゆる場面で「まて」ができるようにする。
おやつを使う場合は、最終的にはおやつがなくても「まて」ができるようにします。
また、「まて」や「よし」に使うコマンドは、家族全員で統一することが大切です。
コマンドが「まて」や「ステイ」などばらばらだと、犬は混乱して覚えにくくなります。
しつけの注意点
しつけには、いくつか注意点もあります。
間違った方法でしつけてしまうと、「なかなか覚えてくれない」「おやつがないと言うことをきかない」などのトラブルに繋がります。
ここでは、失敗させないためのしつけの注意点を紹介します。
叱らない
どのしつけに関しても、絶対に叱ってはいけません。
犬は基本的に、過去のことを反省することができません。
そのため叱っても、今叱られていることに対して嫌なイメージを抱いてしまいます。
たとえば、トイレトレーニングでは、粗相をしたことを叱っても、愛犬は排泄をしたことに対して悪いことだと認識してしまいます。
その結果、犬は排泄を我慢するようになり、膀胱炎など泌尿器疾患にかかりやすくなります。
また、叱る際に名前を呼んでしまうと、犬は名前を呼ばれることを嫌がるようになってしまいます。
叱る必要のある時は、「だめ」「ノー」などのコマンドのみで行いましょう。
犬のしつけは、叱るのではなく褒めることで、スムーズに覚えさせることができます。
トレーニングは短時間で行う
犬が集中できる時間は、5~10分程度といわれています。
そのため、いくら長時間トレーニングをしても、嫌な思いをさせるだけになってしまいます。
犬のしつけは短時間ずつ行うことや、しつけのあとは遊ぶなどのメリハリが大切です。
コマンドは統一する
「まて」「よし」「だめ」「おすわり」「ふせ」など、コマンドを使用したしつけをする際には、各コマンドを統一することが大切です。
たとえば、同じ「だめ」であっても、「ノー」「いけない」などさまざまな言い方があります。
飼い主の気分や家族によってコマンドが変わってしまうと、犬は何を言われているのか理解ができず混乱してしまいます。
しつけをする際は、家族全員で情報を共有しながら行うことが大切です。
おやつをあげすぎない
しつけの際に、ご褒美としておやつを使う方も多いのではないでしょうか。
おやつを使うと、しつけの成功率を高めることができます。
しかし、いつまでもおやつを使っていると、以下のようなデメリットが発生します。
- 肥満になる
- おやつがないと言うことをきかない
おやつの与えすぎは肥満に繋がるほか、愛犬と飼い主さんとの間に、おやつという壁ができてしまいます。
これでは、本当の意味で信頼関係を築くことができません。
また、万が一おやつを持参していなかった場合、言うことを聞かずトラブルに繋がる可能性があります。
おやつは最低限に留め、褒めることを優先的に行いましょう。
しつけは毎日やらないと忘れてしまう?
犬は、余程のことがない限り、一度覚えたしつけは忘れません。
万が一忘れてしまった場合は、以下の原因が考えられます。
- まだ覚えきっていなかった
- 場所やコマンドを変えた
- しつけに嫌な印象がある
そのしつけが「たまたまできただけだった」「完璧に覚えきれていなかった」というケースが、忘れてしまった原因として考えられます。
一度や二度できただけでは、覚えたとは言い切れません。
日常的にできるようになって、はじめて覚えたといえるでしょう。
また、しつけに必要なコマンドを変えたり、叱ったりして、そのことに対して嫌な印象を抱くことも、しつけができなくなる原因の一つです。
しつけの完成は、飼い主さんの考えだけで判断するのではなく、客観的にみることが大切です。
また、しつけは習慣化するものであり終わりはないため、日常的に繰り返し行いましょう。
まとめ
- 犬のしつけは、愛犬、飼い主、第三者のために必要
- しつけは社会化期に行うのがベスト
- トイレ、アイコンタクト、体を触らせる、まて・よしのしつけは最低限必要
- しつけのコツは叱らない、コマンドの統一、おやつを与えすぎないことが大事
しつけは、愛犬が人間社会で安全でストレスなく生活するために欠かせません。
また、しつけはトイレトレーニングやおすわりなどのコマンド操作だけではなく、社会性を身につけさせるために多くのことを愛犬に学ばせる必要があります。
飼い主さんは、愛犬・自身・第三者のために、責任を持ってしつけを行いましょう。
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