執筆者:原 京子
動物看護士、ペットショップでの生態管理、動物園飼育スタッフなどを経験 ...プロフィールをもっと見る
最近では、愛犬に「自然なおやつを与えたい」と考える方が増えています。なかでも注目されている野菜が「にんじん」です。
にんじんは栄養価が高く甘味もあるため、犬が好む野菜のひとつです。
愛犬ににんじんを与える際には、一日に摂取してよい量や、与え方のポイント・注意点を押さえておきましょう。
この記事では、にんじんの健康効果や、一日に与える目安量・注意点などを詳しくまとめました。
おやつやトッピングに人気の「にんじん」
通常の総合栄養食を食べていれば、にんじんは与えなくても問題はありません。しかし、栄養豊富なにんじんをトッピングしたり、おやつ代わりに与えたりすることで、より高い健康効果が期待できます。
犬に期待できる健康効果
犬がにんじんを食べることで得られる健康効果は、以下の通りです。
・免疫力アップ
・健康で美しい被毛や皮膚を保つ
・歯、粘膜、視力を丈夫に保つ
・不要な塩分の排出
・高血圧予防
・腸内環境改善、便秘解消
このように、にんじんを食べることで、多くの効果が期待できます。ただし、健康によいからといって与えすぎるのはおすすめできません。
犬に食べさせる場合は、適量を正しい調理方法で与えるようにしてください。
にんじんに含まれる栄養素
にんじんに含まれる主な栄養成分は、以下の通りです。
<西洋にんじん(100g)>
・エネルギー:39kcal
・水分:89.1g
・たんぱく質:0.7g
・炭水化物:9.3g
・食物繊維:2.8g
・βカロテン:8600μg
・カリウム:300mg
※参照:文部科学省│食品成分データベース
にんじんの栄養素で、もっとも注目したいのは、カリウムとβカロテンです。
カリウムとβカロテンには、以下のような健康効果が期待できます。
カリウム
カリウムは、体内の余分なナトリウムを取り除く働きがあります。不要な塩分を尿と一緒に排出して、血圧を下げます。
塩分の摂りすぎ防止や、高血圧予防・改善、むくみ予防などに効果的です。
にんじんのほかにカリウムを多く含む食品としては、パセリやアボカド・ほうれん草・味噌などが挙げられます。
ただし、カリウムの過剰摂取には注意しなければなりません。カリウムの摂取量が、体外へ排出できる量を上回ってしまうと、「高カリウム血症」を引き起こすおそれがあります。
高カリウム血症とは、血中のカリウムの濃度が異常に上がることで、体のしびれや筋力低下・不整脈などが生じる病気です。重症化すると心臓の機能が乱れ、死に至る危険性もあります。
とくに腎臓病を患っている子や、腎臓の機能が弱まっている高齢犬は、カリウムの摂取量に気をつけましょう。一日に与えてよい量を、獣医師に確認しておくと安心です。
βカロテン
βカロテンは、強い抗酸化作用を持っています。活性酸素の働きを抑え、取り除く働きがあるため、免疫力向上の効果が期待できます。
また、βカロテンは体内でビタミンAに変換されるため、皮膚や粘膜の健康を維持します。
かぼちゃほうれん草などもβカロテン含む野菜ですが、にんじんにはとくに多く含まれています。
βカロテンも摂り過ぎると、肝臓に負担がかかり、副作用や中毒を引き起こすおそれがあるため、適量にとどめることが重要です。
にんじんを与える適量
1日に与える量は、犬の体重によって異なります。
にんじんはあくまでも副食として与え、総合栄養食をしっかり食べきれる量に留めてください。また前述した通り、犬の健康状態によっては、カリウムやβカロテンの過剰摂取につながり、健康を害するおそれがあります。高齢の犬や腎臓病を患っている場合は、にんじんを与える前に動物病院へ相談しましょう。
犬の体重(㎏) | 1日の摂取目安(g) |
小型犬(2~5㎏) | 54~107g |
中型犬(6~15㎏) | 123~244g |
大型犬(20~50㎏) | 303~602g |
※数値はあくまでも目安です。
にんじんを与える際の注意点
にんじんは犬にとっても栄養豊富な野菜ですが、与えるにあたっていくつか注意点も存在します。
・加熱してから与える
・細かく刻んで与える
・アレルギーに注意する
・人間用に加工されたものは与えない
加熱してから与える
にんじんは食物繊維が豊富なため、生で与えるとうまく消化がされない場合があります。
加熱することで食べやすくなるとともに、食物繊維が分解され、消化しやすくなります。
なお、にんじんに含まれる栄養素は、加熱しても壊れにくい点が特徴です。
細かく刻んで与える
加熱したにんじんは、細かく刻んだり、すりおろしたりしてから与えましょう。
消化を良くする効果はもちろんですが、丸呑みをして喉に詰まらせる事故を未然に防ぐことにつながります。
犬は食べ物を咀嚼せず、丸呑みする習性があるため注意が必要です。
アレルギーに注意する
にんじんに含まれるたんぱく質に免疫機能が過剰に反応し、アレルギーを起こす場合があります。
はじめて食べさせる際には少量を与え、下痢や嘔吐などのアレルギー反応が出ないか様子を見るようにしましょう。
人間用に加工されたものは与えない
犬ににんじんを食べさせる際は、味付けをしないで与えてください。
味付けをしなくても、にんじんには自然の甘味があるため、嗜好性が高い野菜です。
加工品を与えるときは、100%にんじんのみを使用した商品であれば問題ありませんが、塩分や糖分などが添加されていないか、与える前に成分表を必ず確かめてください。人間用に加工された商品は避け、犬用のおやつを選びましょう。
なお、にんじんジュースは、原材料がにんじんのみの無添加のものであれば、与えても大丈夫です。ただし、飲み過ぎるとお腹を壊しやすくなるため、水で薄めてから与えるか、舐めさせる程度にとどめましょう。
与えてよい部位は?
にんじんは果肉だけではなく、皮や葉っぱも与えて問題ありません。
皮や葉っぱにも、カリウムやβカロテン・食物繊維などの豊富な栄養素が含まれています。
果肉と同様、加熱してからすりおろす・刻むなどして与えましょう。また、農薬や汚れなどが残っている可能性があるため、しっかりと洗ってから調理することもポイントです。
まとめ
・犬はにんじんを食べても大丈夫
・にんじんにはカリウムやβカロテンをはじめ栄養豊富な野菜
・免疫力アップや毛並み皮膚の健康維持などが期待できる
・にんじんは副食として与える
・加熱することや細かく刻んで食べさせる
・アレルギー反応がないか注意する
・にんじんは果肉・皮・葉っぱすべて食べられる
にんじんは多くの健康効果が期待できるほか、甘味もあり嗜好性の高い野菜です。
しかし、基本的に犬は総合栄養食で栄養バランスの整った食事を摂ることができます。
にんじんを食べさせる際は、過剰摂取に十分注意して、ご褒美やおやつとして与えるようにしてください。
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