病気・ケア

わんちゃんに乳製品を与えてもよい?メリットや注意点を解説

執筆者:葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師 ...プロフィールをもっと見る

映画のワンシーンで、お皿に入ったミルクをわんちゃんが飲んでいたり、チーズをかじっていたりするのを見かけることがあります。

しかし、「与えたら下痢をしてしまうのでは?」「アレルギーは大丈夫?」など、乳製品を与えることに不安を抱く飼い主さんも多いのではないでしょうか。

栄養価が高い乳製品は、人にとってはぜひ摂取したい食品ですが、わんちゃんに与える際には気をつけなければいけないポイントがあります。

今回は、わんちゃんに乳製品を与えるメリットや注意点などについてお話していきます。

乳製品は食べても大丈夫?

愛するわんちゃんと同じものを食べたいという飼い主さんもいると思います。
結論から言うと、乳製品はものによっては与えても問題ない可能性が高いです。

しかし、アレルギー体質のわんちゃんが食べると、体調の変化が出てしまう場合もあるため、どんな子にも問題なく与えてよいわけではありません。
気をつけるべき点を押さえておきましょう。

注意をしながら食べるべき

前述のように、乳製品を摂取すると体調に変化が出るわんちゃんもいるため、アレルギー反応が出ないか、十分に注意をしながら与えなければなりません。

アレルギー疾患の項目として牛乳そのものが調べられることは少ないですが、牛肉や鶏肉など他の食品にアレルギー反応を示すことが多い子は、牛乳にもアレルギー反応を示す可能性が高いです。

また、後述しますが、乳糖不耐性という特徴や消化機能の問題で脂質に反応して下痢を起こす子もいます。
少量から始める、与えた後の体調変化を観察するなど、注意をしながら与えるようにしましょう。

与えるべきではないものも

わんちゃんの中には乳製品の風味を好む子もいます。
飼い主さんからのお話を聞いていると、特にチーズが好きな子が多い印象を受けます。

ただし、人間が食べる加工品には味付けがしてあるため、糖分や塩分が多く含まれ、カロリーも高めです。
そのため、できるだけ味付けがされていないものや、消化機能のことを配慮して低脂肪のものを選ぶといった注意が必要です。

また、ニンニクのように、わんちゃんが食べてはいけない食材が風味付けに使用されている製品も避けなければいけません。
与える前には、どのような成分が含まれているかをしっかりと確認するようにしましょう。

ペット用のミルクであれば安心

牛乳を飲ませたい飼い主さんや、牛乳の風味が好きなわんちゃんも多いかもしれません。
しかし、わんちゃんのなかには、乳糖不耐性という特徴によって、牛乳を飲むと下痢を起こす子もいるため、注意が必要です。

市販されているペット用のミルクであれば、わんちゃんが飲んでも問題ない場合が多く安心です。
お家のわんちゃんのお腹の状態が心配なときは、ペット用のミルクを選んで、少量から与えましょう。
ペット用のミルクでも、与えすぎは体に負担をかけてしまうおそれがあるため、必ずパッケージに記載されている量を守り、体調を確認しながら与えてください。

乳製品を与えるときに注意すべきこと

乳製品を与える際、与え方によっては体に負担をかけてしまうこともあります。
では、体に負担をかけずに、乳製品のメリットを最大限に活かすためには、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

脂質

乳製品は脂質を多く含みます。
脂質をまったく摂らないと、栄養が偏ってしまうおそれがありますが、摂りすぎによって脂質が体に悪影響を与えてしまうこともあります。

たとえば、脂質代謝の苦手な子は、血液中に脂肪の成分が増える高脂血症になりやすく、判明した場合は、日常的に脂質を制限する食事療法が必要です。

また、脂質は肝臓や膵臓などの消化器系の臓器に負担をかけてしまうこともあります。

持病があり、普段から低脂質な療法食を食べている子は、乳製品は避けるべきです。消化器系の持病を持っている場合は、与えても問題ないかどうかを、かかりつけの獣医師の先生に確認しましょう。

消化器系の持病がない子でも、摂取後に排泄の変化や食欲の変化などがあった場合は、与えるのを控えたほうが安心です。

乳糖

牛乳には、乳糖と呼ばれる炭水化物が含まれます。
実は、ほとんどのわんちゃんは、この乳糖を分解するための酵素である「ラクターゼ」を持たず、乳糖を代謝できません。

この特性、またそれにより症状が現れてしまうことを乳糖不耐症といい、下痢や嘔吐などの消化器症状が見られます。

そのため、わんちゃんに牛乳を与えることは控えるべきであり、乳製品も同様に注意しなければなりません。
なかには下痢を示さない子もいますが、心配であれば牛乳や乳製品は控えた方がよいでしょう。

カロリー

乳製品は脂質を多く含み、カロリーも高いものが多いです。
乳製品の風味を好むわんちゃんは多いですが、ほしがるままに与えているとカロリーオーバーになってしまい、肥満につながる危険性があります。

少量にとどめることや、乳製品のなかでも低脂質や低カロリーのものを選んで与えるなどの工夫が必要です。

また、投薬のために乳製品を選んで与える飼い主さんも多いですが、おやつとして与えるのであれば、そのカロリー分はごはんを減らして、一日の総摂取カロリーを大幅に超えないよう気をつけましょう。

あくまでも犬にとっての主食は、ドッグフードまたは栄養バランスを考えた手作り食です。
乳製品だけを主食にするような量を与えることはおすすめできません。

乳製品にはどんなメリットがある?

与える際には注意が必要な乳製品ですが、乳製品の風味を好むわんちゃんは多く、健康維持にも役立ちます。
アレルギーや消化機能の問題がない場合、少量であれば与えてもよいでしょう。
ここでは、乳製品を食べることで得られるメリットをご紹介します。

風味付け

ミルクの優しい風味やチーズの風味が好きなわんちゃんにとっては、食欲増進効果が期待できます。
食欲がないときや、高齢で食べる量が減ってきている場合、風味付けのトッピングとして与えてもよいでしょう。

ただし、気をつけなければならないのが、食欲不振の解消のために与える場合です。
食欲不振の原因が消化器症状によるものだった場合、脂質を多く含む乳製品を与えてしまうと、状態が悪化する危険性があります。

何らかの病気による食欲不振があり、風味付けとして乳製品を使用したい場合、まずはかかりつけの先生に問題がないかを確認しましょう。

水分補給

脱水症状を起こさないためにも、水分を摂取することはとても大切です。
しかし、なかにはあまり水を飲んでくれないわんちゃんもいるでしょう。
水を飲まない子に、水を飲むよう促すことは困難かもしれません。

そこで、水分を補給するために乳製品を上手に使うのがおすすめです。
ミルクの風味が好きな子であれば、ペット用のミルクやチーズなどで風味づけたスープを与えると、好んで飲んでくれる可能性が高いです。

カロリー

気をつけるべき点として、乳製品はカロリーが高いため、カロリーオーバーにならないようにすることを先に挙げました。

逆に、高齢や成長期でカロリーや栄養をしっかりと摂取しなければならない場合には、乳製品の使用が役立ちます。

ドッグフードの中に乳製品を混ぜて、風味付けと同時にカロリーを増してあげるとよいでしょう。
その際、とくに高齢の子は、脂質が消化器に負担を与えてしまう可能性があるため、低脂質のカッテージチーズを与えるなど、乳製品の質を考慮してあげてください。

与えたあとの体調の変化に注意

乳製品を与えた後は、わんちゃんの体調の変化をよく観察し、もし異変が現れた場合には、すぐに中止しましょう。乳製品の種類や与えた量・時間などを記録して、かかりつけの獣医師の先生に診てもらうことをおすすめします。症状が長引いたり、悪化したりすると、治療が必要な可能性が高いです。

ここでは、どのような症状に注意しなければならないのかをお伝えしていきます。

下痢

よく見られるのが下痢や軟便です。
乳製品に含まれる脂質が消化器に過剰な負担をかけ、含まれる乳糖に対して乳糖不耐症が現れた場合が考えられます。

また、下痢までは起こらなくても、消化不良のような軟便や、つかんだ際に粘液が一緒に付着するなどの普段とは違う便が出ることもあるでしょう。

そのような変化が見られたら、すぐに乳製品を与えるのを中止しましょう。
中止をして、症状が軽減したり、止んだりするのであれば問題ありません。しかし、症状が悪化したり、続いたりすると、食欲不振による衰弱や脱水症状につながる危険性があります。
できるだけ早めに、かかりつけの獣医師の先生を受診するように心がけましょう。

嘔吐

乳製品に含まれる脂質が消化器を刺激してしまい、下痢と同じ消化器症状である嘔吐を引き起こすこともあります。
症状が見られた場合は、速やかに乳製品を与えるのを中止し、経過を観察しましょう。

嘔吐を頻発するようであれば、脱水症状につながる危険性が高いです。また、食欲不振が起こっていると、体力もどんどん消耗してしまうでしょう。

異常がみられる場合は、早めにかかりつけの獣医師の先生を受診してください。
その際、いつ・どのような乳製品をどのくらいの量与えたのかを、すぐに伝えられるようメモしておきましょう。

牛乳アレルギーによる症状

牛乳に含まれるたんぱく質に、アレルギー反応を示す場合もあります。
消化器への負担と同じように、消化器にアレルギー反応が起こり下痢や嘔吐を起こす危険性や、他の食物アレルギーと同様に皮膚炎を起こす危険性があるでしょう。

便の状態や、食欲の変化を観察すると同時に、皮膚に赤みがないか、痒がっていないかなどを、注意深く観察してください。

万が一、アナフィラキシーショックと呼ばれる、死に至る危険性のあるアレルギー反応が起こってしまうと大変危険です。

乳製品を摂取した後、ぐったりしていたり、体調の変化が見られたりする場合は、すぐにかかりつけの動物病院を受診する必要があります。

何が起こってもすぐ対処できるよう、乳製品を与えるのは動物病院の開院している時間帯に限定するなど、準備をしておきましょう。

まとめ

犬は好む傾向がある乳製品ですが、与え方によっては体に負担をかける害にもなりえます。

今回ご紹介した与える際のポイントや選び方をきちんと考慮しながら、飼い主さんもわんちゃんも一緒に乳製品を楽しめるとよいですね。

ABOUT ME
葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。
獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。
開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。
皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、得意分野とさせていただいています。
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