執筆者:岡田 京子
北里大学 獣医畜産学部 獣医学科2008年卒業。金沢医科大学 大学院 ...プロフィールをもっと見る
「うちの子、ドッグフード食べないんです……」
診察時に、よくこのような相談を受けます。今まで食べていたドッグフードを突然食べなくなったら、まず心配になるのが病気ではないでしょうか。
「このままずっと食べなかったらどうしよう?」と不安を感じる飼い主さんも多いはずです。
しかし、犬がドッグフードを食べない原因は病気だけではありません。今回は、犬がドッグフードを食べないのはなぜか、食べないときはどう対処すればよいのかを詳しく解説していきます。
犬がドッグフードを食べない5つの原因
犬がドッグフードを食べない原因として、大きく以下の5つが考えられます。
- ドッグフードの切り替え
- 偏食
- ストレス
- 成長と老衰
- 体調不良や病気
- 運動不足
それぞれの原因への対処法を詳しくみていきましょう。
【原因1】ドッグフードの切り替え
犬は、成長の過程で必要な栄養素やカロリーが変化します。
たとえば、子犬のときにふやかしていたものが、固くなると食べなくなることがあります。この場合は、少し前の段階まで戻してあげて、ドライフードにシフトしていくスピードをゆっくりにしてみましょう。
また、警戒心が強い子はドッグフードの形状や種類が変わっただけでも怪しんで食べなくなることがあります。フードの切り替え後に食べなくなったときは、元のフードに戻すか、元のフードと混ぜながら徐々に切り替えていくことをおすすめします。
目安として、フードの移行期間は、1週間から10日ほどかけてゆっくりと切り替えるのがよいといわれています。
ただし、切り替えの途中で嘔吐や下痢などの消化器症状、体調の異常などがみられた場合は、中止して元のフードに戻しましょう。また、症状が治まらない場合は早めにかかりつけの病院を受診してください。
【原因2】偏食
おやつや好きなもの、トッピングだけ食べてドッグフードは食べないときは、シンプルに好き嫌いをしている可能性が高いでしょう。
トレーニングのごほうび以外で常習的におやつをあげている場合や、トッピングが癖になっている場合は、次の方法を試してみてください。
いつもどおりドッグフードを与え、10~15分待っても食べなかったら下げてしまい、次のごはんの時間まで何も与えないようにします。
とてもおなかがすくはずなので、犬も徐々に理解して「今食べないと空腹に耐えられない」と学習してくれます。
ここで重要なのが、家族全員が同じ考えで行動することです。誰か一人でも、かわいそうだからといっておやつをあげてしまうとまったく意味がありません。
【原因3】ストレス
犬も人間と同様に、大きなストレスを感じると食欲が落ちます。
たとえば以下のような環境ではストレスがかかりやすいため注意してください。
- 引っ越し
- 慣れない場所へのお出かけ
- お留守番が増えた
- 悪天候で散歩に行けない
- 知らない人が家に来ている
- 自宅や近隣で工事をしている など
犬が軽度のストレスを感じると、あくび、毛づくろいをする、手足をなめる、目をそらす、舌なめずりなどがよくみられます。
これらは、ストレスを感じていないときもとる日常行動ですが、ストレス負荷時は頻度が多くなるため一つの目安にしてみましょう。
また、ストレスが重度になると、震え、体をなめ崩す、脱毛、攻撃性が増すなどの行動がみられます。こうなる前にストレスを軽減してあげることが大切です。
とくに、環境の変化やスキンシップの減少は、犬にとって大きなストレスになりかねません。日ごろから十分にスキンシップをとるほか、グルーミングを適度に行い、ストレスによる見た目の変化にも注意してあげましょう。
分離不安に関しては、かかりつけの動物病院に相談し、薬物治療の併用も検討してみてください。
【原因4】成長と老衰
個体差はありますが、犬は5か月前後をピークに、骨格の成長スピードが落ち着きます。
人と同じように、犬もシニアになると食が細くなる傾向があり、筋肉量と活動量の減少により必要なエネルギー量も少なくなります。また、成長の過程で食の好みが変わることもあるでしょう。
成長と老衰に伴いドッグフードを食べなくなったときの対処法は以下のとおりです。
- いつもと違うフードを与えてみる
- 手で食べさせる
- ふやかしてみる
- 温めてみる
- トッピングをする
- 粒を小さくしてみる
また、シニアになると足や首に負担がかかりやすくなるため、お皿を食べやすい高さにセットしてあげるとよいでしょう。
【原因5】体調不良や病気
ドッグフードを食べず、明らかな体調不良がみられる場合は、できるだけ早く受診してください。軽症で食べられない場合もありますが、自己判断でいろいろと試すのは危険です。
また、普段から体調をよく観察し、食事量、飲水量、体重、気になったことをメモするなど、大事なわが子の細やかな体調の変化に気づいてあげられるような習慣をつけましょう。
【原因6】運動不足
お散歩後の食事は胃拡張・胃捻転症候群を助長するため、食事はかならずお散歩後にしましょう。
運動量が減ると消費カロリーも減りおなかもすきにくくなるため、適度な運動量が必要です。気づかないうちにお散歩時間や距離が短くなっている場合は、もう少し増やしてみてください。
歩くのが難しい場合は、介助ハーネスや補助ハーネスなどを使用してみましょう。
また、運動だけではなく、頭を使うとおなかがすくこともあります。室内ではノーズワークに挑戦してみるとよいかもしれません。
運動量は確保できませんが、10分のノーズワークで60分の消費エネルギーに匹敵するといわれています。
タオルや空き箱で簡単に始められて、脳トレにもなるため非常におすすめです。
ただし、運動不足は自宅で対処できる場合とそうでない場合があります。自己判断が難しいときは、かかりつけの動物病院を受診し、獣医師の指示に従いましょう。
【まとめ】犬がドッグフードを食べないときは原因に合わせた対処が大切
今回は、犬がドッグフードを食べないときに考えられる原因を5つ紹介しました。
病気や体調不良だけではなく、フードの切り替えや偏食、ストレスなどフードを食べない原因は多岐にわたります。
フードを食べなくなったときに適切な方法で対処できるよう、愛犬の体調や行動を日頃からよく観察しましょう。明らかに様子がおかしいときや、自己判断が難しいときは、早めにかかりつけの獣医師に相談してください。
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