執筆者:平松 育子
獣医師・ペットライター山口大学農学部獣医学科卒業山口県内の複数の動物 ...プロフィールをもっと見る
ビタミンは5大栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル)の一種で、身体になくてはならない栄養素です。
本記事では、犬に必要なビタミンの種類や与え方のポイントについて詳しく解説します。
ビタミンとは?
ビタミンとは、生命活動に必要な微量栄養素のうち、体内で作ることができないため摂取する必要があるものです。
3大栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質)とは違い、エネルギー源や体を作る成分ではありませんが、体の働きの微調整を行うために大切な栄養素です。
ビタミンには「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」の2種類があります。
水溶性ビタミン
水溶性ビタミンにはビタミンC、ビタミンB群、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸、葉酸などがあります。これらのビタミンは熱に弱く水溶性であるため、過剰に摂取すると水に溶けて尿中に排泄されます。
種類 | 働き |
---|---|
ビタミンC | 抗酸化作用、エネルギーを作る |
ビタミンB1(チアミン) | 神経の機能を維持する |
ビタミンB2(リボフラビン) | 脂質の代謝、皮膚・被毛・爪などの維持 |
ビタミンB6(ピリドキシン) | アミノ酸やタンパク質代謝 |
ナイアシン | 皮膚を健康に保つ、脂質やタンパク質、糖質の代謝 |
ビオチン | 皮膚を健康に保つ、疲労回復 |
パントテン酸 | 脂質やタンパク質、糖質の代謝 |
葉酸 | 赤血球の生成 |
ビタミンB12 | 造血作用、神経の働きの維持 |
脂溶性ビタミン
脂溶性ビタミンにはビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンKがあります。脂質と一緒に摂取すると吸収されやすい点が特徴です。
しかし、水に溶けないため、過剰摂取すると体内に蓄積して悪影響を及ぼすおそらがあります。
種類 | 働き |
---|---|
ビタミンA | 視覚の働きを助ける |
ビタミンE | 抗酸化作用、アンチエイジング、 |
ビタミンD | カルシウムとリンの吸収促進 |
ビタミンK | 血液凝固 |
犬に必要なビタミンは?
犬に必要なビタミンは以下の14種類です。
- ビタミンB(1・2・6・12)
- ビタミンC
- ビタミンA
- ビタミンD
- ビタミンE
- ビタミンK
- パントテン酸
- ナイアシン
- 葉酸
- ビオチン
- コリン
犬はビタミンCを体内でブドウ糖から合成できます。そのため、与える必要はないとされていますが、最大合成できる量は60mgのため、消耗が激しいときには与えたほうがよいでしょう。
ビタミンCを与えすぎたとしても、水溶性ビタミンで排泄できるため、過剰症の心配はありません。
ビタミンKも、腸内細菌がほぼ十分量合成しているとされており、特別給与しなくてもよいでしょう。ただし、止血異常などが起こったときは必要とされる場合があります。
ビタミン不足のリスク
犬の健康に必要なビタミンですが不足するとどのような弊害があるのでしょうか。
ビタミン不足で起こる病気には以下のようなものがあります
<h3>壊血病(VC)</h3>
壊血病はビタミンC欠乏で起こる病気です。
犬はビタミンを合成できるためリスクは非常に低いものの、発症すると毛細血管が弱くなり、皮下や粘膜などが出血しやすくなります。
脚気(VB1)
脚気はビタミンB1が不足することで起こる病気です。
ビタミンB1は皮膚や粘膜に必要なほか、代謝にもかかわる栄養素で、体内では合成できません。不足すると疲労感、筋力低下、神経症状が起こる危険性があります。
夜盲症(VA)
夜盲症は、暗さに対応する網膜の細胞の働きに障害が起こり、暗い場所や夜間にものが見えにくくなる病気で、ビタミンA不足によって発症するとされています。
ビタミンAが不足すると、これ以外にも成長の遅れ、網膜変性、免疫の低下などが起こります。
クル病・骨軟化症(VD)
ビタミンDが足りないことにより、カルシウムやリンが不足して引き起こされる病気です。
ビタミンDは食事から摂取するだけではなく、紫外線に当たると皮膚で合成されるものもあります。
これらを合わせて十分量あればよいですが、不足すると骨の変形が起こってしまいます。
ビタミン過剰のリスク
水溶性ビタミンは排泄できますが、脂溶性ビタミンは排泄しにくく体内に蓄積します。
その結果、過剰症を引き起こして健康に影響を与えるおそれがあるため注意が必要です。
ビタミンA過剰症
犬がビタミンAを過剰に摂取すると、中毒を引き起こす危険性があります。
過剰症の症状としては、食欲不振、嘔吐、脱毛、発疹、関節の異常、体重減少などがあります。
子犬の場合は、足の痛みから触られることを極端に嫌がるなどの症状が起こります。
ビタミンD過剰症
ビタミンDを過剰摂取すると、骨代謝や骨化がうまくいかず、骨の石灰化が起こる場合があります。
パピー期に起こりやすく、高カルシウム結晶や、降臨結晶、頻尿などさまざまな病気を引き起こすこともあります。
クル病について
クル病とは別名「栄養性二次性状飛翔体機能亢進症」といい、子犬がかかりやすい骨の病気です。
四肢の骨や背骨が曲がったり、関節が腫れたり、運動を嫌がったりする症状が見られ、重症化すると歩行困難となり、骨折しやすくなります。
クル病の原因
クル病は、成長期にカルシウムの吸収がうまくいかないことが原因で起こりやすい病気です。
また、日光浴不足(紫外線不足)、食事中のカルシウムやリンの不足、ビタミンDが体内でうまく合成できなくなることもクル病を招く原因とされています。
そのほか、食事の栄養バランスの悪さや過剰なトッピングなどによるタンパク質不足、マグネシウムの過剰摂取にも注意が必要です。原因となります。
クル病の治療
クル病の治療は内科的治療になります。カルシウムやビタミンDを含んだバランスの取れた食事による食事療法と適度な運動、日光浴を行うことで、軽度であれば1か月程度で通常の生活を送れるようになります。
病的な骨折や骨の変形がひどい場合は外科的治療が必要となり、治療期間は長くなります。
犬にビタミンのサプリメントは必要?
総合栄養食を食べていれば、犬に必要なビタミンはバランス良くとれるため、基本的にはビタミンのサプリメントは必要ありません。
一般食や副食は総合栄養食ではないため、総合栄養食をしっかりと食べましょう。
一方で、食欲不振や病気療養中の犬は、サプリメントが必要になることもあります。ただし、過剰症を引き起こすリスクもあるため、獣医師に相談しながら、上手にサプリメントを利用することが大切です。
高齢犬の場合
高齢犬になると消化吸収能力が低下し、栄養素を吸収することが難しくなります。
ビタミンDの吸収が低下すると、骨折の原因となったり、ビタミンB12の吸収が悪くなり貧血を引き起こしたりするおそれがあります。
徐々に食欲が低下して総合栄養食を食べなくなった場合には、ビタミンのサプリメントが必要となるでしょう。
まとめ
総合栄養食をしっかりと食べてくれている場合は、ビタミンをバランス良く摂取できているため心配はいりません。
プラスアルファでサプリメントを与えると、過剰症を引き起こすリスクが高まるため注意しましょう。
長期の食欲不振や何らかの疾患がある場合は、ビタミンが不足しやすいため、獣医師に相談のうえでビタミンのサプリメントをプラスしていきましょう。
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