ドッグフード

【獣医師執筆】ドッグフードの賞味期限は開封前・開封後でどう違う?タイプ別の賞味期限と保存方法を解説

執筆者:平松 育子
獣医師・ペットライター山口大学農学部獣医学科卒業山口県内の複数の動物 ...プロフィールをもっと見る

ドッグフードは容量が大きいものほど割安であるため、コストを抑えるために大容量のものを購入する方は多いでしょう。

しかし、フードは開封すると同時に劣化が始まり、風味が落ちてしまいます。劣化したフードを食べると、体調不良を招きかねません。

愛犬の健康を守るためには、開封前・開封後のドッグフードの賞味期限を把握し、適切な方法で保存することが大切です。

この記事では、ドッグフードのタイプ別に賞味期限と保存方法を解説します。

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ドッグフードの賞味期限とは

ペットフードに表示される項目や内容は「愛玩動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」で厳しく規制されています。

5つの項目を日本語で表示することが義務化されており、そのうちの一つが「賞味期限」です。

さらに自主基準である「ペットフードの表示に関する公正競争規約」では、ペットフード安全法の5項目を含む9項目について規制されており、ペットフード安全法で定義される賞味期限とは少し異なる観点で記載されています。

ペットフード安全法の賞味期限

ペットフード安全法では、賞味期限について次の項目が定められています。

①項目名「賞味期限」が日本語で記載されている

②年月日または年月で表示されている(例:2010 08)

※年月日又は年月の順でない場合には説明が必要です。

例:08 2010(最初の2ケタが月、次の4ケタが西暦年)

③月は数字又は日本語で表示されている

 または

 英語表記だが、わかりやすい説明がある

例:15 NOV 14

アルファベットは、JANなら1月、FEBなら2月…DECなら12月のことです。最初の2ケタは「日」、次のアルファベットは「月」、次の2ケタが「西暦年」です。

ペットフードの表示に関する公正競争規約の賞味期限

ペットフードの表示に関する公正競争規約では、賞味期限について次の項目が定められています。

①賞味期限は、定められた方法により保存した場合、全ての品質が保たれている期限を表示する

②未開封の状態であれば品質の保持ができる場合を除き、未開封での期限であることを表示する

③「賞味期限」の文字を記載した上で、その周辺部分にアラビア数字で賞味期限を併記

④併記できない場合には、賞味期限を記載しているところを明記して記載するものとする

ドッグフードの賞味期限はどれくらい?

ドッグフードを購入するときは、パッケージの賞味期限を確認する方が多いでしょう。

メーカーによって賞味期限は異なり、ドッグフードのドライは何年、ウェットは何年というように決まっていません。

そのため、商品ごとの賞味期限を確認し、開封後は保存方法を守って早めに使い切ることが重要です。

では「なるべく早く」とはどのくらいの期間をいうのでしょうか。

ドッグフードの賞味期限と適切な保存方法を、ドライフードとウェットフード別に解説します。

ドライフードの賞味期限と保存方法

ドライフードとは、水分含有量が10%程度以下のドッグフードを指します。ウェットフードよりも開封後の劣化が進みにくく、長期間保存できるメリットがあります。

開封前

一般的なドライフードの開封前の賞味期限は1~1年半です。

ドライフードは製造工程の途中で、80~150度の温度に10~20分さらすことで、水分含有量を4~15%減らします。その後、カビや細菌が繁殖しないように一定温度まで冷却し、充填・包装工程に回されるため、賞味期限が長い点が特徴です。

開封前の保管方法は、袋に記載されている方法を守りましょう。ほとんどの場合は冷暗所保存です。

「冷暗所」とは、温度が低く一定に保たれた場所のことをいいます。一般的には、温度が1~15度前後で、直射日光が当たらず湿気のたまらない、風通しの良い場所が適しています。

床の上に直に袋を置くと、床からの温度差で袋の中に結露ができてしまい、劣化が進無ため注意してください。すのこを置くなどして、床からの温度差の変化を受けないように工夫しましょう。

開封後

開封後の賞味期限は袋に記載されていないことがほとんどで「開封後はできるだけ早く」と記載されているだけです。

開封後は、適切な保存方法(冷暗所)で管理して、1か月以内に使い切ることを推奨しています。

また、最初は好みに合うかわからないほか、お腹に合わず下痢になってしまうおそれもあります。内容量が少ないお試しサイズやサンプルがあれば、せっかく購入したドッグフードを無駄にせずに済むでしょう。

開封後は、小分けになっていないドッグフードの場合、数日分ずつ袋やタッパーに入れ、空気を抜いて保存しましょう。それぞれの袋に酸化防止剤や乾燥剤を入れておくと劣化しにくくなります。

なお、開封後であっても、冷蔵庫内で保管することはおすすめできません。

冷蔵庫内で保管すると、出し入れをする際の温度差から袋やタッパー内に結露ができます。

この結露が原因で徐々に劣化が進んでしまうため、冷蔵庫ではなく冷暗所で保管しましょう。

ウェットフードの賞味期限と保存方法

ウェットフードとは、水分含有量が約75%のドッグフードで、缶詰やパウチ、アルミトレイなどに入っています。開封すると急速に劣化が進むため、すぐに使い切る必要があります。

開封前

開封前のウェットフードの保存期間は長く、缶詰が約3年、パウチが約2年です。消費期限を過ぎると味や食感が落ちるといわれています。

ウェットフードは肉などを主原料として、ほかの原料も一緒に缶やパウチなどへ充填し、レトルト釜で加熱・加圧します。容器に入った状態で殺菌されるのがドライフードとの大きな違いです。容器の中で微生物が増えにくい環境を作っているため、保存期間が長くなります。

開封後

ウェットフードを開封したら冷蔵庫で保管し、2~3日以内に食べきるようにしましょう。

開封前であれば長期保存ができる一方、水分が多いため開封後はドライフードよりも劣化しやすくなります。

開封後の保存方法は、缶のままでも容器に移してもよいですが、できるだけ空気に触れないように密封し、冷蔵庫で保管してください。

ただし、密封しても徐々に風味は落ちてしまうため、できるだけ早く食べきることが大切です。

ウェットフードは冷凍しても問題ない?

ウェットフードは賞味期限が短いため、食べきれなければ冷凍保存が可能です。

ウェットフードを冷凍する際には必ず容器から出し、1食分ずつ小分けにしてラップに包んで冷凍します。製氷皿に分けて冷凍するのもよいでしょう。

厚みが出ないように、平らにしたほうが早く冷凍できるほか、解凍もしやすくなります。

冷凍すると長期保存できますが、2~3週間を目安に使い切りましょう。あまり長く保存すると「冷凍焼け」を起こして風味が損なわれたり、品質が悪くなったりするため注意が必要です。

家庭用の冷凍庫は開け閉めで温度変化が起こりやすく、冷凍庫内の温度が上がり溶け始めた食品内の水分が蒸発して抜けることで乾燥します。抜けた水分は、冷凍庫内が再び冷やされると袋や容器内で霜となり、品質劣化の原因となります。

また、解凍は自然解凍または冷蔵庫内で行ってください。電子レンジを使用すると、加熱の際に解凍ムラができたり、加熱のし過ぎでにおいが変わったりすることがあります。

【事例】缶詰のまま冷凍し、電子レンジで解凍

開封後のウェットフードを半分残し、冷凍していた缶詰があることを思い出し、利用しようとした飼い主さまがいらっしゃいました。

小分けしていなかったため、自然解凍するにも時間がかかります。急いでおられたので電子レンジで温め、凍っていない状態にして愛犬にあげたそうです。

しかし、大好きな缶詰なのに、においをかいだだけでまったく食べず残してしまったとのことでした。

不思議に思った飼い主さまがにおいを確認したところ、開封したてのかおりとはほど遠かったそうで処分されました。

冷凍保存であっても、間違った保存・解凍方法では風味やかおりが大きく損なわれてしまいます。

正しい方法で保存・解凍するのはもちろん、できれば残さずに使い切れる量のウェットフードを選ぶのがベストでしょう。

賞味期限と消費期限の違い

ドッグフードに限らず食品には、安全においしく食べられる期間があり、袋や容器に「賞味期限」か「消費期限」のどちらかが表示されています。では、賞味期限と消費期限はどう違うのでしょうか。

賞味期限

賞味期限とは、袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この「年月日」まで品質が変わらずにおいしく食べられる期限です。主に、傷みにくい食品に表示されています。

作ってから3か月以上持つものは「年月」で表示することもあります。

消費期限

賞味期限とは、袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この「年月日」まで安全に食べられる期限です。傷みやすい食品に表示されています。

保存料について

ドッグフードをできるだけ安定した状態で食べてもらうために、さまざまな添加物が加えられています。

酸化防止剤や保存料などが代表的で、どの程度の量であればワンちゃんに害を与えないかという基準値がペットフード安全法で定められています。海外の基準と日本の基準は異なるため、海外では使われていない添加物が日本では使用されている場合も少なくありません。

一般的な保存料はソルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムなどです。ドッグフードには原材料を記載する義務があり、必ず添加物が明記されています。しかし、どれが何を示しているかが不明になることを避けるために、酸化防止剤(アスコルビン酸ナトリウム)、保存料(ソルビン酸カリウム)のように記載されています。

身体に害を与えない量を基準にしていることは確かですが、どのように反応するかはワンちゃんの体質にもよるため、添加物に対する判断は飼い主さまに委ねられます。

ドッグフードを選ぶ際は、これらの添加物についてもよく確認し、愛犬に合ったものを選ぶことが大切です。

【まとめ】ドッグフードは適切な方法で保存し、早めに食べ切ることが大切

ドッグフードの賞味期限について解説しました。

袋に記載されている賞味期限は、あくまでも開封前のもので、定められた保存方法で保存した場合の日付です。

たとえば、冷暗所保存のものを高温多湿の場所で保存した場合、記載されている賞味期限よりも短くなる可能性があります。

また、開封すると劣化が始まるため、適切な方法で保存し、できるだけ早く使いきることがワンちゃんの健康のためには大切です。

ABOUT ME
平松 育子
獣医師・ペットライター
山口大学農学部獣医学科卒業
山口県内の複数の動物病院で代診を務めたのち、2006年に動物病院を開業。
ペット関連のウェブライターとして、多数のメディアの記事執筆、監修を行う。
2023年6月 ペット専門の記事作成会社「アイビー・ペットライティング」設立。代表を務める。
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