執筆者:平松 育子
獣医師・ペットライター山口大学農学部獣医学科卒業山口県内の複数の動物 ...プロフィールをもっと見る
春になり、愛犬のくしゃみや鼻水がひどくなると「もしかして花粉症?」と思いますよね。
犬にも人の花粉症に似た症状が起こり「季節性アレルギー」と呼ばれます。鼻炎のような症状だけではなく、眼や皮膚のかゆみも強く出るのが特徴です。
本記事では、犬の花粉症の症状と対策、治療法について解説します。
犬にも花粉症はある
寒さが和らぎ、ポカポカと過ごしやすい季節になると、花粉症に悩まされる方も多いのではないでしょうか。
愛犬もくしゃみをしたり眼を痒がっていたりすると花粉症を疑ってしまいますよね。
犬にも花粉症はありますが、正確にいうと「花粉に対するアレルギー」です。
季節によってアレルギー症状が出たり治まったりするため「季節性アレルギー」と呼ばれることもあります。
スギ以外の木や草の花粉にもアレルギー反応が起こります。
犬の花粉症の症状
犬の花粉症の代表的な症状は以下のとおりです。
- くしゃみ・鼻水
- 眼のかゆみ
- 皮膚のかゆみ
人の花粉症とあまり変わりませんが、くしゃみや鼻水といった鼻炎の症状よりも、かゆみの症状のほうが多い特徴があります。
くしゃみ・鼻水
くしゃみや鼻水は、散歩の前後、室内犬であれば窓を開けたタイミング、飼い主さまが外出から戻ってきたタイミングなどに起こりやすい症状です。
人の花粉症の場合とタイミングが似ているため、わかりやすい症状です。
足が短いダックスフントやコーギーの場合、勢いよくくしゃみをすると鼻を床にぶつけてしまい、鼻血が出ることがあります。
眼のかゆみ
眼のかゆみも花粉症でよく見られる症状です。
眼をこすることで眼の周りが赤くなり、脱毛してしまうおそれがあります。
ひどくなると眼が腫れてしまい、開かなくなったり、色素沈着で眼の周りが黒くなったりするため注意が必要です。
また、涙が多い、白眼が充血しているといった症状が出る場合もあります。
皮膚のかゆみ
肉球や四肢、脇、腹部は皮膚のかゆみが生じやすい場所です。
花粉は風に乗って飛びますが、最終的には地面に落ちます。地面に落ちた花粉を犬は散歩のときに巻き上げながら歩くため、地面に近い皮膚に花粉が付着してしまいます。
犬の花粉症の対策
花粉によるアレルギー症状をできるだけ抑えるためにできる対策方法を紹介します。
花粉の多い日は散歩に行かない
アレルギーの原因となる花粉に触れると、先に紹介したような症状が出てしまうため、花粉に接触する機会をできるだけ減らす必要があります。
天気予報で、花粉の飛散量を毎日必ずチェックしましょう。
花粉の飛散量が多い日は散歩を控えることをおすすめします。
散歩から帰ってきたら体を拭く
散歩を楽しみにしている犬の場合、花粉の飛散シーズンに毎日散歩しないわけにはいかないでしょう。散歩に行かないと、おしっこやうんちをしないという犬も珍しくありません。
花粉の飛散量が多い日に散歩に行ったら、家に入る前に全身を濡れたタオルで拭きましょう。
花粉をつけたまま家に入ったり、体をブルブルと震わせたりすると、花粉が散ってしまいます。
また、地面に落ちている花粉を踏んでいるため、肉球の間を軽く洗うようにしてください。
からだについた花粉を吸い込むと、くしゃみや鼻水の原因となります。被毛に付着しているものの、皮膚には付着していない状態であれば、皮膚のかゆみは起こりにくいでしょう。
シャンプーで洗い流す
時間があるときや、花粉の飛散量が多い日は、散歩のあとにシャンプーをして、全身についた花粉を洗い流してあげましょう。
シャンプーは1週間に1回をめどに行うのがおすすめです。
クロルヘキシジンなどの殺菌成分が入っているものではなく、毎日使ってもよいタイプのシャンプーを選んでください。
花粉対策のウェアを着用する
飛散量が少ない時間帯を選んで散歩に行っても、花粉の付着をゼロにすることは困難です。とくに、犬は全身に被毛があるため、飛んでいる花粉が非常につきやすい状態になります。
そこでおすすめしたいのが、花粉が付着しにくい特殊な生地を使用した犬用のウェアです。
犬用のウェアがない場合は、レインコートでも代用できます。また、長袖で全身をすっぽりと包むラッシュガードの使用も花粉対策に有効です。
飼い主さまも花粉対策が必要
盲点になるのが飼い主さまの帰宅時です。外出先では、服にたくさんの花粉が付着しており、そのまま家の中に入ると花粉を持ち込んでしまいます。
愛犬が喜んで玄関までお出迎えしてくれる場合は、花粉を吸いこんだり、体に花粉が付着したりするでしょう。
そのため、自宅に入る前に服をはたいて、花粉をできるだけ持ち込まないようにすることが大切です。
以前、私が担当していた犬が、花粉症の疑いをもっていました。
春になると極端に眼の周りと腹部、脇をかゆがります。症状が治まる時期は毎年異なりましたが、暑くなるころには症状が軽減され、皮膚病の犬が増えてくる夏はまったく症状がなく、暑さにも負けず元気に暮らしていました。
同じパターンを2年繰り返したため、典型的な季節性アレルギーと判断。アレルギー検査を行ったところ、複数の春に飛ぶ花粉に反応が見られたのです。
散歩はあまり好きではない子だったため、春の花粉シーズンは室内で過ごしてもらい、それ以外の季節はお散歩に行くという暮らしをおすすめしました。
症状が軽くても定期的なシャンプーを行うほか、窓を開閉する部屋には犬を入れないようにアドバイス。飼い主さまの帰宅時には、外で服をはたき、室内に花粉を持ち込まないことを徹底しました。
また、飼い主さまが自主的に花粉対策ができる空気清浄機を購入し、窓を開ける部屋に設置しました。
そうした徹底的な対策により、よほどひどいときだけ投薬は必要でしたが、ずいぶんと楽に過ごせるようになったそうです。
飼い主さまが愛犬に少しでも楽に過ごしてもらいたいという思いの強さを感じました。
花粉症の治療
花粉症はアレルギー反応のため、少量の花粉に対してもアレルギー症状が起こります。
先に紹介した対策をとっても症状が緩和されないときは、動物病院での治療が必要です。
内服薬・点眼薬
動物病院では、主にアレルギー症状を抑える薬が処方されます。かゆみを抑える薬は数種類あり、症状の程度に合わせて使い分けます。
眼がかゆい、涙や目脂が多い場合は、アレルギー症状を抑える点眼薬を併用するとよいでしょう。
かかりつけの動物病院でよく相談して治療方法を決定してください。
アレルギー検査
内服薬を飲んで症状が治まっても、薬をやめた途端に再発することは珍しくありません。
アレルギーの治療で大切なのは、何に対してアレルギーを持っているのかを把握することです。
アレルギー症状の原因となるアレルゲンを特定するためには、血液検査が有効です。アレルゲンをおおよそ特定できれば、対策も取りやすくなります。
血液検査は、アレルギー症状がもっともひどいタイミングで行うのが有効です。
まとめ
人と同様、犬にも花粉症はありますが、犬の場合は季節性アレルギーと呼ばれます。
花粉が飛ぶ春と秋に、くしゃみや鼻水、かゆみなどが見られる場合は、季節性アレルギーを疑ってみてください。
花粉症を予防するためには、アレルゲンに極力接触しないことが重要です。必要に応じて検査を受け、対策や治療を行っていきましょう。
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