病気・ケア

レモンが持つ栄養とは?犬に与えてよい目安量や注意点を獣医師が解説

執筆者:大熊 真穂
獣医師。現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経 ...プロフィールをもっと見る

レモンは、独特の酸味とビタミンCの含有量が多いことで知られています。
人間では体調を整えて気分をスッキリさせたいときに好まれるレモンですが、犬にレモンを与えても問題はないのでしょうか?
この記事では、レモンが持つ栄養と犬に与えた際の健康上のメリット、与える際の注意点などをまとめました。

犬にレモンを与えても問題はない?

犬にレモンを与えても中毒を起こすことはありませんが、積極的に与える必要はありません。
レモンの独特の酸味は他の甘い果物とは異なり、犬があまり好まないうえに、胃腸への刺激が非常に強いです。

また、犬はレモンに多く含まれているビタミンCを体内合成することができます。
そのため、レモンを与えなくても問題はありませんが、与え方と量に注意すれば与えても大丈夫です。

レモンの栄養素

レモンはビタミンCが豊富で、人間の場合には疲労回復に効果があると言われています。
レモンに含まれる主な栄養素は以下の通りです。
比較と参考までに温州みかんの栄養素も記載しました。

レモン果実レモン果汁温州みかん
カロリー43kcal24kcal49kcal
水分86.3g90.5g87.2g
たんぱく質0.9g0.4g0.5g
脂質0.7g0.2g0.1g
炭水化物12.5g8.6g11.9g
ビタミンC100mg50mg35mg

※引用元:文部科学省│日本食品標準成分表2020年度版 可食部100gあたり

ここからは、レモンが持つ栄養特性について紹介します。

ビタミンC

レモンは、柑橘系の中では非常にビタミンCが多い果物です。
また、ビタミンCは皮よりも果汁に多く含まれています。

ビタミンCには抗酸化作用があり、細胞を活性化させ、免疫を高める効果が期待できます。
コラーゲンの生成に必須のビタミンで、骨や腱・皮膚・毛細血管を強化して健康維持をサポートします。

人間のデータでは、喫煙やストレスが原因で、ビタミンCの必要量が増えると言われています。
研究データはありませんが、犬や猫にもタバコの煙による受動喫煙の害が懸念されているため、人間と同様にビタミンCの必要量が増える可能性があります。

クエン酸

クエン酸は、野菜や果物に多く含まれている成分の一つです。
レモンの独特の酸っぱさのもとになっているもので、果肉や果汁に多く含まれています。

クエン酸は、カルシウムや鉄分などのミネラルの吸収をサポートし、胃液の分泌量を増やすと言われています。
さらに、体内では脂肪や糖の代謝に関与し、乳酸を分解する働きがあります。

ポリフェノール

ポリフェノールとは、植物が持つ苦みや色素の成分で、レモンの皮に多く含まれています。
強い抗酸化作用と、体内の酵素や受容体の機能を調節する作用が知られており、アンチエイジング効果や抗がん作用が期待されています。

犬にレモンを与える健康上のメリット

認知機能障害の犬には、ビタミンEやβカロテンと併せて、ビタミンCのような抗酸化物質の摂取が推奨されるというデータがあります。
また、国立大学が企業と共同開発して、レモンの乾燥果実を粉末にして使ったおやつを販売しています。
体臭や口臭の軽減・ダイエット効果が期待されていることから、レモンを犬に与える何らかの健康メリットはあると考えられるでしょう。

しかし、生の果実や果汁をそのまま与えることは、犬にとってストレスとなるおそれがあります。
また、認知機能障害の犬のビタミンC推奨値は体重1kgあたり150mgで、レモンの果実150gに当たり、レモンだけでビタミンCを摂取するのは現実的ではありません。

サプリメントでもビタミンCの摂取は可能ですが、過剰摂取は犬の健康に悪影響を与えるリスクがあります。かかりつけの動物病院で相談のうえ、サプリメントの利用やビタミンCが添加された総合栄養食を与えましょう。

そのほか、手作り食のレシピでは、鉄分などのミネラル分をうまく吸収するためにレモンの使用を推奨しているものがありますが、「仕上げに絞る程度」が推奨されます。
なお手作り食の場合は、自己流ではなく、犬の身体に必要な栄養素についてしっかりと学んだうえで実践することが大切です。

犬に与えてよいレモンの目安量

どうしてもレモンを犬に与えたい場合は、基本的に全給餌量の10%を越えないようにコントロールする必要があります。
与えてよい具体的な目安量は以下の表の通りです。

体格及び目安の体重レモンの量(見た目の目安)
超小型犬(~4kg)~9gまで: 薄めのスライス2枚の果汁
小型犬(~10kg)9g~18g: 薄めのスライス2枚~4枚の果汁
中型犬(11kg~25kg)19g~36g:レモンの果汁1/4~1/2
大型犬(26~44kg)37g~55g: レモン果汁1/2~1個
超大型犬(45kg~)56g~レモン果汁1個~

※避妊去勢済みの成犬の一般的なドッグフードのカロリー(100g中350kcal)で一日量の10%で算出

レモンを犬に与えるときの注意点

レモンを犬に与える際には、以下のようなポイントに気をつける必要があります。

・生の果実や果汁をそのまま与えない
・防かび剤や農薬を使っていないものを使い、皮は与えない
・レモンティーやジュース・砂糖漬けなどの加工品は与えない
・毎日続けて与えない

生の果実や果汁をそのまま与えない

犬に与える際には、少量のハチミツや少量のウエットフードに混ぜるか、仕上げに果汁を絞って入れるなど工夫しましょう。
犬にレモンそのものを食べさせたり、生の果汁をそのまま飲ませたりするのは厳禁です。

強い酸味は犬にとって刺激が強すぎるうえに、嘔吐や下痢などの消化器症状を引き起こすおそれがあります。

さらに、初めてレモンを与える際は1日の目安量を一度に与えるのではなく、まずは少量を与えて、愛犬の体調に変化がないか確認してください。
万が一体調不良が見られた場合は、レモンを与えるのをやめて、かかりつけの動物病院を受診しましょう。

防かび剤や農薬を使っていないものを使い、皮は与えない

市場によく出回っている輸入品のレモンは、防かび剤や農薬が使われているものが多く、犬の身体に悪影響を及ぼすおそれがあります。
国産の無農薬のレモンをしっかり洗ってから使用しましょう。

また、国産のレモンであっても、レモンの皮には「リモネン」という有害な物質が含まれています。強い毒性はないと言われていますが、念のため皮は与えないようにしましょう。

レモンティーやジュース・砂糖漬けなどの加工品は与えない

レモンティーは、犬が中毒を起こす危険性があるカフェインが含まれているため、与えてはいけません。
また、ジュースや砂糖漬けなどの加工品も犬に与えるのは控えるべきです。
糖分の過剰摂取により肥満・糖尿病などの病気を引き起こす危険性があります。
肥満は慢性的な炎症を引き起こすほか、ガンや膵炎・整形外科疾患などのリスクを高めるため注意しましょう。

毎日続けて与えない

一日の許容範囲の量であっても、毎日続けてレモンを与えるのはおすすめできません。
身体に良いとされている食材でも、毎日同じものを繰り返し与え続けると、アレルギーや食物不耐性が発症するおそれがあります。

またレモンは酸味が強く、少量でも毎日続けて与えることで、胃炎を引き起こす場合もあるため気をつけましょう。

レモンを与えてはいけないケース

レモンは、犬に中毒を起こす成分は含まれてはいないものの、リンゴやブルーベリーなどとは異なり酸味が強すぎるため、積極的に与えて良い果物ではありません。
健康な犬であれば、量や与え方に注意すれば問題ありませんが、以下のような場合にはレモンを与えることは避けましょう。

消化器症状がある犬や子犬には与えない

犬は、肉食動物に近い動物のため、野菜や果物などの食物繊維を多く含む食べ物の消化はあまり得意ではありません。
もともと消化器症状がある犬や、腸の免疫機能が不完全な子犬がレモンを食べると、下痢や嘔吐などの症状が発症・悪化する危険性があるため控えましょう。

また、シニア犬にレモンを与えるのは賛否両論で、胃酸の分泌能力が低下しているためレモンが効果的であるという意見もあります。
しかし、このレモンの効能に関して、犬に人間のデータがあてはまるかどうかは明らかになっていません。

私自身が18歳になるシニア犬の飼い主で、また勤務先に来院されるシニア犬を見て感じることですが、シニアになると食欲にムラがでるため、レモンの強い香りや苦みは、若い犬以上に受けつけない可能性が高いです。

なお、消化能力が落ちてきたシニア犬への対策としては、消化管運動改善剤を投薬しています。

アレルギー疾患がある犬には与えない

もともとアレルギー疾患がある犬にも、レモンを与えるのは控えましょう。
また、一度レモンを与えて、消化器症状や皮膚の赤み・痒みなどの症状がでた場合も注意してください。症状が悪化したり、命に関わる症状が起こったりするおそれがあるため、今後もレモンを与えるのは避けるべきです。

まとめ

レモンはビタミンCやクエン酸が含まれ、抗酸化作用に優れた果物です。
しかし酸味による刺激が強く、ビタミンCを体内で合成できる犬にとっては、必ずしもおすすめの食材ではありません。

どうしても与えたい場合は、生の果実や果汁をそのまま与えるのではなく、「ハチミツやウエットフードに混ぜる」「手作り食の仕上げに果汁を絞る」「全給餌量の10%以内の量にする」「皮は与えない」など、正しい方法で与えてください。

参考文献:ファームプレス 臨床のための小動物栄養学 

ABOUT ME
大熊 真穂
獣医師。現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら 専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。
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