ドッグフード

【獣医師執筆】小麦入りドッグフードのメリット・デメリットと選び方のポイントを解説

執筆者:岡田 京子
北里大学 獣医畜産学部 獣医学科2008年卒業。金沢医科大学 大学院 ...プロフィールをもっと見る

愛犬の食事について悩んだことはありませんか。とくに、小麦入りドッグフードについては、さまざまな意見が飛び交っています。

犬の3大栄養素は、タンパク質、脂肪、炭水化物の3つです。これにビタミンとミネラルを含めると5大栄養素、さらに水を含めて6大栄養素となります。

犬とヒトは同じ雑食で必要な栄養素は同じですが、その比率は草食性が強めのヒトと、肉食性が強めに犬では異なります。

今回は、小麦入りドッグフードのメリットとデメリット、選び方のポイントについて詳しく解説していきます。

小麦入りドッグフードのメリット

小麦入りドッグフードを与えるメリットは以下のとおりです。

栄養バランスに優れている

小麦は、犬の健康維持に欠かせない栄養素を豊富に含んでいます。 

小麦に含まれる主な栄養素
  • 炭水化物:即効性のエネルギー源
  • タンパク質:筋肉の維持
  • 食物繊維:消化器系の健康維持
  • ビタミンB群:代謝を促進し、神経系の健康を支える
  • ミネラル:骨や歯の健康、体内のさまざまな機能に必要

とくに、炭水化物は犬にとって主要なエネルギー源です。適切な量の摂取は、犬の日常的な活動エネルギーを支え、健康的な体重維持に役立ちます。

消化性が高い

ドッグフードに使用される小麦は、適切に加工されているため、犬の消化器系で十分に消化吸収されます。

野生の犬と違い、家庭で飼育される犬は、長い年月をかけて穀物を消化する能力を進化させてきました。実際、多くの犬は小麦を含む穀物を問題なく消化できます。

ただし個体差があるため、フードを変更するときは愛犬の様子をよく観察することが大切です。

コストを抑えられる

小麦は比較的安価な原材料です。品質の良いタンパク質源と組み合わせることで、栄養バランスのとれた手ごろな価格のフードを提供できます。

コストを抑えられる点は、とくに大型犬や複数の犬を飼育している飼い主さんにとって大きなメリットでしょう。

ただし、価格だけではなく、ほかの成分とのバランスや体への適合性も重要な選択基準であることを忘れてはいけません。

食感が良い

小麦入りのドッグフードには適度な食感があるため、嗜好性が高まり満足度が上がる可能性があります。とくに、愛犬がサクサクとした食感や噛みごたえのあるフードを好む場合におすすめです。

また、小麦を含むフードは、歯の健康維持にもつながります。適度な硬さのフードを噛むことで、歯垢の除去や歯肉のマッサージ効果が期待できるでしょう。

小麦入りドッグフードのデメリット

小麦入りドッグフードには多くのメリットがある一方で、デメリットや注意点もいくつかあります。

アレルギーのリスクがある

小麦は、犬のアレルギーの原因となる可能性があります。

ただし、すべての犬が小麦アレルギーをもっているわけではなく、全体の10%程度といわれています。

アレルギー症状はさまざまなため、愛犬をよく観察することが非常に大切です。

アレルギーの主な症状
  • 皮膚のかゆみや発赤
  • 腹部やパッド間の炎症
  • 耳の炎症
  • 下痢や嘔吐などの消化器症状

これらの症状が見られた場合は、獣医師に相談し、適切な対応を取ることが重要です。

動物病院では、原因を特定するためにアレルギー検査や除去食試験などを行う場合もあります。

グルテン不耐症を起こすおそれがある

アイリッシュセッターなどの一部の犬は、小麦に含まれるグルテンに対して不耐症を示し、以下のような消化器系の症状を引き起こす場合があります。

  • 慢性的な下痢
  • 頻繁な嘔吐
  • 腹部の不快感や膨満感

グルテン不耐症が心配な場合は、グルテンを含む麦類を原材料として使用していない食事(グルテンフリーのドッグフード)を取り入れるのがおすすめです。

また、グルテン以外の穀類に対してアレルギーをもつ場合は、穀類全般を含まないグレインフリーのドッグフードを選ぶとよいでしょう。

グルテンフリーとグレインフリーの違い

グルテンとは、小麦やライ麦などに含まれる、粘着性と弾性の性質をもつ成分です。グルテニンとグリアジンというタンパク質が、水を吸収して網目状に結合することでグルテンになります。グルテンフリーは、このグルテンを使用していないドッグフードのことです。

一方でグレインフリーは、穀物に分類されるイネ科植物の種子を使用していないという意味です。小麦やライ麦だけではなく、こめやトウモロコシ、大麦、オーツ麦、そばなどをすべて使用していません。

血糖値に影響を与える

小麦は、比較的高い糖質含有量をもつため、糖尿病や肥満傾向のある犬は血糖値への影響が懸念されます。

以下のような犬は、獣医師と相談のうえ、低糖質・高タンパク質のフードを選択するとよいでしょう。

  • 高齢犬
  • 運動量の少ない犬
  • 肥満傾向にある犬
  • 糖尿病の既往歴がある犬

栄養バランスが偏りやすい

低品質で低価格なドッグフードは、小麦が主原料として過剰に使用されているものも少なくありません。これにより、タンパク質やほかの重要な栄養素が不足するおそれがあります。

昔は肉食動物だった犬は、長い年月をかけて人間の伴侶となり、肉食性の強い雑食の食生活へと変化しました。

そのため、高品質なタンパク質源を主原料とするフードを選ぶことも重要です。

小麦などの穀物は、バランスの取れた栄養補給のために適量含まれているべきですが、主原料として使用するべきではありません。

小麦入りドッグフードを選ぶ際の注意点6つ

小麦入りのドッグフードを選ぶときや、愛犬に与えるときに気をつけたいポイントを解説します。

品質を確認する

高品質な小麦入りドッグフードを選ぶことが重要です。原材料の成分を確認し、小麦が主原料ではなく、良質なタンパク質源が上位に記載されているものを選びましょう。

また、人工添加物や着色料、保存料の少ないもの・不使用の製品を選んでください。

愛犬の個体差を考慮する

すべての犬に同じフードが適しているわけではありません。年齢、体格、活動量、健康状態などを考慮して、適切なフードを選択することが大切です。

たとえば、成長期の子犬、妊娠中・授乳中の母犬、高齢犬などは、それぞれ異なる栄養要求があります。わからないときは獣医師に相談することをおすすめします。

アレルギー症状を観察する

小麦入りフードを与える場合、アレルギー症状や消化器系のトラブルがあらわれないかを注意深く観察しましょう。

新しいフードを導入したら、最初の1か月、少なくとも1週間~10日程度は注意が必要です。症状が見られた場合は、すぐに獣医師に相談してください。

段階的に導入する

新しいフードに切り替えるときは、1〜2週間かけて徐々に新しいフードの割合を増やしていきましょう。急激な変更は避けるようにしてください。

段階的な導入により、消化器系への負担を軽減し、スムーズな切り替えが可能です。また、体調を崩したときも回復しやすくなります。

バランスの取れた食事を与える

小麦入りフードを選ぶ場合でも、ほかの栄養素、とくに良質なタンパク質源が十分に含まれているかを確認しましょう。

また、フードだけではなく、適度な水分摂取も重要です。新鮮な水を常に用意し、定期的に取り替えてください。

定期的に健康チェックを行う

年に1~2回は獣医師による健康診断を受け、体重管理や栄養状態のチェックを行いましょう。

自宅では、食欲の有無、体重、排便排尿の状態などを10段階で評価し、日記をつけるのがおすすめです。

気になること、変更したことなど、ちょっとしたことをメモしておくと愛犬こ異変に気づきやすくなります。

おすすめの小麦入りドッグフード

ヒルズ サイエンス・ダイエット 小型犬用 アダルトライト 1~6歳 肥満傾向の成犬用 チキン

ポイント:
ダイエット、低脂質、成犬

「ヒルズ サイエンス・ダイエット 小型犬用 アダルトライト 1~6歳 肥満傾向の成犬用 チキン」は、1歳から6歳までの小型犬で肥満傾向の成犬に適した総合栄養食です。脂肪分とカロリーを抑えたことで、健康的な体重管理をサポートします。また、高品質な自然素材を使用し、消化に良く、食物繊維で満腹感を維持。さらに、カルシウムやグルコサミン、コンドロイチン硫酸を含み、健康な骨や関節をサポートします。

また、ビタミンD・Cを配合し、歯と歯ぐきの健康も維持します。主な原材料は、鶏肉、小麦粉、米、チキンエキス、植物性油脂、ビタミン類、ミネラル類などです。粒のサイズは小粒で、小型犬でも食べやすい大きさになっています。愛犬の体重が気になる飼い主さんにおすすめのドッグフードです。

まとめ

多くの犬にとって、適切に加工された小麦は問題なく消化され、栄養源となります。しかし、一部の犬にはアレルギーや不耐症のリスクがあることも事実です。

愛犬の健康を第一に考え、個々の犬の特性や健康状態に合わせてフードを選択することがもっとも重要です。小麦入りフードを選ぶ場合は高品質なものを選び、愛犬の反応を注意深く観察しましょう。

また、フードの選択は一度決めたら終わりではなく、愛犬のライフステージや健康状態の変化に応じて適宜見直す必要があります。

愛犬のごはん選びは、飼い主さんにとって重要な責任の一つです。疑問や不安がある場合は、必ず獣医師に相談しましょう。

ABOUT ME
岡田 京子
北里大学 獣医畜産学部 獣医学科2008年卒業。金沢医科大学 大学院医学研究科にて医学博士号取得。
往診専門動物病院獣医師として活動し、2021年に石川県初の往診専門動物病院である「るる動物病院」を開業しました。
オンライン診療や相談に積極的に取り組む傍ら、地域猫に対しての活動も行っています。
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