執筆者:大熊 真穂
獣医師。現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経 ...プロフィールをもっと見る
最近では「プレミアムドッグフード」とパッケージに記載されているフードをよく見かけるようになりました。
高品質なイメージがあるプレミアムドッグフードですが、そもそもどのようなフードなのかをご存じでしょうか。
この記事では、愛犬に合ったドッグフード選びの参考となるように、プレミアムドッグフードの特徴やメリットとデメリットを解説します。
プレミアムドッグフードとは
実は、プレミアムドッグフードの表記には法律などによる明確な規定がなく、栄養や成分の基準もありません。
ペットフードメーカーの判断で「原材料や栄養価、安全性にこだわった高品質なフード」であることが消費者にわかりやすいように、プレミアムドッグフードと記載しているのです。
つまり、どのような内容のフードであっても、メーカーの判断でプレミアムドッグフードを名乗ることができます。
プレミアムドッグフードの特徴
ペットフードは、人間の健康志向に伴って進化してきました。
近年では、ペットに対しても安全で信頼性の高いペットフードを与えたいと考える人が増えたことから、多くのプレミアムペットフードが販売されるようになりました。
メーカーによって違いはありますが、プレミアムドッグフードの主な特徴は以下の4つです。
- 品質の高い原材料を使用
- 原材料の種類を限定している(アレルギー対策など)
- 栄養価が豊富
- 安全性に配慮
それぞれ詳しく解説します。
品質の高い原材料を使用
日本では「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」が2009年に施行されましたが、アメリカやヨーロッパのような、人間の食品の安全基準と同等の規定はいまだにありません。
しかし、日本でも海外と同様に、人間の食品レベルの安全基準をクリアしたプレミアムドッグフードが増えています。
また、以下のように原材料の品質にこだわって作られているフードもあります。
- 冷凍の肉や野菜ではなくを新鮮な生の素材を使用
- 国産素材のみ使用
- 自然放牧の牛や羊、鶏などの肉を使用
- 自然放牧で牧草のみを与えて育てた家畜の肉を使用
- 捕れてから5日以内の新鮮な魚を加工するなど鮮度にこだわった原材料を使用
原材料の種類を限定している
プレミアムドッグフードには、アレルギー対策として原材料の種類、とくにたんぱく源の種類を限定しているフードや、グレインフリー(穀物不使用)のフードがあります。
原材料を限定したフードが増えた理由は、穀物アレルギーや食物不耐性(※1)といった食物有害反応を避けるなど、愛犬の身体にあったフードを求める人が増えているからです。
※1 食物不耐性:食べ物が原因で起こる有害反応の一つで、主な症状は慢性的な炎症反応
栄養価が高い
アメリカで作られたAAFCO(Association of American Feed Control Officials;米国飼料検査官協会)のペットフードの栄養基準は、日本を含め国際的な基準として確立されています。
この基準をもとにして、犬の食性に合った高たんぱくのドッグフードや、腸内環境を整える乳酸菌を添加したドッグフードなどが製造され、プレミアムドッグフードとして販売されています。
安全性に配慮
プレミアムドッグフードは、衛生管理やフードの内容の安全性にこだわって作られていることも特徴です。
具体的には、以下のような点に配慮して作られています。
- 人間の食品と同様の衛生管理を行っている工場で生産される
- 自社工場で加工の開始から終了するまでの全データを管理して作られる
- 合成の酸化防止剤や香料・着色料を使用せず、自然素材にこだわって生産されている
各フードメーカーが独自の厳しい基準やこだわりをもち、プレミアムドッグフードを製造しています。
プレミアムドッグフードのメリット
原材料や栄養価、安全性にこだわったプレミアムドッグフードは、愛犬の健康管理に気をつけている方に、安心して与えられるドッグフードとして支持されています。
プレミアムドッグフードを与えることで、主に以下のようなメリットが期待できます。
- 嗜好性が高いフードが多く、愛犬の食べムラが改善される
- 栄養価が高く、皮膚や被毛の状態が良くなる
- 便の状態が良くなる
プレミアムドッグフードのデメリット
一方で、プレミアムドッグフードには注意点もいくつかあります。
- プレミアムドッグフードと表記されていても内容が伴っていない場合がある
- 価格が高い
- 必ずしも愛犬の身体に合うとは限らない
それぞれ詳しく解説します。
プレミアムドッグフードと表記されていても内容が伴っていない場合がある
先述したとおり、プレミアムドッグフードの明確な基準はなく、メーカーの判断に委ねられています。
そのため「プレミアムドッグフード=高品質なフード」とは限りません。
ドッグフードのパッケージだけで判断するのではなく、原材料の内容やフードメーカーのホームページで商品の情報を確認したうえで選ぶことが大切です。
価格が高い
プレミアムドッグフードは、原材料の品質の高さや衛生管理に配慮しているため、一般的なフードよりと比較するとかなり価格が高い傾向があります。
経済的な負担が大きく、継続できなくなるおそれもあるでしょう。
必ずしも愛犬の身体に合うとは限らない
身体に合うドッグフードとは、愛犬にとって消化や吸収が良いフードのことです。
プレミアムドッグフードが必ずしも消化吸収が良いフードとは限りません。
プレミアムドッグフードとそれ以外のフードはどちらがおすすめ?
プレミアムドッグフードは、品質が高く健康維持に配慮されているうえ、愛犬が喜んで食べる姿が目に浮かぶような魅力的な商品がたくさんあります。
しかしその一方で、プレミアムドッグフードとは名ばかりのフードも存在します。
そのため「プレミアムドッグフードだから大丈夫」と何も見ないでドッグフードを選ぶことはおすすめできません。
先述したとおり、フードのラベル(とくに原材料と添加物の有無)や、メーカーのホームページなどを確認し、愛犬の身体にあったドッグフードを選ぶことが大切です。
フードが愛犬の身体に合っているかのチェックポイント
愛犬の身体にあったフードか否かは便の状態で、栄養状態が充実しているかどうかは被毛や皮膚の状態でチェックします。
- ティッシュでつまんでも崩れず、地面もほとんど汚れない固さ
- 便の回数は食事の回数プラス1回くらいの回数で、量は少なめ
- 慢性的な下痢や軟便などの症状がない
- 被毛に艶があり、毛量が適切
- 痒みや赤み、湿疹、外耳炎などのトラブルが少ない
なお、どのようなフードでも、今まで食べていたフードから一度に新しいフードに変えると、下痢や嘔吐などの症状を引き起こすおそれがあります。
ドッグフードを変える際は、1週間から10日ほど時間をかけて少しずつ切り替えていきましょう。
プレミアムドッグフードのパッケージでよく見る言葉の意味
ここでは、プレミアムドッグフードのパッケージによく記載されている以下の言葉の意味を紹介します。
- ナチュラルフード
- オーガニックフード
- ヒューマングレード
- グレインフリー
- グルテンフリー
どれも混同しやすい言葉ですが、意味を知っておくと、愛犬に合ったフード選びがしやすくなるでしょう。
ナチュラルフード
ドライフードは、長期保存を前提に作られており、油脂類が酸化しやすい特徴があるため、酸化防止のための添加物が必要です。
ナチュラルフードとは、自然由来の酸化防止剤を使用し、人工着色料や人工香料などの人工的な食品添加物が使われていないフードを指します。
なお、ナチュラルの定義はあいまいですが、ほかにも「加工工程が最小限であること」という定義があります。
※参考:ペット栄養学会誌 Vol.20 No.2 October2017 ナチュラル・オーガニックフードの誤解 米国におけるペットフード業界の傾向と規制の実態 岡田 ゆう紀
オーガニックフード
オーガニックは「有機」という意味で、オーガニックフードは原材料にオーガニック製法(有機栽培)で育てられた農産物や家畜を使用しているフードを表します。
オーガニック製法とは、農薬や化学肥料に頼らない、自然の恵みを生かした農林水産業や加工方法です。
商品にオーガニックと記載するためには、国や国際的なルールに従って定められた基準を満たしたうえで、第三者の登録認定機関から承認される必要があります。
ヒューマングレード
人間の食品と同じレベルの安全基準をクリアしている原材料でつくられたフードです。
グレインフリー
グレインは「穀物」、フリーは「不使用」を意味します。ペットフードにおけるグレインフリー(穀物不使用)とは、イネ科の植物である大麦、トウモロコシ、米、小麦などを使用しないという考え方が一般的です。
遺伝子組み換え作物の代表ともいえる大豆を用いないことも、グレインフリーの条件となっている場合があります。
参考:ペット栄養学会誌 22巻2号 2019年 ペットフードで使用される主なたんぱく質源原料(中編) 迫田 順哉
グルテンフリー
グルテンフリーには、小麦不使用、グルテン不使用という意味があります。
グルテンは小麦に多く含まれる粘着性のあるたんぱく質です。ペットフードには安価なたんぱく源として使用され、ドライフードを粒状に固める働きがあります。
おすすめのプレミアムドッグフード4選
【まとめ】プレミアムドッグフードの名称にこだわらず愛犬に合ったフードを見つけよう
プレミアムドッグフードとは、一般的に原材料や栄養価、安全性にこだわった高品質なフードです。人間の食品と同様の衛生管理や基準で作られたフードや、犬の食性に合わせた高たんぱくのフードなどがあります。
しかし、プレミアムフードと表示するための明確な基準はなく、プレミアムドッグフードが必ずしも愛犬の身体に合うとは限りません。
プレミアムドッグフードという名前で選ぶのではなく、愛犬の便の状態が良く、被毛や皮膚にトラブルが起こらないドッグフードや、飼い主さま自身が安心して愛犬に与えられるドッグフードを選ぶことがもっとも大切です。
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