ドッグフード

【獣医師執筆】グレインフリーのドッグフードとは?メリット・デメリットや注意点を解説

執筆者:葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師 ...プロフィールをもっと見る

最近よく耳にする「グレインフリー」という言葉の意味をご存じでしょうか。グレインとは穀物のことで、グレインフリーは穀物の入っていないフードを指します。

犬に良いとされているグレインフリーのドッグフードですが、具体的にどのような効果やメリットがあるのかはわからない飼い主さんもいるのではないでしょうか。

本記事では、グレインフリーのドッグフードの特徴や選び方のポイントについて解説します。また、グレインフリーについて理解するために知っておきたい、犬本来の食性や食べ物が与える影響なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

グレインフリーとは

まず、グレインフリーの意味や、混同されやすいグルテンフリーとの違いについて解説します。

グレインフリーは穀物を含まないドッグフード

グレインは穀物(穀類)を意味し、グレインフリーとは穀物不使用のドッグフードのことです。犬本来の食性にもとづいて、ドッグフードの組成に注目し、穀物の割合を重視して作られています。

一般的なドッグフードの原料には、たんぱく質、野菜などの食物繊維、そして米や麦などの穀物が多く含まれています。栄養価が高く糖も含まれる穀物は、犬にとっての優秀なエネルギー源です。しかし、本来肉食である犬が穀物を摂取しすぎると、消化器に負担がかかるおそれがあります。

実際には充分に加熱調理をした状態であれば負担はかかりづらいとされていますが、犬本来の食性を考慮して、穀物を含まないグレインフリーのドッグフードが近年増えています。

グルテンフリーとの違い

グルテンとは、小麦や大麦、ライ麦などの麦類から生成されるたんぱく質の一種です。

グレインが穀物全般を指すのに対して、グルテンは特定の穀物のたんぱく質を指します。

グレインフリーのドッグフードはグルテン不使用のため、グルテンフリーでもあるといえます。

グレインフリードッグフードのメリット・デメリット

穀物不使用である点が特徴のグレインフリーですが、与える際には注意点もあります。

グレインフリードッグフードのメリットとデメリットをみていきましょう。

グレインフリードッグフードのメリット

グレインフリーの大きなメリットは、穀物アレルギーを避けられる点です。

米や小麦に対して、アレルゲンと認識する犬は一定数存在します。対象となる穀物のアレルギーがある犬にとって、アレルゲンが含まれないドッグフードであれば、アレルギー反応が出にくくなるでしょう。

なお、エンドウ豆や大豆などの豆類に対してアレルギー反応を示すケースは少なく、グレインフリーのドッグフードには原料として豆類を使用しているものが多くあります。

グレインフリードッグフードのデメリット

グレインフリーのドッグフードでたんぱく質が多い割合のごはんを日常的に摂取すると、腎臓に負担をかけてしまうおそれがあります。

また、肉食傾向のごはんになると尿の性状が変化し、pHが傾くことで、犬の体質によっては尿路結石の発生につながる危険性があります。

腎機能が弱っている犬や、腎疾患をもっている犬は、グレインフリードッグフードの与え方に注意しなければなりません。

グレインフリーのドッグフードを与えるときの注意点

前述したとおり、高齢の犬や腎不全の犬は、たんぱく質を多く摂取することで腎臓に負担がかかってしまう危険性があります。グレインフリーのドッグフードにはたんぱく質が多く含まれているため、過剰摂取には注意が必要です。

また、グレインフリーであるから「良いフード」というわけではありません。グレインフリーでも、適度な炭水化物や食物繊維を含んでいる、バランスの良いフードを選びましょう。

とくに、ヒューマングレードと呼ばれる製造工程や素材の品質にこだわったドッグフードは、安全性と栄養素が高いといわれています。

【獣医師推奨】おすすめのグレインフリードッグフード

高品質で安心して与えられる、おすすめのグレインフリードッグフードを紹介します。愛犬が持病を抱えている場合は、かかりつけの獣医師にグレインフリーのドッグフードを食べても大丈夫かどうかを確認してから与えましょう。

ソルビダ グレインフリー ターキー 室内飼育全年齢対応

ポイント:
子犬、成犬、シニア、グレインフリー

「ソルビダ グレインフリーターキー 室内飼育全年齢対応」は、高品質なオーガニックターキー、厳選された野菜やフルーツなど、新鮮なオーガニック原材料をたっぷりと使用し、理想的な栄養がバランスよく配合された、室内飼育全年齢対応のドッグフードです。

チキンアレルギーに配慮し、主原料はターキーです。また、食物アレルギーや穀物類の消化が苦手な愛犬に配慮し、穀物類が一切使用されていません(グレインフリー)。穀物類の代わりに、栄養価が高く消化性に優れた豆類を使用することで、効率的な栄養の吸収を可能にしています。

セレクトバランスグレインフリー アダルト/1才以上の成犬用 チキン

ポイント:
成犬、皮膚ケア、グレインフリー

「セレクトバランス グレインフリー アダルト/1才以上の成犬用 チキン」は、1歳以上の成犬の健康維持に必要な栄養をバランスよく含んだドッグフードです。原材料の1番目には、愛犬の健康な筋肉と体を維持するために良質なチキンを使用しています。

そのほか、心臓の健康維持を助けるタウリン、歯と骨の健康維持に必要なカルシウムとリン、関節の健康維持をサポートするグルコサミンとコンドロイチンなどが配合されています。一方で、穀類アレルギーへの配慮から、原材料に穀類は使用されていません(グレインフリー)。

犬の食性について

犬本来の食性について知っておくと、グレインフリーを与える意味をより深く理解できます。

自分がおいしいと感じるものを愛犬とも共有したいと願う飼い主さんは多いでしょう。おいしさを共有したり、おいしいものを嬉しそうに食べる姿を見たりできれば、幸せを感じられます。

しかし、犬と人間では必要な栄養素や体の仕組みが異なるため、まったく同じものを食べることはできません。愛犬の健康を保つためにも、犬の食性について把握しておきましょう。

犬の祖先はオオカミ

犬は生物学的な分類では、食肉目イヌ科イヌ属です。

どのような犬も、祖先を辿るとオオカミに行きつくとされています。しかし、オオカミと犬では食性が異なります。

オオカミは肉食獣で、自分で捕食をしますが、犬は雑食に近い生き物です。飼い主さんから与えられたドッグフードを食べます。野良犬の子たちは自分で捕食をするものの、オオカミとは異なる食性をもちます。

本来は肉食でしたが、家畜化されたことにより、人間の生活に合わせるために食生活も多様化したようです。そのため、犬は「限りなく雑食性に近い肉食」と表現されることもあります。

なお、犬の生物学的な分類に近いグループの動物としては、ジャッカルやコヨーテ、キツネなどが挙げられます。

犬に野菜は必要?

もともと肉食だった犬は、本来であれば野菜は不要です。しかし、野菜を食べることで栄養素や水分を効率良く摂取できるメリットがあります。

とくに、食物繊維には腸運動を促進する働きがあるとされています。

そのため、ほとんどのドッグフードに、野菜そのものや野菜がもつミネラルなどの栄養素が含まれています。

犬の祖先であるオオカミも、野菜の成分を摂取していました。

オオカミが捕食するのは草食動物であるため、肉だけではなく草食動物の摂食した野菜や草を一緒に食べていたようです。

食べ物が与える犬への影響

ここでは、食べ物によって起こりうるトラブルについて解説します。

最近では「より良いドッグフードを与えるべき」という考えが広がっていますが、食べ物によって健康トラブルが起こるケースは少なくありません。

毒物などを口にしなければ、一度の摂取で致命的なトラブルに発展する危険性は低いといえます。しかし、日常的に口にするドッグフードが愛犬の体質に合っていないと、健康を大きく損なうおそれがあるため注意が必要です。

体格づくりでのトラブル

大きな骨格を維持する必要がある中型~大型犬は、十分なたんぱく質を取らないと筋肉量を維持できません。運動量の多いスポーツドッグも同様です。

一般的に、ドッグフードに表記されたとおりに与えれば、標準的なたんぱく含有量であれば問題のない体格に成長できます。

しかし、中型~大型犬やスポーツドッグの場合、必要とする筋肉量によっては、追加でたんぱく質を摂取するか、たんぱく含有量が多いドッグフードを与えなければなりません。

また、腎疾患や腎機能が低下している犬は、たんぱく質の摂取を控えて腎臓への負担を軽減しますが、腎疾患用の療法食を日常的に摂取していると筋肉量が減少してしまいます。そのため、筋肉量を増やすためのサプリメントなどを用いるケースも多くあります。

消化器トラブル

たんぱく含有量や食物繊維の量、脂肪量などによっては、消化器に負担がかかり、便の状態が悪化することがあります。

個体によって、消化機能の状態はさまざまです。たんぱく含有量が多く食物繊維が少ないドッグフードでも問題のない犬もいますが、個体によっては下痢や軟便、嘔吐につながるおそれがあるため注意しましょう。

とくに、ドッグフードを切り替えたときは、消化器症状の有無をよく観察することが大切です。下痢や嘔吐などが続く場合は早めに受診し、獣医師の指示に従ってください。

疾患による禁忌

疾患によって、特定の栄養素の摂取を控えなければならない場合や、療法食しか食べられない場合があります。

たとえば、尿路結石の場合、結石の原因となり得るリンやマグネシウム、カルシウムなどのミネラルは控えなければなりません。

また、消化器疾患がある場合、脂質を制限されていたり、食物繊維を多く含む療法食を指定されていたりするケースがあります。腎疾患の場合は、たんぱく質を控えることが必要です。

おいしいものを食べさせてあげたくて、こうした制限を無視したくなることもあるかもしれません。

しかし、とくに療法食を食べている犬にとって、指定されているドッグフードは健康維持をするために必要不可欠です。指定されたドッグフードのなかから、愛犬に合ったものを選択するように心がけましょう。

【まとめ】グレインフリーのメリット・デメリットを知って上手に取り入れよう

グレインフリーのドッグフードのメリット・デメリットや、与える際の注意点について解説しました。

穀物を含まないグレインフリーは、アレルギー対策につながる点が大きなメリットです。一方で、たんぱく質を多く含むため、犬の体質によっては腎臓に負担をかけてしまうおそれがあります。

より良いごはんを選んであげることは飼い主さんの責任です。しかし、グレインフリーのドッグフードが必ずしも良いごはんとは限りません。

人気が高まっているという理由だけで選ぶのではなく、愛犬の健康状態や体質に応じて取り入れるかどうかを検討しましょう。グレインフリーのドッグフードを与えてもよいか不安であれば、かかりつけの獣医師に相談してみてください。

ABOUT ME
葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。
獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。
開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。
皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、得意分野とさせていただいています。
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