病気・ケア

犬に人の食べ物を食べさせてもよい?与え方のポイントや注意点

執筆者:大熊 真穂
獣医師。現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経 ...プロフィールをもっと見る

大好きな愛犬に、手作りのおやつやお食事を作ってあげたいと思ったことはありませんか?
しかし、私たち人間の身体には栄養となる食べ物であっても、犬に与えると危険を及ぼすものもあります。
また、犬に与えてよい食材であっても、与え方には工夫が必要です。
この記事では、犬に人の食べ物を食べさせるときの工夫や注意点についてまとめました。
ぜひ、手作りのおやつやお食事を愛犬に与える際の参考にしてください。

犬の身体と味覚について知ろう!

犬は、肉食動物に近い雑食動物です。
そのため、犬の歯は雑食動物である人間のように食べ物を咀嚼(そしゃく)するための歯ではなく、肉を引き裂いて丸のみするための歯と、獲物を捕食する際にある程度食いだめができる大きな胃が特徴です。

犬の唾液中には糖質を分解するアミラーゼがほとんど含まれておらず、腸は短く、たんぱく質と脂質を消化するのに向いています。

また、犬は基本的には早食い・丸のみであるため、食べ物の味を楽しんでいるとは言えませんが、味覚は甘味・塩味・酸味を感じることができ、とくに甘いものを好む傾向があります。
しかし、味覚は人間の12倍悪いと言われています。

犬に与えてよい食べ物は?

犬に与えてよい食材で、身近なものをまとめました。

肉類

肉食動物に近い犬にとって、良質なタンパク源は非常に重要です。
鶏肉、豚肉、牛肉をはじめ、馬肉、鹿肉、羊肉も犬に与えてよい食材ですが、豚肉や野生の鹿の肉は寄生虫がいる可能性があるため、必ず加熱してから与えましょう
また、幼犬やシニア犬、そして今まで加熱したものやドライフードを与えていた犬に、いきなり生肉を与えると、下痢や嘔吐などの消化器症状がでるおそれがあるため注意が必要です。

砂肝、ハツ、鶏や豚・牛のレバーなどの内臓も犬に与えて良い食材です。
ただし、レバーは肝臓に蓄積するビタミンAが多く、過剰摂取すると中毒を起こす危険性があります。さらにリンを多量に含むため、腎臓疾患を抱えている犬に与える際には注意が必要です。
内臓は、メインのタンパク源や毎日のおやつとしてではなく、しっかり加熱して補助食材として与えてください。おやつとして与える場合は、毎日ではなく間隔をあけて与えるようにしましょう。

おすすめの食材

●鶏ムネ肉、ささみ
鶏肉は、豚肉や牛肉に比べて必須アミノ酸のバランスが良く、肉の間に脂質がほとんどありません。皮を取り除けば、脂質を抑えて純粋なタンパク質源として利用できる食材です。
とくにささみは、高たんぱく低脂肪で、肉質が柔らかく消化しやすいためおすすめです。

●馬肉
高たんぱく低脂肪で、鉄分や亜鉛を多く含みます。身体を冷やす作用が強く、筋肉や関節の腫れなどに効果があると言われています。

●鶏レバー
ビタミンAと鉄がとくに多く、ビタミンB₁、B₂、Cも豊富な食材です。身体を温める効果があります。

タラやサケ、マグロ、アジ、タイ、サンマなどの魚は、肉と同じように良質なタンパク源として犬に与えることができる食材です。
新鮮なものを選んで、骨は取り除いて与えましょう

おすすめの食材

●タラ
水分が多く、タンパク質をほどよく含み、低脂質で消化が良い食材です。
グルタミン酸やイノシン酸が多くうまみが強い魚で、減量中や高齢犬の食事にも適しています。

卵・乳製品

卵は栄養価が高く、消化にも優れている良質なタンパク源です。
卵黄はタンパク質の他、ビタミンA、D、鉄が豊富で、ビタミンC以外のすべてのビタミンを含み、卵白は脂質がほとんどなく低カロリーでビタミンB₁を含みます。
与え方は消化のよい半熟卵がおすすめです。

チーズやヨーグルトも犬に与えることができますが、ヨーグルトは糖質、チーズは脂質やナトリウムの量が多いものがあります。
ヨーグルトは無糖のもの、チーズは塩分の少ないカッテージチーズを選びましょう。

野菜

犬は、野菜や果物などの繊維質が多い食べ物の消化吸収が苦手です。
与える際はやわらかく煮る、細かく刻む、すりおろすなど消化しやすいように工夫しましょう。

キャベツ、白菜、小松菜、ブロッコリー、トマト(完熟した実のみ、ヘタは取りましょう)
キュウリ、かぼちゃ、大根、ニンジン、春菊、カブ、ごぼう、レタス、チンゲン菜、アスパラガス、セロリ、ピーマン、かぼちゃなど、犬に与えられる野菜は多く存在します。

おすすめの食材

●かぼちゃ
身体を温める効果がある食材で、βカロテン、カリウム、水溶性の食物繊維、そして豊富なビタミンE、ビタミンCが含まれています。
また、下痢の時も便秘の時も使えて、栄養価が高い優秀な野菜です。

●ブロッコリー
野菜の中では比較的タンパク質も多く、スルフォラファンというフィトケミカル(植物に含まれる化合物のことです)が、身体の抗酸化力や解毒力を高めます。ビタミンC、βカロテン、ビタミンB群、カルシウム、カリウムが豊富です。
不溶性食物繊維が多く、与えすぎると下痢になるおそれがあるため、与える量に注意しましょう。

果物

ビタミンやミネラル、抗酸化物質も豊富ですが、繊維質が多いため犬が消化しやすいように与え方を工夫する必要があります。

犬が好む甘味が含まれているため、要求されるままに与えてしまうとすぐに肥満になってしまいます。リンゴなどの固い果物は、大きさによっては食道に詰まる危険性があるため、細かく切ってから与えましょう。

また、新鮮な果物は食物アレルギーを起こすことがあるので注意が必要です。
バナナ、スイカ、リンゴ、ブルーベリー、梨、イチゴは犬に与えることができます。

おすすめの食材

●リンゴ
整腸作用のある水溶性食物繊維のペクチンが豊富で、効率の良いエネルギー源になるブドウ糖や果糖を多く含みます。
おすすめの与え方は、皮ごとすりおろすことです。ただし、皮は残留農薬が多いため、無農薬栽培以外のリンゴは皮をむいてからすりおろす方が安心です。

その他

穀類、豆類、イモ類は炭水化物源となり、糖質や食物繊維を多く含みます。
摂りすぎると肥満傾向になるので量に注意しましょう

おすすめの食材

●サツマイモ
カリウムと不溶性食物繊維が多く、βカロテン、ビタミンB₁、B₂、C、Eを含む食材です。
栄養価が高くおすすめですが、シュウ酸が多く、カロリーが高いため、与えすぎには注意しましょう。

人間の食べ物を犬に与える際に注意することは?

このように、犬に与えてもよい食材は非常に多く存在します。しかし、間違った与え方をすると、愛犬の健康を害してしまうおそれもあります。
人間の食べ物を犬に与える際には、以下の2つの点に気を付けましょう。

メインの食事にする際は栄養のバランスを考える

人間の食材を調理して、愛犬のメインの食事にする際は、栄養のバランスを考える必要があります。「何となく体によさそうなものを集めたレシピ」では、必要な栄養素が不足する可能性が高いです。動物栄養学をきちんと学んでから、手作り食に切り替えることをおすすめします。

少量から試す、連日同じものを大量に与えない

食物アレルギーや食物不耐性の問題があるため、今まで与えたことがない食材を与える場合は、ほんの少量から与えて、体調の変化が起きないか様子を見ながら少しずつ量を増やしていきましょう。
また、何度か与えてとくに問題がない食材も、連日同じものを大量に与えないように注意してください。

食物アレルギーと食物不耐性について

●食物アレルギー
食べてすぐにあらわれる急性の症状で、呼吸困難、顔の腫れや痒み、湿疹、嘔吐などが生じます。

●食物不耐性
低グレードの慢性的なダメージで、長い時間をかけて蓄積した結果症状として現れるため、わかりづらいのが特徴です。症状は慢性的な消化器の炎症や、慢性的な皮膚の炎症・痒みなどです。
慣れ親しんだ食材が原因となるため、見過ごされることが多いですが、食物アレルギーの発生頻度よりも10倍以上多いと言われています。

<食物不耐性の原因となる代表的な食品>

・コーン
・大豆
・小麦

これら3つの食材は、市販されているほとんどのドッグフードに入っています。
動物病院で処方される療法食には、これらの3つの食材が含まれていないドッグフードがあり、
慢性の消化器症状や皮膚疾患の犬に処方することがあります。

一日にどれぐらいの量を与えても大丈夫?

メインの食事として与える場合は、諸説ありますが、タンパク質が8割(そのうち内臓は2割、ただしレバーは肉全体の5%以内に)、野菜や果物などは2割以内のバランスで与えることがおすすめです。

おやつとして与える場合は、一日の食事の重量の10%以内にしましょう。
規定量最大限の量を与えるのではなく、少量ずつ、そして数種類の食材をローテーションして与えることをおすすめします。

犬に人間の食べ物を与えるメリットとデメリット

総合栄養食として販売されているドッグフードを与えていれば、必要最低限の栄養は摂取できます。
では、犬に人間の食べ物を与えるメリット、そしてデメリットはなんでしょうか?

<人間の食べ物を与えるメリット>

・愛犬が喜んで食べる(生活の質が上がる)
・製造工程が明確(飼い主様が調理されるため)
・野菜などをおやつ代わりに与えることでカロリーや脂質を減らし、ダイエットに役立てる
・食事を改善することで慢性疾患が改善するケースもある

<人間の食べ物を与えるデメリット>

・栄養のバランスを取るのが難しいため、犬が栄養不足に陥るおそれがある
・愛犬がドッグフードを食べなくなることがある
・食物アレルギーや食物不耐性の問題が発生するケースがある

何事にもメリットとデメリットは存在します。デメリットをなるべく減らし、メリットを増やすためには、ドッグフードも手作りフードも両方食べさせるようにするのが一番です。

動物栄養学のセミナーでも、「手作り食メインが理想ですが、災害時などに備えてドッグフードを与えることも大切です」と学びました。

この記事が、少しでも参考になれば幸いです。

ABOUT ME
大熊 真穂
獣医師。現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら 専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。
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