執筆者:葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師 ...プロフィールをもっと見る
冬になると活躍する野菜の一つに「大根」が挙げられます。
おでんやお鍋など、やわらかくて味のしみ込んだ大根が好きな方は多いでしょう。
そして、愛するわんちゃんとおいしいものを共有したいと思う飼い主さんもいるはずです。
では、わんちゃんも人間と同じように大根を食べて問題ないのでしょうか。
わんちゃんは大根を食べられる
結論から言うと、わんちゃんは大根を食べることができます。
ただし、わんちゃんの消化機能は私たち人間とは異なるため、栄養吸収も同じようにはいきません。
大根を食べるのは問題ありませんが、栄養吸収を目的とするのではなく、あくまでも特別な日のごちそうや、トッピングとして楽しむことをおすすめします。
基本は市販されている総合栄養食や療法食を主食とするようにしましょう。
また、すべての子でも食べられるわけではなく、持病の有無によっては、食べるのを控えなければならない場合もあります。
心配なときは、かかりつけの先生に相談してから与えるようにしましょう。
大根を食べてはいけないケース
大根の成分が、わんちゃんの健康を害してしまう場合もあります。
たとえば、いくつかの持病をすでに持っているわんちゃんの場合、大根の成分が持病を悪化させてしまう危険性があります。
消化器疾患で療法食を食べている
消化器の状態が不安定で、消化に良いフードで状態を維持している場合、食物繊維や水分の多い大根を食べることで、下痢や嘔吐などの消化器症状につながるおそれがあります。
尿結石症や腎臓疾患がある
尿の酸性やアルカリ性などの状態は、食べているものに影響されます。
野菜を食べることで、尿の状態はアルカリに傾き、結石の種類によってはできやすくなる場合もあります。
また、カリウムを含む大根により、浸透圧の変化との兼ね合いで腎臓に負担がかかる危険性があるため、腎機能が低下しているわんちゃんにもおすすめできません。
甲状腺の疾患がある
大根を含むアブラナ科の植物は、ゴイトロゲンという甲状腺の分泌を阻害する成分を含みます。
甲状腺がホルモン分泌を上手にできなくなる甲状腺機能低下症になったり、分泌されたホルモンを感知できなくなり本来甲状腺ホルモンが行っている代謝の低下が起こったりする危険性があります。
大根を食べるとこんなメリットが!
人間にも良いとされる大根ですが、わんちゃんにも健康に良い成分が多く含まれています。
わんちゃんにとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。
主な栄養成分と効果について解説します。
食物繊維
大根には豊富な食物繊維が含まれています。
便秘気味のわんちゃんや、腸運動の調節が苦手なわんちゃんは、食物繊維を摂取することで腸運動を整え、よりよい便の状態を維持できる可能性があります。
便の状態が不安定な場合は、ごはんのトッピングに、食物繊維の豊富な野菜を加えてみるとよいでしょう。
カリウム
カリウムは体内の浸透圧調節をするミネラルです。
浸透圧調節は、体内にたまった塩分を体外に一緒に出してあげることで行われます。
浸透圧調節により、血圧が正常に保たれるほか、神経伝達や筋収縮などの細胞の働きがより正常な状態に整います。
ただし、腎機能に問題があるわんちゃんの場合、カリウムの摂取量によっては、より腎臓に負担をかけてしまう危険性があるため、与える前にかかりつけの先生に相談してください。
水分
大根は豊富な食物繊維だけではなく、水分も多く含まれる点が特徴です。
お水をあまり口にしないわんちゃんには、水分を多く含むお野菜を与えると水分補給ができるためおすすめです。
大根というと冬場の野菜のイメージがありますが、好んで食べてくれるのであれば、水分補給のアイテムの一つとして、夏場もトッピングや手作りご飯に加えてあげてもよいかもしれませんね。
ビタミンC
ビタミンCはアスコルビン酸とも呼ばれる水溶性のビタミンです。
抗酸化作用と呼ばれる、細胞をストレスなどの障害から守り、若々しくいるための働きがあり、健康なわんちゃんでは体内での生成が可能です。
より元気で若々しくいるために、補充してあげるとよいでしょう。
大根のおすすめの与え方
生のままでは硬い大根はそのまま与えると消化器に負担をかけてしまう危険性があります。
きちんと加熱をして与えるようにしましょう。
ここでは、おすすめの調理方法を紹介します。
ゆでる
一番簡単な調理方法としておすすめなのがゆでる方法です。
水分を多く含む大根をゆでると、やわらかくて食べやすくなります。
ただし、やわらかいといっても、繊維質を多く含むため、消化器には負担がかかりやすいです。
細かく刻んでから、ゆでてあげましょう。
ゆでるデメリットとしては、ビタミンの一部やカリウムなどがお湯に溶けだしてしまうことが挙げられます。
過剰摂取になるのを避けたい場合は、ゆでてゆで汁を捨てることで、摂取量も減らせるでしょう。
蒸す
加熱したやわらかい大根を与えるのに、蒸すことも有効です。
ゆでる際と同じで、大きいままでは消化器への負担が考えられるため、細かく切ってから与える方法がおすすめです。
メリットはゆで汁に溶け出る栄養素が少ないことです。
ただし、ビタミンやカリウムが大根に残ったままになるため、カリウムの過剰摂取を避けたい場合は、少量にするなどの配慮が必要でしょう。
煮る
いくつかのポイントに気を付ければ、わんちゃんも煮込み料理を食べられます。
まず、人間のように味付けはしないようにしてください。
塩分や糖分の摂りすぎになるおそれがあります。
お肉の出汁の風味など、自然の風味を上手に利用しましょう。
アレルギーがなければ、鶏のささみで出汁をとったもので一緒に煮込むと、わんちゃんの好みやすい風味になるためおすすめです。
前述したカリウムの過剰摂取が気になるときは、一度湯がいた大根を鶏肉と一緒に煮込むと安心でしょう。
その場合、もちろんゆで汁は捨ててください。
スープのような状態で、普段のごはんにトッピングをしてもよいと思います。
スープ状にすることで水分補給の目的としても使えるでしょう。
完全な液体だとなめとるのが難しい高齢のわんちゃんや、体力の低下したわんちゃんは、片栗粉やくず粉などでとろみをつけてあげるのがおすすめです。
大根によるトラブルを防ぐために
健康によい成分を多く含む大根ですが、その子の体質や与え方によっては、消化器トラブルや体調不良につながってしまう危険性もあります。
トラブルを防ぐためには、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。
便の調子や体調を観察しながら与える
大根を与えることで、まず影響が出る可能性があるのは消化器です。
消化器の状態をきちんと把握することはとても大切です。
消化器の状態は、便の状態や下痢・嘔吐の有無、食欲の有無などで把握できます。
大根を与えるときに限らず、普段からおうちのわんちゃんの消化器の状態や食欲・排泄などの状態を観察する習慣をつけましょう。
大根を与えた数日で消化器の変化が見られた場合、大根を与えたことが影響している可能性があります。
適切な量とされていても、消化機能は個体差があるため、その子にとっては負担になる量であったり、大根そのものが適さない食材だったりするかもしれません。
与える量を減らす・与えるのを中止することを検討してください。
与えてもよい量や部位を守る
与えてよい量は、基本的に1日の摂取すべきカロリーの10%が目安と言われています。
しかし食物繊維や他の栄養素の摂取量の兼ね合いから、負担をかけないようにするためにも、さらに少量にとどめることをおすすめします。
大根の根の部分の目安量は以下の通りですが、便の状態や体調などによって調整していきましょう。
小型犬(~10㎏) | 10~50gくらい |
中型犬(10~25kg) | 80~100gくらい |
大型犬(25kg~) | 120g~170gくらい |
また、大根は根っこの部分も葉っぱの部分も加熱することで与えられる野菜です。
細かくしてから加熱するなど、工夫をして与えてあげるとよいでしょう。
皮の部分は加熱しても硬く、消化器に負担がかかるおそれがあるため、皮はむいてあげることをおすすめします。
おうちのわんちゃんに与えても問題ないかを確認する
おうちのわんちゃんに持病がある場合や、腎機能・甲状腺機能などに問題がある場合は、大根を与えると状態が悪化してしまう危険性があります。
飼い主さんの判断で与えるのは避け、まずはかかりつけの先生に相談しましょう。
療法食を食べているわんちゃんの場合も同様です。
治療のために療法食を食べているわんちゃんは、違うものを食べることで、安定していた状態が崩れてしまうことがあります。
より健康によくておいしいものを食べさせてあげたい気持ちはどの飼い主さんも共通だと思いますが、トラブルを防ぐためにも、その素材がおうちのわんちゃんに適しているのかどうかを判断する必要があります。
まとめ
水分補給や消化機能の調整などさまざまな健康メリットが期待できる大根ですが、与え方やわんちゃんの状態によっては、逆に悪影響を及ぼしてしまうおそれがあります。
与え方のポイントと適切な量を守りながら大根を与えて、食の楽しみの一つにしていただけたらと思います。
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