執筆者:原 京子
動物看護士、ペットショップでの生態管理、動物園飼育スタッフなどを経験 ...プロフィールをもっと見る
犬が鼻から大きな息を吐く「ため息」が見られると、何かネガティブなことがあったのではないかと心配になりますよね。
犬は、一体どのようなときにため息をつくのでしょうか。また、ため息が症状として出る病気があれば知っておきたいところです。
この記事では、犬がため息をつく理由や、注意すべき点について詳しくまとめました。
犬のため息ってどんなもの?
私たち人間は、口から「はぁー」とため息を出しますが、犬の場合は「ふーん」と鼻から出します。
口から大きく息を吐くこともありますが、これは開口呼吸によるもので、ため息ではありません。
ため息のメカニズムは、深呼吸と同じ働きがあり、酸欠状態の解消や自律神経のバランスをとるなどの意味があります。
犬がため息をつく理由
私たちがため息をつくときは、退屈なときや眠いとき・緊張したとき・落ち込んだときなどがありますが、犬は以下のときにため息をつきます。
・リラックス・満足
・疲れ・ストレス
・学習されたもの
リラックス・満足
犬は、リラックス状態や満足状態にあると、ため息をつくことがあります。このときのため息は、「ふー」と長いものが多いです。個体によって多少異なりますが、犬がリラックスや満足した状態になりやすいのは、次のようなタイミングです。
・飼い主さんとたくさん遊んだ
・ご飯を食べて満腹になった
・好きな場所でリラックスする
・飼い主さんのそばで安心している
満足するまで遊べたときや、飼い主さんのそばで安心している状態などが該当します。リラックスや満足でため息がでるのは、私たちでいう、暖かいお風呂に入ったときや、ベッドに横になったときと同様で、筋肉が緩んで緊張が溶けている状態です。このため息は、ポジティブなもののため心配する必要はありません。
疲れ・ストレス
疲労やストレスが溜まった際にも、犬はため息をつきます。「ふっ」と短いものが多く見られ、ネガティブな感情を切り替えようとしています。
疲れやストレスの状態とは、主に以下の通りです。
・動物病院など嫌な場所に出かけた
・飼い主さんに叱られた
・構ってもらえなかった
・楽しみにしていた散歩にいけなかった
・何か嫌なことがあった
・諦めなければならないことがあった
嫌な場所に出かけて疲労やストレスが溜まった・ガッカリした・落ち込んだ、などが該当します。
このようなため息をほおっておくと、さらにストレスがかかり、体調不良や病気につながるおそれもあるため、なるべく原因を突き止めて解消してあげましょう。
学習されたもの
犬は、ため息を学習して、意識的に行うこともあります。主に以下のような経験をすると、意識的にため息をしやすいです。
・たまたまため息をついたときに飼い主さんが反応した
・ため息をついたらおやつをもらえた
偶然ため息をついたら飼い主さんが反応して、構ってもらえたり、おやつをもらえたりすると、犬は「ため息をつくとよいことがある」と学習します。
そして、次から何かを要求をしたいときに、意識的にため息をつくようになります。
このときのため息は、「ふん」といったものが多いです。
ただし、飼い主さんへの要求のため息は、主従関係が乱れる原因となるため、癖がつかないよう、ときには無視をすることも必要です。
ため息をつきやすい犬種とは
犬の中には、ため息をつきやすい犬種も存在します。とくにため息が多いといわれているのは以下の3犬種です。
・パグ
・ボストンテリア
・フレンチブルドッグ
この3犬種は、生まれつき鼻腔が狭い・軟口蓋が長く垂れ下がっているなどの特徴があります。
そのため、酸素を効率よく取り込むことができず、呼吸が大きくなり、吐く息がため息のように聞こえます。
病気の可能性があるため息
犬のため息のなかには、病気が関係しているものもあるため、注意が必要です。病気が原因の場合は、呼吸が苦しいために、ため息のように聞こえます。
症状としてため息が見られる病気は、主に以下の通りです。
・鼻腔狭窄(びくうきょうさく)
・鼻詰まり
・僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)
・気管狭窄(きかんきょうさく)
・胃捻転
・フィラリア症
鼻腔狭窄(びくうきょうさく)
犬の鼻腔狭窄は、鼻腔が狭くなった状態をいいます。先天性のものが多く、ブルドッグやパグなどの短頭種に多く見られます。
ため息のほかには、鼻をグーグーと鳴らしたり、鼻水を飛ばしたりなどの症状が見られます。症状が進行すると、酸欠状態や呼吸困難になることもあるため、注意が必要です。
鼻詰まり
犬は風邪や鼻炎などで鼻が詰まると、鼻から十分に呼吸をすることができず、口から大きく呼吸をします。このときに吐く息が、ため息のように聞こえることがあります。
鼻が詰まっていると、常に開口呼吸をしていたり、鼻水などの症状が見られたりするため、注意して観察しましょう。
僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)
犬の僧帽弁閉鎖不全症とは、心臓の右心室と左心室の間にある僧帽弁が、何らかの原因で変性し、閉鎖不全が生じるために起こる病気です。僧帽弁が変性すると、左心室から左心房へ血液が逆流し、血液の循環不全が起こるため、さまざまな症状が引き起こされます。
初期では無症状が多く、進行するとゼーゼーとした咳やため息・肺水腫・呼吸困難・チアノーゼ(口の中の粘膜・舌・唇が青紫色や赤紫色に変色する状態)などが見られます。
気管狭窄(きかんきょうさく)
口や鼻から吸った空気を、肺に運ぶ働きをするのが気管です。犬の気管狭窄は、何らかの原因で気管軟骨がつぶれたような形になり、呼吸がしにくくなる病気です。
詳しい原因は分かっていませんが、マルチーズやヨークシャーテリアなど、「トイ種」と呼ばれる小型愛玩犬種に多く見られます。
症状はため息のほかに、ガーガーとガチョウの鳴くような呼吸・呼吸困難・チアノーゼなどが見られます。
胃捻転
犬の胃捻転とは、その名の通り胃が捻転(ねじれ)している状態です。何らかの原因で、胃の内容物が発酵し、ガスを発生させ胃に充満することで、胃が捻転してしまいます。このときに、周りの臓器が圧迫され、ほかの臓器や血管とともに捻転し、血液の循環を妨げてしまうこともあります。
ため息のほかに、吐こうとするが吐けない・腹部の腫れ・大量のよだれ、荒い呼吸などの症状が見られ、早期に対処をしないと命に関わる危険性もあります。
フィラリア症
犬のフィラリア症とは、犬糸状虫という寄生虫が、蚊を媒体に心臓と肺の間の血管に寄生する病気です。蚊に刺されることによって、体内にフィラリアの幼虫であるミクロフィラリアが寄生することで生じます。フィラリアが寄生すると、血液循環が悪くなり、さまざまな悪影響がでてきます。
症状はため息のほかに、咳・痩せ・貧血・腹水・血尿などが見られます。
原因が分からないため息の対処方法
体調に異変が見られないのにため息をつく場合は、以下のことを見直してみましょう。
・飼い主さんとのスキンシップ不足
・愛犬がストレスを感じていないか
「最近仕事が忙しくて十分に遊んであげられない」「散歩に連れていく時間がない」「引っ越しをした」「新しいペットを迎えた」など、愛犬にとって飼い主さんとのスキンシップが十分にとれないことにストレスを抱え、ため息につながることは珍しくありません。ストレスが蓄積すれば、さまざまな病気を引き起こすおそれもあるでしょう。
愛犬にとってストレスや不満に感じる環境ではないかどうか、日々の生活を見直す必要があります。飼い主さんは、忙しくてなかなか時間がとれないときでも、愛犬の心身健康のために気配りを忘れてはいけません。
まとめ
・ため息には酸欠状態の解消や自律神経のバランスを整える働きがある
・犬がため息をつく理由は、リラックスや満足・疲れやストレス・学習されたものなどさまざま
・ため息をつきやすい犬種としては、パグ・ボストンテリア・フレンチブルドッグが挙げられる
・病気が原因のため息もあるため、注意が必要。症状にため息が見られる病気は、鼻腔狭窄・鼻詰まり・僧帽弁閉鎖不全症・気管狭窄・胃捻転・フィラリア症などがある
・ため息の原因がわからない場合は、スキンシップ不足や愛犬がストレスを感じていないかを見直す
犬がため息をつく理由は、ポジティブなものからネガティブなもの・病気からくるものまでさまざまです。犬は人間のように言葉で気持ちを伝えることができないぶん、ため息などのサインで気持ちを読み取ってあげることが大切です。飼育環境や体調などをよく見直して、愛犬がため息をつく原因を突き止めていきましょう。
参考:
みんなのどうぶつ病気大百科│僧帽弁閉鎖不全症(MR)<犬>
アクサダイレクト │小型犬に多い「気管虚脱」とは?獣医師に聞きました
ペットサポートのPS保険│犬の鼻腔狭窄
ペットサポートのPS保険│犬のフィラリア症
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