執筆者:葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師 ...プロフィールをもっと見る
犬は本来、肉食に近い雑食の食性をもつ動物とされています。そのため、主食としてたんぱく質を摂取することが大切です。
たんぱく質の原材料となるものは鶏肉や豚肉、牛肉、魚肉などさまざまです。
今回は、そのなかの一つである豚肉に焦点をあて、メリット・デメリットについてまとめました。おすすめの豚肉入りドッグフードも紹介しますので、フード選びの参考にしてみてください。
犬が豚肉を食べるメリット
毎日摂取するたんぱく質は、より健康に良いものを摂取したいものです。犬に豚肉を与えるメリットを解説します。
たんぱく質を摂取できる
豚肉には良質なたんぱく質が多く含まれます。
部位にもよりますが、脂質が少なく赤みの多い部分を選ぶと、筋肉や被毛などを作るのに大切なたんぱく質を多く摂取することが可能です。
病気によっては、たんぱく質の過剰摂取は注意が必要ですが、若齢の犬や運動量が多い犬、大型犬などはしっかりとたんぱく質を摂取することで、筋肉質かつ健康的な体づくりにつながります。
豊富なミネラルを含む
豚肉は鉄やカリウム、マグネシウム、亜鉛などのミネラルを豊富に含みます。
鉄は赤血球が酸素と結合する際に大切な役割を担い、貧血対策に役立ちます。
カリウムは体内のイオン濃度の均衡を維持し、神経伝達やエネルギー代謝での活躍をする成分です。マグネシウムは心臓の機能や健康な骨格形成に、亜鉛も健康な皮膚や粘膜の維持に欠かせません。
ミネラルを充分量摂取することは、健康な体づくりに大きくかかわります。免疫機構のシステムを維持する効果も期待できるでしょう。
ビタミンを多く含む
ほかの肉と比較して、豚肉はとくにビタミンBを多く含むといわれています。
ビタミンBは神経伝達時にサポートをする役割や、代謝をする際に特定の酵素をサポートする役割、皮膚や被毛、粘膜の健康を維持する役割などをもちます。
健康的な体づくりのためだけではなく、体の機能面でも大切な役割を担うビタミンBは、欠乏しないように心がけたい栄養素です。
なかでもビタミンB1は欠乏してはいけないとされており、欠乏すると筋力や視力の低下など致命的な機能低下の症状が見られ、程度が悪化すると死に至る危険性があります。
ほかにも、ビタミンB6やB12などの欠乏により貧血を起こしたり、粘膜のトラブルにより口内炎が起こりやすくなったりします。
犬が豚肉を食べるデメリット
健康のために大切な栄養素が多く含まれる豚肉ですが、与え方によっては悪い影響を及ぼすおそれもあります。
犬が豚肉を摂取するデメリットを解説します。
消化器に負担がかかる
豚肉はたんぱく質が多い分、硬く繊維質なため、消化器に負担がかかるおそれがあります。そのため、与える部位に注意したり、細かく切ったりする配慮が大切です。
また、生肉は細菌や寄生虫が付着していることがあり、消化器のトラブルを引き起こす危険性があるため、必ず加熱する必要があります。
消化器の負担を少しでも軽減できるよう、調理方法を工夫しましょう。
少量のみを与えるほか、与える頻度を調節することも消化器への負担の軽減につながります。
脂質が多い
与える部位にもよりますが、鶏肉と比較すると豚肉は脂質を多く含みます。
適量の脂質の摂取は健康維持のために欠かせませんが、過剰に摂取すると消化器に負担を与えたり、肥満になったりするおそれがあるため注意が必要です。
脂質の少ない部位を選択したり、茹でてから与えたりすると、脂質を減らせる可能性があるでしょう。
ただし、脂質に対する体調の変化や、摂取できる量には個体差があり、少量であっても下痢や嘔吐を起こす場合があります。
カロリーが高い
豚肉は栄養豊富な食材ですが、その分カロリーが高いことも特徴です。ダイエット中の犬や、太りやすい犬には適さない食材といえるでしょう。
トッピングとして与える場合や、おやつの食材として与える場合、普段のドッグフードの摂取カロリーとあわせてカロリーオーバーになりやすいため注意してください。
与える場合は、少量にとどめたり、ほかの食材やドッグフードの量を減らしたりする必要があります。
適切な摂取カロリーは、その子の代謝や運動量、体格などにより異なります。豚肉を与え始めるときは少量にとどめ、こまめな体重管理を行いながら量を調節しましょう。
あまりにも体重が増えてしまうようであれば、与えることを中断したほうがよいかもしれません。判断が難しい場合は、かかりつけの獣医師に相談してください。
豚肉を与えないほうがよいケースは?
ここまで、豚肉にはメリットだけではなくデメリットもあることを解説しました。では、具体的にどのような体質の子は、豚肉を食べないほうがよいのでしょうか。
どんなに良い面をもつものであっても、その子にとって害となるのであれば与えることを避けるべきです。とくに、以下のような持病をもつ子は豚肉の摂取に注意が必要です。
- アレルギー
- 消化器疾患
- 腎疾患
それぞれ詳しく解説していきます。
アレルギー
人間と同様、犬にもアレルギーは存在します。軽度であれば皮膚炎や下痢嘔吐などの胃炎や腸炎を起こし、重度の場合はショック症状を示すことがあります。
豚に対してアレルギー反応を示す場合、与えるのは避けましょう。
アレルギー検査を行っていればすぐに判断できますが、アレルギー様の症状があってもアレルゲンが何かを検査していない場合は慎重にならなければいけません。
食べたあとに下痢や嘔吐を繰り返したり、豚肉を与え始めてから皮膚を痒がったりしていたら、豚肉へのアレルギー反応である可能性があります。
体調の変化が見られたら、かかりつけの獣医師に速やかに相談しましょう。
消化器疾患
犬の消化機能は個体によって異なり、療法食や自身に合った食材でなければ、健康な消化機能を維持できなくなる場合があります。
一度の消化器症状で致命的な状態に陥る危険性は低いものの、慢性化したり繰り返したりすると、充分な栄養吸収が行われません。
その結果、体力の消耗や電解質異常、脱水などにより死に至る危険性があるため注意が必要です。
もともと消化器系の持病がある場合や、療法食を与えている犬の場合、脂質やたんぱく量の多い豚肉は消化器へ負担がかかるためおすすめできません。
腎疾患
腎疾患の場合も摂取する食材に配慮が必要です。
腎疾患になると腎臓の機能が低下し、本来であれば体が必要とする水分も尿として排泄するようになります。同時に、たんぱく質の代謝後の老廃物である尿素窒素の排出がうまくできなくなるのが特徴です。
この尿素窒素は体にとって有毒であり、蓄積することで中毒症状を起こします。腎機能の低下により尿素窒素が蓄積しやすくなるため、尿素窒素のもととなるたんぱく質の摂取を制限する必要があるとされています。
たんぱく質を多く含む豚肉は腎臓に負担をかけてしまう危険性があるため、与えるのは避けましょう。
腎機能の低下は血液検査によって確認が可能です。持病としてすでに腎疾患の治療をしている犬は豚肉の摂取は避けるべきですが、愛犬の状態がわからない場合、まずは血液検査で腎臓の状態を確認することをおすすめします。
豚肉が原料のおすすめドッグフード
健康面で問題のない犬であれば、健康維持に欠かせない栄養素を多く含む豚肉を食べさせたいと思う飼い主さんは多いでしょう。
しかし、体に害を与えないよう、調理方法や摂取量を工夫をするのは難しい場合もあるかもしれません。
そこで、豚肉を原材料とするドッグフードに切り替えることも選択肢の一つです。ここでは、豚肉を使用したおすすめのドッグフードを3つ紹介します。
【まとめ】豚肉は栄養豊富!健康管理をしながら少量ずつ与えよう
豚肉には愛犬が健康的に生活するために欠かせない栄養素がたくさん含まれています。しかし、愛犬の体質によっては害を与えてしまう危険性もあるため注意が必要です。
愛犬の体質や持病、健康状態を把握したうえで、健康管理を行いながら慎重に与えることをおすすめします。
また、豚肉を食べさせたいけれど適切な与え方がわからない場合は、原材料に豚肉を使用したドッグフードを選択してもよいでしょう。
飼い主さんにとって負担にならず、より愛犬が健康になれるように、それぞれの家庭に合ったスタイルで豚肉を取り入れてみてください。
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