執筆者:葛野 莉奈
麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師 ...プロフィールをもっと見る
たんぱく質やオメガ3脂肪酸など、豊富な栄養成分が含まれるサーモン(鮭)。最近ではサーモンを主原料に使用したドッグフードも多く販売されており、愛犬の健康的な体づくりを目指す飼い主さんから人気があります。
本記事では、サーモンの栄養素や犬に与えるメリット・デメリット、注意点などを解説します。厳選したおすすめのサーモン入りドッグフードも紹介しますので、ドッグフード探しの参考にしてみてください。
犬がサーモンを食べても大丈夫?
結論からいうと、サーモンは犬が食べてもよい魚です。
犬のドッグフードにはチキンやビーフなどが多く使われているイメージがありますが、最近では主なたんぱく質の原材料として魚やカンガルー、ラム、鹿肉など多様な食材が使われるようになりました。
ドッグフードに含まれる魚のなかでも、サーモンはお馴染みの原材料です。
犬は本来肉食ですが、家畜化されたことによって食生活が多様化し、現在では「限りなく雑食性に近い肉食」と表現されています。
肉とは、動物性のたんぱく質を示します。鶏や豚・牛などの動物だけではなく魚類の肉も動物性たんぱく質に含まれるため、サーモンを食べても問題ありません。
また、肉だけではなく、野菜や穀物などの栄養を摂取することも必要です。
サーモンに含まれる主な栄養素
サーモンを食べることでどのような栄養素を摂取できるのか、代表的な栄養素をみていきましょう。
たんぱく質
サーモンは動物性のたんぱく質です。
犬は、雑食傾向はあるものの本来は肉食動物です。健康的な体を維持するためには、たんぱく質が欠かせません。
サーモンを食べることで、良質なたんぱく質を得られるでしょう。
DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸
オメガ3脂肪酸と呼ばれる、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸が多く含まれる食材にサーモンが挙げられます。
DHAやEPAは、脳などの中枢神経へ働きかける成分です。摂取することで、より健康的な脳や神経系の維持につながり、認知症を予防する効果が期待できます。
また、炎症を起こしにくくする作用もあり、皮膚や関節などの健康維持にも有意義な成分として注目されています。
DHAやEPAが豊富なサーモンは、愛犬が高齢期に近づき、認知能力の低下や皮膚のトラブルが気になる場合におすすめです。
また、皮膚がデリケートで炎症を起こしやすい若齢の犬にとっても良い働きが期待できるでしょう。
ビタミンE・アスタキサンチン
サーモンにはビタミンEやアスタキサンチンも多く含まれ、抗酸化作用による健康維持や老化防止などの効果が期待できます。
細胞は、加齢やストレスによって酸化し、機能が徐々に低下していきます。
抗酸化作用をもつ栄養素を摂取することで、細胞を若々しい状態で維持でき、健康な体づくりにつながります。
犬がサーモンを食べるうえでの注意点
犬がサーモンを食べても問題ないことをお伝えしました。ただし、与える際にはいくつかの注意点を守らないと、かえって健康を害してしまうおそれがあります。
生のサーモンを与えると、アニサキスと呼ばれる寄生虫による食中毒を引き起こす危険性があります。
さらに、サーモンはビタミンB1を分解する酵素であるチアミナーゼを含んでおり、生の状態で大量に食べると健康を害しかねません。
サーモン入りドッグフードの特徴
食材としてサーモンを与える場合には注意が必要ですが、原料として含まれるドッグフードであれば加工してあるため、安心して与えられます。
サーモン入りドッグフードの特徴は、魚の風味や香りを感じられることです。
この風味を好んで食べる犬もいますが、苦手と感じて食欲が変化してしまう犬もいるため注意してください。
また、肉と比較すると、同じ原料の量で得られるたんぱく質やカロリーはサーモンのほうが少ないことも覚えておきましょう。同じ量のドッグフードを与えると、摂取できるカロリーやたんぱく量、脂質が少なくなってしまい、筋肉量が減少したり、体型が変化したりする可能性があります。
サーモン入りドッグフードへの切り替えを検討する際は、ドッグフードの組成表を見て比較することをおすすめします。
サーモン入りドッグフードを与えるメリット
サーモン入りのドッグフードを与えることで、以下のようなメリットを享受できます。
- アレルギーを起こしにくい
- 健康維持や老化防止につながる
それぞれ詳しく解説します。
アレルギーを起こしにくい
昔から犬が口にしてきたチキンやポークなどのたんぱく質と異なり、サーモンのたんぱく質にはアレルギー反応を示す個体が少ないといわれています。
アレルギー検査をおこなったうえで、サーモンに対する反応が見られないのであれば、与えて問題ないでしょう。ただし、サーモンでアレルギーを起こす子もいるため、絶対に安全とはいえません。
また、サーモン入りのドッグフードには、サーモンだけではなくほかの穀物や野菜などの原料も含まれているものが多くあります。サーモン以外の食材に対するアレルギーの有無も検討しなくてはなりません。
健康維持や老化防止につながる
先述したとおり、サーモンはオメガ3脂肪酸などの不飽和脂肪酸を多く含みます。
オメガ3脂肪酸は若々しく健康でいるために欠かせない抗酸化の働きや、炎症を起こしにくくする働きを持つとされています。
そのため、サーモン入りのドッグフードを食べることで、皮膚や被毛、関節の健康維持をサポートしてくれるでしょう。
チキンやポークなどのドッグフードを与えており、不調を感じている場合は、サーモンのドッグフードへの切り替えを検討してみてもよいかもしれません。
サーモン入りドッグフードを与えるデメリット
一方で、サーモン入りドッグフードを与える際は「嗜好性の問題」に注意が必要です。
先述のとおり、個体によっては、魚の風味になると食欲が減退したり、食べなくなったりすることがあります。
本来肉食である犬にとっては、チキンやポークなどの風味のほうが本能的に好ましいと感じるようです。
愛犬の嗜好性を把握したうえで、サーモン入りドッグフードに切り替えましょう。
まずはサンプルなどを与えて、嗜好性を確認してから切り替えるのが安心です。
サーモン入りドッグフードはどんな子に適している?
すべての子にとって、サーモンが原料のドッグフードを選択することが最良となるわけではありません。
サーモンが主原料のドッグフードが適している犬の特徴を紹介します。
シニア期の犬・シニア期を迎えようとしている犬
シニア期を迎え、日常的に抗酸化作用のある成分を摂取したい場合はサーモン入りドッグフードがおすすめです。
また、オメガ3脂肪酸のような抗炎症作用や脳への働きが期待できる成分も多く含まれているため、関節に炎症が見られるようになった犬や、認知症が現れ始めた犬にも良い影響を与えてくれます。
チキンやビーフなどのたんぱく質へのアレルギーが見られる犬
サーモンのたんぱく質は、犬がこれまであまり口にしてこなかった希少たんぱく質に含まれます。
そのため、チキンなどにアレルギー反応を示す個体と比較すると、サーモンに対してアレルギー反応を示す個体は多くありません。
チキンやビーフなどのドッグフードでアレルギーを示す犬は、サーモン入りのドッグフードに変更してみるとよいでしょう。
皮膚トラブルの多い犬
炎症を起こしにくくする作用があるため、皮膚がデリケートでトラブルを起こしやすい犬にもサーモン入りのドッグフードが適しています。被毛の状態も良くなる可能性があるでしょう。
定期的なシャンプーなど、外からのケアとあわせて、オメガ3脂肪酸のような炎症を起こしにくくする成分を内側から日常的に取り入れることで、健康的な皮膚のコンディションを維持できます。
また、皮膚トラブルにアレルギーの要素が加わっている犬であれば、より状態が改善されやすくなります。
【獣医師推奨】サーモン入りドッグフードを紹介
サーモンを原料に使用しているおすすめのドッグフードを紹介します。
【まとめ】サーモンは犬にとってメリットがいっぱい!上手に取り入れよう
犬の主食というとチキンやポークなどの肉類をイメージしがちですが、魚肉であるサーモンにも良質なたんぱく質が含まれており、多くのメリットがあります。また、抗酸化作用をもつDHAやEPAなどの不飽和脂肪酸は、健康的に長生きをするために欠かせません。
加工していないサーモンを与える場合は調理方法や量に注意が必要ですが、ドッグフードであれば安心して与えられます。最近ではサーモン入りのドッグフードも増えているため、本記事で紹介した商品を参考に、ぜひ愛犬の食事に取り入れてみてください。
大切な家族が健康的により良い状態で長生きできるよう、適切な食事を選択してあげられるとよいですね。
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