執筆者:松本 千聖
獣医師。岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師とし ...プロフィールをもっと見る
人間が花粉症や食べ物によってアレルギーを起こすのと同様に、犬もアレルギーを発症することがあります。
人間の場合は、アレルギーが出るとくしゃみや喘息などさまざまな症状が現れますが、犬は皮膚にトラブルが多く見られるのが特徴です。
犬のアレルギーは、原因によって主に以下の3つに分類されます。
- 食物アレルギー性皮膚炎
- アトピー性皮膚炎
- ノミアレルギー性皮膚炎
今回は「食物アレルギー性皮膚炎」に注目して、原因や対策を詳しく解説します。また、おすすめのアレルギー対策用フードも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
食物アレルギー性皮膚炎とは?
アレルギーとは、病気を引き起こす異物であるウイルスや細菌などから体を守る仕組みである「免疫」が、特定の異物に対して過剰に反応することで引き起こされる状態です。
食物アレルギー性皮膚炎では、特定の原材料が使用されたフードやおやつを食べたあとに目や口、耳の周辺、足先、尻尾などに強いかゆみが見られます。
また、60%の犬においては、下痢や嘔吐などの消化器症状も起こるといわれています。
人間の食物アレルギーでは、食べてすぐに発症する傾向がありますが、犬の場合は数十時間以上経ってから症状が出るのが特徴です。
犬の食物アレルギー性皮膚炎の原因
犬のアレルギーを引き起こしやすい食べ物としては、主に以下が挙げられます。
- 牛肉、鶏肉、豚肉などの肉類
- 乳製品
- とうもろこし
- 小麦
- 卵
ドッグフードやおやつの原材料に使用される食べ物がアレルゲンとなって、食物アレルギー性皮膚炎が引き起こされるケースが多く見られます。
愛犬が特定の食べ物にアレルギーを起こす食物アレルギー性皮膚炎であると確定した場合は、徹底的にアレルゲンとなる食べ物を避けなければいけません。
そのため、日頃から愛犬に与えるドッグフードやおやつの原材料を確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
犬が食物アレルギー性皮膚炎になったときの対処法
食物アレルギー性皮膚炎になったら、まずは動物病院の受診が必要です。もし、愛犬の皮膚にかゆみなどの症状が見られた場合は、飼い主さん自身で解決しようとせず、必ず獣医師に相談しましょう。
動物病院では皮膚症状に対して、視診や問診に加え、細菌やノミ、ダニ感染の有無、内科的疾患によるかゆみかどうかの確認など、さまざまな検査をおこないます。
そのうえで、食物アレルギー性皮膚炎の可能性が高いと考えられる場合、どの食物にアレルギー反応を起こすかを特定する「リンパ球反応検査」をおこない、アレルゲンの確定を実施します。
アレルゲンとなる特定の食べ物が判明したら、飼い主さんと相談して今後与えていくドッグフードの種類を決定する流れです。
皮膚をかゆがる様子があったため、飼い主さんが「シャンプー不足」と間違った判断をしてしまったケースがありました。
実際には食物アレルギー性皮膚炎の症状であるにもかかわらず、頻繁にシャンプーをおこなった結果、皮膚のバリア機能が低下して症状を悪化させてしまいました。
動物病院の受診に強いストレスを感じるわんちゃんであったため、できるだけ自宅で対処したいと考えていたそうです。
いまでは獣医療が向上し、多くの検査が動物病院への受診以外にも往診によっておこなえます。間違った対処によって悪化させないためにも、気になることがあればすぐに獣医師へ相談してください。
アレルギー対策用フードは獣医師と相談して選ぶ
食物アレルギー性皮膚炎が軽度で、アトピー性皮膚炎や細菌感染などを併発していなければ、原因となるアレルゲンを含まない食事を与えることで症状の改善が期待できます。
「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(通称ペットフード安全法)」によって、日本国内で販売されているペットフードの原材料は、添加物も含めてすべてパッケージに記載することが決められています。
しかし、同じ生産工程で取り扱った食材までは記載されていないため、飼い主さんのみでアレルギー対策用のフードを選ぶことは難しいでしょう。
また、食物性アレルギー性皮膚炎の程度や年齢、犬種特異性などによって、同じアレルゲンでも推奨されるフードは異なります。
そのため、必ず獣医師と相談して決めたドッグフードを与えるようにしてくださいね。
ある飼い主さんは、わんちゃんの食物アレルギー性皮膚炎の原因が「鶏肉」と判明したため、鶏肉が含まれていないフードであれば何でも良いと考えて「ターキー(七面鳥)」がメインのドッグフードを獣医師に相談せずに与えてしまいました。
しかし、アレルギーには「交差反応」が存在します。たとえば「スギ花粉」のアレルギーを持っている人は、「シラカバ」にもアレルギー反応を起こすことがあります。
スギとシラカバは異なる植物ですが、たんぱく質の構造が似ているため、スギ花粉と間違ってシラカバにも反応して症状を引き起こしてしまうのです。
食材のたんぱく質も同様、鶏肉においてはターキー(七面鳥)と交差反応が起こることが知られています。
よって、ターキー(七面鳥)をメインとしたドッグフードを食べたわんちゃんは、再び食物アレルギー性皮膚炎を起こし、かゆみに悩まされる状態となりました。
アレルギー対策におすすめのドッグフード
食物アレルギー性皮膚炎対策におすすめのフードを紹介します。
ただし、先述したとおり、食物アレルギー性皮膚炎かどうかは必ず動物病院で確認する必要があるほか、対策フードは獣医師と相談して決めることが重要なため、あくまで選択肢の一つとして参考にしてくださいね。
【まとめ】食物アレルギーに気づけるのは飼い主さんのみ!日頃からよく観察しよう
食物アレルギー性皮膚炎は、特定の食材がアレルゲンとなることで、皮膚に強いかゆみを引き起こし、場合によっては下痢や嘔吐などの消化器症状も起こる病気です。
対策としては、まず動物病院を受診し、食物アレルギー性皮膚炎との診断とアレルゲンを特定したうえで適切なフードを与える必要があります。
万が一アレルギー症状が現れたときにもすぐに気づいてあげられるよう、日頃から愛犬の様子を確認してあげてくださいね。
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