病気・ケア

愛犬が薬を飲んでくれない……うまく飲ませるコツや注意点・サポートグッズを紹介

執筆者:大熊 真穂
獣医師。現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経 ...プロフィールをもっと見る

「動物病院から処方された薬を愛犬に飲ませようとしたら、思った以上に大変だった……」という経験はありませんか?
ご飯に薬を混ぜれば気にせず食べてしまう子もいますが、嫌がってどうしても飲んでくれないケースも少なくありません。

そこでこの記事では、犬に薬を飲ませるコツや、投薬の際に気をつけること・投薬をサポートする道具についてまとめました。
愛犬への薬の飲ませ方が分からず悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

動物病院で処方される内服薬にはどんなものがある?

動物病院で処方される内服薬の形状は、錠剤・カプセル・粉薬・シロップなどがあります。

動物病院で治療を行う際は、動物専用の医薬品と、必要に応じて人間用の医薬品も使います。
人間用の医薬品を使う理由は、動物専用の医薬品の種類が人間用の薬よりも少なく、治療の選択肢が少なくなってしまうためです。

人間用の医薬品は、薬用量マニュアルに基づいて処方しますが、身体の小さい犬に人間用の医薬品を処方する場合、そのままの形状では量が多すぎることがあります。
そのため「錠剤を粉状にして分包する」「甘いシロップに混ぜて処方する」など、形状を変えて処方しなければなりません。
しかし、錠剤をつぶして粉状にすると、犬にとって飲みにくい苦い薬になってしまうことがあります。

一方で動物用医薬品は、動物が好む味や匂いが付いた飲みやすいタイプが増えてきています。
とくに一定期間毎月飲む必要があるフィラリアの予防薬や、ノミ・マダニの駆虫薬は、おやつタイプの薬が主流です。

犬に薬を飲ませるコツは?

犬にうまく薬を飲ませるには、食事に混ぜる方法がもっとも効果的です。
ただし、確実に飲ませるためにはちょっとした工夫が必要です。

食事全体に薬を混ぜるのではなく、最初に食事の一部に薬を混ぜて与え、その薬入りの食事を食べ終わってから残りの食事を与えましょう。

「食欲があるからと安心して薬を食事に混ぜて与え続けていたら、ある日突然そのドッグフードを食べなくなった」という話を飼い主さまからよく聞きます。
とくに療法食を与えている場合は、食事を食べなくなると困るため注意が必要です。

食事に混ぜて飲めない場合の対処法

食事に混ぜることができない形状の薬や、どうしても犬が嫌がってしまう場合の飲ませ方のコツを、形状別にまとめました。

錠剤・カプセル

錠剤やカプセルの場合、一番確実な方法は直接飲ませる方法です。
具体的な手順は、以下の通りです。

・利き手で犬の上あごを上からつかみ、口唇の付け根を引っ張る感じで少し上をむかせる。
・空いている方の手で薬を喉の奥に入れて、すばやく口を閉じて軽く押さえる。

うまく飲ませるコツは、上あごをしっかりつかむことです。
舌をペロッと出したら、うまく飲めている可能性が高いでしょう。
しかし、暴れたり咬みついたりして、口を触られるのを嫌がる犬の場合は、この方法はおすすめできません。

また薬自体が苦い場合は、犬が嫌がってよだれを垂らしたり、泡を吐いたりすることが多いため、直接飲ませるのではなく、投薬用のおやつや好きなものに包んで与えましょう。

粉薬

苦くない薬であれば、少量の水に混ぜて飲ませる方法が簡単です。
苦くて飲みにくい薬や、薬の量が多い場合は、以下の方法を試してみましょう。

・少量のハチミツや練乳などに混ぜてペースト状にして、上あごに塗るようにして飲ませる
・犬用ミルクなどの液体に溶かしてスポイトや注射器で与える
・投薬用のおやつに混ぜてお団子状にして与える

ペースト状のものや液体に混ぜる場合、できるだけ少量の薬を混ぜるのが上手く飲ませるコツです。量が多ければ多いほど、飲ませたり舐めさせたりするのが困難となるため、薬が混ざる必要最小限の量を使いましょう。

シロップ

シロップは苦いものがほとんどなく、比較的飲ませやすいです。
水を飲ませる要領で、口の横からスポイトや注射器の先端を入れて少しずつ飲ませます。

口唇の付け根をスポイトや注射器を持っていない方の手でつかんで軽く持ち上げ(人間でいうと口を横にひっぱるイメージ)、その隙間にスポイトや注射器の先端を差し込んで液体を入れてください。

シロップは一度に入れるのではなく、愛犬が舌をぺろぺろと動かすペースに合わせて、少しずつ入れるとうまく飲んでくれるでしょう。

犬に薬を飲ませるときの注意点

病気の治療のために投薬をするはずなのに、ちょっとした不注意で思わぬトラブルが発生してしまう可能性があります。
愛犬に薬を飲ませる際には、以下のポイントに注意しましょう。

食道炎に注意する

直接薬を飲ませる場合、錠剤やカプセルが食道にはりついてしまうリスクがあります。
薬の内容によっては、食道にはりついたものが溶けて食道炎になることもあるため注意が必要です。

錠剤やカプセルを直接与える際は、薬を飲ませたあとにスポイトや注射器で少量の水を飲ませると、トラブル回避につながります。

水を飲ませる際は、シロップを飲ませる要領で口の横の方からスポイトや注射器の先端を入れて、少しずつ流し込むようにするのがポイントです。

誤嚥に注意する

シロップや水などの液体を飲ませる際に注意すべきなのが誤嚥です。
誤嚥を防ぐためには、正面から上を向かせた状態で薬や液体を入れないことが大切です。
口の横から少しずつ、犬が飲み込むペースに合わせてゆっくり流し込むようにして飲ませましょう。
とくに、飲み込む力が弱いシニア犬や子犬は注意が必要です。

無理やり押さえつけない

投薬の際に、強い力で頭を無理やり押さえつけるのはやめましょう。
とくに小型犬の場合、無理やり押さえつけられるとショック状態に陥ることがあります。
犬が暴れて嫌がるときは、直接投薬する方法はすぐにあきらめて、無理のない方法に切り替えましょう。

投薬をサポートしてくれるおすすめグッズ

口を開けて手で薬を入れる方法が難しい場合は、以下のようなアイテムの活用も試してみてください。

投薬補助グッズ

投薬を少しでも楽にするための道具です。
薬によっては、形状を変えると薬の効能に影響がでる場合があるため、かかりつけの先生に確認してから使いましょう。

インプッター(投薬器)

先端に薬を挟んで口の中に入れ、プッシュして押し込む投薬補助グッズです。
犬に噛まれることなく喉の奥の方に薬を落とすことができるため、動物病院ではよく使われています。

ただし、先端を喉の奥の方に入れすぎると、反射で吐いてしまうことがあるため、使い方には注意が必要です。

ピルカッター・ピルクラッシャー

ピルカッターは錠剤をカットする道具で、ピルクラッシャーは錠剤をつぶして荒い粉状にするための道具です。
錠剤をカットしたり細かく砕いたりすることで、他のものに混ぜる・包むなどの工夫ができるため、薬を飲ませやすくなります。

なお、抗生剤は比較的苦い味の薬が多く、砕いて飲ませると犬が嫌がることが多いため、つぶすのはあまりおすすめできません

投薬用カプセル

人間が苦い薬を飲む際によく使用されるオブラートは、犬の場合はうまく飲めないことが多いため不向きです。
粉薬の量が少量であれば、薬局で販売している空のカプセルに移し替えて飲ませる方法もあります。

カプセルは喉の奥や食道にはりつきやすく、飲ませたあとは少量の水を飲ませる必要があるためで少し大変ですが、苦い粉薬を飲ませたいときに試してみる価値はあるでしょう。

投薬用のおやつ

薬を包んで食べさせる目的のおやつです。
投薬用のおやつは、ゼリー状のものや、粘土よりすこしやわらかめのものが、薬が隠れやすくておすすめです。
動物病院でも、投薬用のチュールや、犬が好む味で薬が入れられるように穴が開いている投薬用のおやつを取り扱っています。

市販の投薬用のおやつを利用してもよいですが、ウエットフードやカッテージチーズなどでも代用可能です。
ただし、薬の内容に影響がない食材を使う必要があるため、事前にかかりつけの動物病院で相談しましょう。

なお、犬は甘いものを好む傾向があるため、投薬用のおやつは、身体に影響がない範囲で甘い味のものを使うと、苦労せずに飲める可能性が高いでしょう。
投薬用のおやつを使うことで、飼い主さまも愛犬もストレスがなくなったばかりか、薬の時間を愛犬が楽しみにしている、という微笑ましいお話もよく耳にします。いろいろ試して、愛犬が好きなものを探してみてください。

どうしても愛犬に薬を飲ませられない場合は?

「いろいろ工夫してみたけれど、どうしても愛犬に薬を飲ませられない」という場合は、無理をせずにかかりつけの動物病院に相談しましょう。

愛犬と格闘して無理やり投薬するのは、飼い主さまも愛犬も疲れてストレスがたまるだけです。

わたしの勤務先でも、抗生剤の投薬が難しいため、長く効果が持続する注射を希望される方が多く来院されます。

薬の目的はあくまでも「治療」であるため、ご自身が無理なくできる方法で投薬を行うことが大切です。

また、お家でできる対策として、普段から愛犬の口の周りに触れるよう心がけましょう。
口の周りを触られることに慣れていると、投薬が必要なときはもちろん、歯磨きや歯石取りなどのデンタルケアもスムーズに行えます。

ぜひ、子犬の頃から口周りに触れる習慣をつけ、口に指を入れても嫌がらないよう、愛犬との信頼関係をつくっておきましょう。

まとめ

愛犬が薬を飲んでくれないときは、形状を変えたり、サポートグッズを活用したりすることで、うまくいく可能性があります。
今回ご紹介した飲ませ方のコツを参考にして、ぜひいろいろと試してみてください。

ただし、どうしても愛犬が嫌がって暴れてしまう場合、無理に飲ませようとするのは怪我やストレスにつながり逆効果です。
うまくいかないときは、早めにかかりつけの動物病院へ相談しましょう。

ABOUT ME
大熊 真穂
獣医師。現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら 専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。
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