ドッグフード

【獣医師執筆】低価格と高価格のドッグフードの違いとは?基準の金額や気にするべき点も紹介

執筆者:平松 育子
獣医師・ペットライター山口大学農学部獣医学科卒業山口県内の複数の動物 ...プロフィールをもっと見る

大袋で1,000円以下のフードもあれば、小容量で眼が飛び出そうなほどの価格のフードもあります。

価格の幅が広いドッグフードですが、高価格のものと低価格のものでは何が違うのでしょうか。

本記事では、価格帯によるドッグフードの違いや、どのくらいの金額のものであれば安心して購入できるのかを解説します。

ドッグフードの金額の違い

ドッグフードには多くの種類があり、価格も驚くほど安価なものから、気軽に手を出しにくい高価なものまでさまざまです。安いフードであれば100g単価で80円ほどですが、高価なものは100g単価で1,200円以上します。

実は、ドッグフードの価格は、原材料の種類や添加物の有無などで変わってきます

値段の高いドッグフードには「プレミアムドッグフード」「ヒューマングレード」などと記載されていることがあります。プレミアムには「高級」という意味がありますが、ドッグフードの場合は「高品質・高価格」の意味で使用されることが多いです。

また、ヒューマングレードとは、人間用の食品と同じレベルで品質が管理された原材料を指します。

プレミアムドッグフードとは

一般的にプレミアムドッグフードとは、ホームセンターなどの量販店で販売されている安価なフードではなく、高品質な原材料を使用し、無添加を謳っているドッグフードです。

実は、プレミアムドッグフードの明確な定義はありません。何の原材料をどのくらい使用していればプレミアムフードになるのかは、販売する会社の独自判断にゆだねられています。

しかし、プレミアムドッグフードと呼ばれるものは、品質や安全面にこだわっているドッグフードであることには変わりないため、品質を吟味して選びたい飼い主さまにはおすすめです。

ヒューマングレードとは

プレミアムドッグフードの多くには、ヒューマングレードと記載されています。

ヒューマングレードとは、人が食べても安全なフードという意味で用いられています。一方、AAFCO(米国飼料検査官協会)によると、ヒューマングレードは以下のように定義されています。

「食材・製造・輸送・各種情報公開まで、全ての工程において人の食品と同じ基準で作られた製品」

ただし、ヒューマングレードは最近頻繁に使用されるようになった言葉であるため、ペットフードに関して統一した基準はありません

メーカーが独自に作った基準にのっとって、ヒューマングレードと記載しています。

高価格なフードと低価格なフードは何が違う?

先述したとおり、ドッグフードの価格は使用している原材料や添加物の有無によって異なります。

ここからは、高いフードと安いフードの違いについて詳しくみていきましょう。

原材料の差

ドッグフードに含まれている原材料は、肉や魚といったタンパク源、野菜や果物といった植物系のもの、ビタミンやミネラル、保存料などの添加物類などに分類できます。

肉や魚の違い

私たちがスーパーでお肉を選ぶときも、値段はさまざまです。「松阪牛」「神戸ビーフ」「近江牛」は三大ブランド牛と呼ばれますが、松阪牛サーロインは100gで3,000~3,500円が相場です。もちろん、さらに金額が高いものもあります。

このような金額の差は「飼育期間の長さ」「飼育中に必要であった餌代」「そのブランドの牛が何頭いるのか」「その部位がどれくらいあるのか」などによって変わるといわれています。

また、牛肉が豚肉や鶏肉に比べて値段が高いのは、飼育期間の長さが関係しています。一般的に鶏は40日、豚は6か月、牛は2年間飼育されます。

動物が食べる飼料にも「牧草」「穀物飼料」などさまざまな種類があります。普通に生育した牧草や穀物と、無農薬・オーガニック・遺伝子組み換え不使用の飼料では金額が大きく変わるります。

つまり、飼料代・飼育期間・こだわり・肉の部位がとれる量などが相加、相乗して使用される原材料の金額が変わり、ドッグフードの値段に影響するのです。

魚も、肉類の場合とほぼ同じといえますが、漁獲量や養殖・天然なのかによっても金額が変わってきます。

植物系原材料の違い

ドッグフードには小麦、トウモロコシ、米、ジャガイモ、エンドウ豆、大豆などの植物系の原材料も多く含まれており、これらの栽培方法によっても金額が変化します。

とくに、無農薬や遺伝子組み換え作物ではない場合、金額が高くなる傾向があります。

また、植物系の原材料は、気候変動や輸入・輸出の際の為替レート、輸送にかかる費用など影響も大きいでしょう。

ここ数年にわたるドッグフードの価格高騰は、気候変動による収穫高の変化や社会情勢が影響しているといわれています。無農薬・オーガニックのように農薬を使わない育て方をすると、人出や特別な栽培方法が必要となるため、さらに金額が高くなります。

金額の高いドッグフードに記載されていることが多い、無農薬・有機栽培・オーガニックの違いは以下のとおりです。

  • 無農薬野菜:栽培期間中に農薬を使わない、または農薬の使用を控えた野菜のこと
  • 有機栽培野菜:植物性由来・動物性由来の有機肥料を利用した栽培法で育てられ、特定の農薬や化学肥料などの無機質肥料を利用していない野菜。有機JAS規格で定められている
  • オーガニック:有機栽培野菜とほぼ同じ

上記のように、無農薬・有機栽培・オーガニックの野菜は、肥料や農薬を使用した野菜に比べて手間がかかるほか、流通量も少ないため、価格がどうしても高くなります。

添加物の種類

ドッグフードにはさまざまな添加物が含まれており、栄養価を向上させたり、製品の保存期間を長くしたり、風味を良くしたりする目的があります。

一方、人工の添加物を使用していない無添加ドッグフードは、品質を維持したり、保存期間をある程度もたせたりするために複雑な製造工程を経る必要があり、コストがかかります

また、高品質なドッグフードは、製造過程において高い基準を満たさなければなりません。高品質な原材料の選別、品質管理、生産設備の清潔さなどに重点を置く必要があり、さらにコストがかかります。

グレインフリーかどうか

高価格なドッグフードは「グレインフリー」と記載されているものも多くあります。

グレインフリーとは、穀物不使用という意味です。穀物は「米」や「トウモロコシ」などを指します。

穀物が含まれていないドッグフードの場合、ジャガイモやサツマイモなどの野菜類が多く含まれるようになり、タンパク質の含有量も増えるのが通常です。

コスト的には穀類のほうが安いため、野菜類が増えるとドッグフードの金額が高くなります

犬にグレインフリー食は必要?

「犬は肉食動物で野生時代に穀物を食べておらず、穀類を消化できないためグレインフリーのほうが良い」という情報が見受けられます。

犬の祖先はオオカミと考えられていますが、人間とともに暮らすことで進化してきました。

犬はアミラーゼという炭水化物を分解する消化酵素をもっており、ドッグフードは加熱処理により消化性が高められていることから、犬は穀類を消化分解できます。

そのため、食物アレルギーで穀物に対するアレルギー反応が認められない限りは、とくにグレインフリーにこだわらなくてもよいでしょう。

飼い主さまからグレインフリーについて質問されることがよくあります。

以前「犬は炭水化物を消化できないため、グレインフリーでなければ体調を崩すと聞いたけど、今まで気にせずに普通のドッグフードを食べさせていた。今から病気になるのではないかと心配で仕方がない」と深刻な顔で来院された飼い主さまがいらっしゃいました。

健康な体を維持するために欠かせない三大栄養素は、犬にとっても必要な栄養素で、犬は炭水化物を消化する酵素ももっています。総合栄養食をしっかりと食べてくれており、体調に問題がないようであれば大丈夫ですよ、とお伝えしました。

血液検査もおこないましたが、全項目正常値で、安心してお帰りになられました。ご褒美だといって愛犬のおやつを選んで、一安心の様子でした。

このように、グレインフリーを与えていなくても、いつものフードで元気に過ごしているのであれば、無理に変更する必要はありません。

結局高いフードのほうが良いの?

ドッグフードの金額の違いは、原材料の金額の差が大きいウエイトを占めていますが、ペットフードを製造する工程の複雑さも影響を与えます。

単純に混ぜ合わせただけでは、ドッグフードのキブルの形を維持できなかったり、かたくなりすぎたりしてしまうようです。原材料の種類によっては、試行錯誤を繰り返すため、おいしく食べてもらうためにさまざまな工夫を繰り返した研究にかかる費用もフード代金に含まれてくるでしょう。

「安いフードは危険」と考える方もいるかもしれませんが、ペットフード安全法にのっとった内容でフードを製造しているため、食べることへの安全性は確保されています。内容に不備があるフードが、市場に出回ることはありません。

低価格のドッグフードには安い原材料が使用されているものの、栄養成分は基準を満たしていることを念頭に置いて選びましょう。

一方、高いドッグフードは、原材料にこだわりがあり厳選されています。また、生産段階で特殊な製造方法をとることもあります。もちろん安全性も保障されています。

高いフードが必ずしも愛犬に合うわけではありませんが、品質が非常に高いため、安心して与えられるものが多いでしょう。

ただし、家計を圧迫する金額のものを購入し続けることはおすすめできません。無理なく継続購入でき、安すぎない金額のドッグフードを選んでみてください。

どのくらいの価格帯であれば安心?

では、どのくらいの金額のドッグフードを選ぶのがよいのでしょうか。

ドッグフード1kgの金額の相場は、約800円〜3,800円といわれています。

明確に「この金額以上なら大丈夫」という基準はありませんが、おおよそ1kgあたり1,000円以上であれば品質が安定しており、安心して与えられるでしょう。

まとめ

今回は、ドッグフードの金額の違いについてお話ししました。店頭に並んでいるドッグフードを見ると価格差があり過ぎて、何が違うのだろうと疑問に感じるかもしれません。

一般的には、原材料費や製造にかかる工程、流通量などが金額に関係しています。1㎏あたり1,000円以上の金額をいったん目安にし、愛犬にあったフードを見つけてあげてください。

ABOUT ME
平松 育子
獣医師・ペットライター
山口大学農学部獣医学科卒業
山口県内の複数の動物病院で代診を務めたのち、2006年に動物病院を開業。
ペット関連のウェブライターとして、多数のメディアの記事執筆、監修を行う。
2023年6月 ペット専門の記事作成会社「アイビー・ペットライティング」設立。代表を務める。
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