執筆者:平松 育子
獣医師・ペットライター山口大学農学部獣医学科卒業山口県内の複数の動物 ...プロフィールをもっと見る
ドッグフードの原材料として使われている肉類といえば鶏肉が代表的ですが、最近ではラム肉を使用したフードも増えています。
低カロリーかつヘルシーであるため、ダイエット中のワンちゃんに与える食事として、ラム肉ベースのドッグフードを探している方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ラム肉の特徴や栄養素、メリット・デメリット、ラム肉を使用したおすすめのドッグフードをご紹介します。ぜひフード選びの参考にしてください。
ラム肉を犬に与えても大丈夫?
結論からいうと、犬がラム肉を食べても問題はありません。
子羊の肉であるラム肉は、柔らかくて食べやすく、栄養豊富です。また、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどの栄養成分が豊富に含まれています。
牛肉や豚肉と比較すると、たんぱく質の量は変わりませんが、ラム肉はビタミンや鉄分、カルニチンが多いことが特徴です。
なお、子羊よりも成長した羊の肉はマトンと呼ばれ、ラムとは区別されます。
ラム肉に含まれる主な栄養素
先述したとおり、ラム肉には健康な体づくりに欠かせない栄養素が豊富に含まれています。ラム肉の主な栄養素と効能について解説します。
たんぱく質(必須アミノ酸)
ラム肉には、食事から摂取する必要がある必須アミノ酸が多く含まれています。
たんぱく質は20種類のアミノ酸で構成され、体内では合成できない9種類のアミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リジン、フェニルアラニン、スレオニン、ヒスチジン)が必須アミノ酸です。
なかでもメチオニンには、ヒスタミンを減らすことでアレルギーを抑制したり、悪玉コレステロールを下げたりする働きがあります。また、リジンは免疫力を高める働きを持つアミノ酸です。
これらのアミノ酸がバランス良く含まれているラム肉は、健康な体づくりに役立つ食材といえるでしょう。
不飽和脂肪酸
油には、からだに良い油と悪い油があります。
ラム肉にはからだに良いとされる不飽和脂肪酸が多く含まれています。不飽和脂肪酸は、体内では合成できない必須脂肪酸の一つです。
血液をサラサラにする、LDLコレステロールの抑制、過酸化脂質の発生予防、アレルギー症状の抑制といった効果があるといわれています。
ビタミン
ラム肉にはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB12、ビタミンEが多く含まれています。
ビタミンB1・ビタミンB2
栄養素の代謝をサポートし、皮膚や粘膜を健康に保ちます。
ビタミンB12
赤血球を生成したり、DNAやたんぱく質、脂質を合成したりと、補酵素として働きます。
ラム肉には豚肉の約7倍、牛肉の約3倍のビタミンB12が含まれています。
ビタミンE
強力な抗酸化作用があり、細胞の健康維持、LDLコレステロールによる血管老化の防止、生活習慣病予防などの効果が期待できます。
これらのビタミンは、とくに被毛や皮膚に良い影響をもたらすといわれています。
また、摂取した栄養素がスムーズにエネルギーへ変換されるのを助け、脂肪の蓄積を防ぐ効果も見込めます。
L-カルニチン
ダイエットに効果的なL-カルニチンが含まれていることもラム肉の大きな特徴です。L-カルニチンが脂肪細胞と結合してミトコンドリア内に取り込まれることによって、脂肪燃焼が起こります。
ラム肉には鶏肉の約8倍のL-カルニチンが含まれているため、脂肪燃焼の促進や心筋機能の強化、免疫力アップなどの効果が期待できます。
鉄分
鉄は赤血球の成分であるヘモグロビンを構成するミネラルの一種です。
鉄分が減少すると、鉄欠乏性貧血や発育不良、下痢などを引き起こすおそれがあります。
ラム肉は鉄が豊富で、鶏肉の2倍、豚肉の3倍、牛肉と比較すると同程度の鉄が含まれています。
ラム肉を使用したドッグフードを与えるメリット
ラム肉が主原料のドッグフードを犬に与えるメリットは以下のとおりです。
- 肥満予防につながる
- 栄養豊富で健康維持に役立つ
それぞれ詳しくみていきましょう。
肥満予防につながる
ラム肉は全体的に低カロリーでヘルシーであるため、太りにくい体質へ導く効果が期待できます。
牛肉100gあたりのカロリーは259Kcalですが、ラム肉100gあたりのカロリーは198Kcalです。また、鶏肉はヘルシーな印象がありますが、100gあたりのカロリーは204Kcalでラム肉のほうが低カロリーといえます。
ラム肉はカロリーが低いうえに、脂肪燃焼をサポートするL-カルニチン、体に良い油である不飽和脂肪酸も同時に摂取できるため、肥満傾向のワンちゃんに最適です。(※部位によってカロリーは変動します)
栄養豊富で健康維持に役立つ
前述したとおり、ラム肉には犬の健康づくりに役立つ成分が多く含まれています。
筋肉の発達を促したり、被毛や皮膚を美しくキープしたりする効果が期待できるため、栄養の不足が気になる場合にもおすすめです。
ラム肉を使用したドッグフードを与えるデメリット
一方で、ラム肉のドッグフードには以下のようなデメリットがあります。
- 価格が高い
- 好き嫌いが分かれる
メリットだけではなくデメリットも把握したうえで、愛犬に与えるかどうかを検討しましょう。
価格が高い
ラム肉のドッグフードは、ほかの肉類を使用したフードに比べて価格が高い傾向があります。
ドッグフードの原材料として鶏肉がもっとも多く使用されているのは、コストが低く手に入りやすいからです。
ラム肉も流通はしていますが、鶏肉に比べると流通量が少なく単価が高くなるため、結果的にドッグフードのコストも高くなってしまいます。
好き嫌いが分かれる
人気がないわけではありませんが、ラム肉はほかの肉類よりも嗜好性に劣ると考えられます。
コーネル大学獣医学部の教授の研究によると、犬がもっとも好きな肉は「牛肉」のようです。続いて「豚肉」「ラム肉」「鶏肉」「馬肉」の順であると報告されています。
ラム肉の順位は3番目ですが、ほかの肉類と比べて好き嫌いが分かれる点が特徴です。犬は嗅覚が優れているため、ラム肉の独特なにおいを嫌う子も少なくありません。また、食べ慣れたものに対しての安心感から、ラム肉には手を付けないワンちゃんもいるでしょう。
一方で、ラム肉を喜んで食べてくれる子も多くいます。栄養素が高くワンちゃんの健康維持に役立つ食材なので、ぜひ試してみてください。
好みがはっきりとしており、一度食べたものは二度と食べないほど偏食のワンちゃんが飼い主さまと来院されました。
すぐ飽きてしまうため、どんどんフードを変えなくてはならず、飼い主さまがとても困っておられました。ご自宅には封を切ったドッグフードがたくさんあり、ほとんど捨ててしまっていたそうです。
「お腹がすいたら食べるかもしれない」と我慢比べをしても断固として食べませんでした。
そこでおすすめしたフードが、ラムトライプのトッピングです。強烈なにおいがするため、飼い主さまは顔を背けてしまいましたが、そのワンちゃんは「もっとちょうだい」と大騒ぎしていました。
その後は、どんなフードでもラムトライプのトッピングがあれば食べるようになりました。独特なにおいがするため好みは分かれますが、あげてみないとわからないことを実感した体験です。
ラム肉のドッグフードを選ぶときのポイント
ここまで、ラム肉には犬の健康に良いさまざまな効果があることを解説してきました。
しかし、ラム肉が使われているからといって、どのドッグフードでもよいわけではありません。品質にこだわって作られており、安全性の高いものを与えてあげることが大切です。
ラム肉のフードを選ぶ際は「原材料」と「添加物」をしっかりとチェックしましょう。
原材料の確認
ドッグフードの袋には原材料が記載されています。多く含まれている順番に書かれているため、最初に「ラム」と記載があるかどうかを確認してください。
ひとくちにラムといっても「ラムミール」「ラム生肉」「乾燥ラム肉プロテイン」などさまざまな種類がありますが、もっとも品質が良いのはラム生肉です。
添加物の確認
ドッグフードには、添加物が含まれているものが多くあります。添加物には複数の種類が存在し、なかには犬への悪影響が指摘されているものもあるため注意が必要です。
ドッグフードに含まれる添加物の種類を紹介します。
栄養添加物|栄養分を強化して栄養価を高める
ドッグフードに使用される原材料は自然のものであるため、そこに含まれる栄養素の量にばらつきが生じます。
そのため、有効成分を増強して安定したフードを作る目的でビタミン類やミネラル類、アミノ酸類の添加物が加えられます。
酸化防止剤|フードの酸化を防止する
ドッグフードには、油脂成分が多く含まれています。油脂はエネルギー源として重要な働きをする成分ですが、時間の経過による酸化や劣化は避けられません。
酸化が進むとフードの嗜好性が低下するだけではなく、健康にも悪影響を及ぼすおそれがあります。また、フードにはビタミン類も多く含まれていますが、ビタミン類は酸化すると有効性が薄れてしまいます。
これらの成分の酸化を防ぎ、製造されたときの品質を保つために、酸化防止剤が使用されています。
BHA、BHT、ミックストコフェロール、ビタミンE、ローズマリーなどが代表的です。
着色料
ドッグフードの見た目をよくするために、着色料を使用して色をつける場合があります。
しかし、発がん性の疑いからアメリカやヨーロッパでは使用が禁止されており、日本でも着色料を使用したフードは減少傾向にあります。
これらの添加物は、健康を害さない使用量が法律で定められています。
しかし、ワンちゃんの体質によっては少量でも酸化防止剤や着色料に対して過敏反応を起こす危険性があります。
添加物自体は悪いものではありませんが、フードを選ぶ際にはしっかりと内容を確認し、安心して与えられるものを選びましょう。
ラム肉はアレルギーになりにくい?
ラム肉は、鶏肉や牛肉と比べてアレルギーになりにくいといわれています。しかし、ラム肉に対するアレルギーを持つワンちゃんも一定数いるため、絶対に安全とはいえません。
ラム肉がアレルギーを引き起こしにくいといわれていたのは、ラム肉を原材料とするドッグフードがあまり普及していなかった頃の話です。
最近ではラム肉のドッグフードが多く販売されており、ワンちゃんが食べる機会も増えていることから、過剰摂取や体質の変化などによってラム肉にアレルギー反応を示すケースが見られます。
食物アレルギーとは、特定の食材に含まれるたんぱく質に対する過剰反応です。
同じ食材に対してアレルギーが起こるか起こらないかは個体差があり、どのように免疫反応が起こるかによって異なります。
また、肉のたんぱく質は動物種が変わっても共通する部分が多いため注意が必要です。たとえば、鶏肉に対してアレルギーがある場合、ラム肉でもアレルギーがでてしまうケースがあります。
そのため、肉に対してアレルギーがある子は、別の種類の肉類ではなく、野菜や魚に変更したほうがよいとされています。
一方で、ドッグフードの主原料として多く使われている鶏肉よりは体内に蓄積されている可能性が低く、アレルギー予防に役立つこともあります。
以前、愛犬のアレルギーでお悩みの飼い主さまがいらっしゃいました。さまざまな対策を取り入れ、何とかワンちゃんのアレルギー症状が良くならないかと奮闘していたそうです。
しかし、たくさんのアドバイスを聞いているうちに、何をどうすればよいのかわからなくなってしまい来院されました。
症状を聞き、季節による差がなく一年中かゆみがひどいとのことだったため、アレルギー検査をおこないラム肉のフードに変更しました。
すると、変更してから1カ月ほどでかゆみの症状が少しずつ軽減し、随分と快適に暮らせるようになったのです。
ワンちゃんの症状が改善していくにつれ、飼い主さまの表情も明るくなりました。アレルギーがひどいときは、かゆがって全身を掻くため脱毛がひどく、散歩に行っても「かわいそうに」「病院に行ってるの?」といわれるのが苦痛で楽しめなかったそうです。
症状が改善し、ワンちゃんも飼い主さまも楽しく散歩やドッグランに行けるようになったと喜んでいらっしゃったのが印象的でした。
このように、ラム肉のフードに変更することで、アレルギー症状が軽くなるケースもあります。
【獣医師推奨】ラム肉入りドッグフード
ラム肉を原材料に使用した、品質の良いおすすめドッグフードをご紹介します。
【まとめ】ラム肉のドッグフードは栄養豊富!
ラム肉を使用したドッグフードのメリット・デメリットについて解説しました。
ラム肉のドッグフードには、ラム肉単独のもの、ラム&ライスのように複数の原材料が入っているものなど多くの種類があり、迷ってしまう方が多いかもしれません。
アレルギー症状などがなく、新しいフードを試したいという理由でラム肉のドッグフードを選ぶ場合は、複数の原材料が入っているもので問題ないでしょう。
一方、アレルギーがあるワンちゃんの場合は、原材料の種類が少なくラム肉のみをタンパク源としているフードをおすすめします。
ラム肉はほかの肉に比べると栄養豊富でカロリーが低く、健康な体づくりに最適です。本記事で紹介したおすすめのラム肉入りフードを参考に、ぜひ試してみてください。
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