執筆者:平松 育子
獣医師・ペットライター山口大学農学部獣医学科卒業山口県内の複数の動物 ...プロフィールをもっと見る
日本人の主食であるお米。「白ごはんが大好き」というわんちゃんもいるかもしれませんね。
ドッグフードにもお米を原材料として使用しているものがありますが、お米を与えることにはどのような効果やメリットがあるのでしょうか。
本記事では、お米入りのドッグフードをわんちゃんに与えるメリット・デメリットについて解説します。おすすめの商品も紹介しますので、わんちゃんのごはんにお米を取り入れたい方はぜひ参考にしてください。
お米の栄養
お米は私たちも主食として食べている栄養豊富な食材です。まずは、お米にどのような栄養素が含まれているのかを確認していきましょう 。
炭水化物
お米には炭水化物が多く含まれており、全体の66%を占めるといわれています。
炭水化物は脳や体のエネルギーとなる重要な栄養素で、分解されると最終的にブドウ糖となり、ブドウ糖を唯一のエネルギー源とする脳の活動を支えています。加えて、毎日の活動に必要なエネルギー源としても重要です。
わんちゃんは炭水化物が消化できないという説もありますが、そんなことはありません。炭水化物を消化するアミラーゼという酵素が唾液には含まれていないものの、膵液には膵液アミラーゼが含まれているため炭水化物の消化は可能です。
タンパク質
お米には植物性タンパク質が6%ほど含まれています。タンパク質は筋肉や、内臓、血液、被毛や皮膚などの体の組織を作るために必須の栄養素です。
また、各種ホルモンや酵素などの維持・調節や、体を守る働きにも関係しています。
タンパク質には動物性と植物性の2種類があり、含まれるアミノ酸や吸収率などがやや異なります。吸収率は動物性タンパク質のほうが良いといわれています。
偏らないように、さまざまな種類のものを食べて、不足する栄養素を補い合うことが大切です。
ビタミン
お米にはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンEが含まれています。お米にはぬか層、胚芽、胚乳があり、どの部分が残っているかによって「玄米」「胚芽玄米」「精白米」に分類されます。玄米のほうが、精白米よりもビタミン類は豊富です。
ビタミンB1は糖質代謝などの補酵素として働き、エネルギー産生に深くかかわっています。ビタミンB2は、糖質、脂質、タンパク質のエネルギー代謝や脂質代謝の補酵素として働くのが特徴です。
ビタミンEには抗酸化作用があり、悪玉コレステロールの減少、血栓の予防、細胞膜の維持などの重要な働きをします。
ミネラル
お米にはカルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛などのミネラルも含まれています。
カルシウムは骨や歯、筋肉の収縮に必要なミネラルで、不足しても多すぎても身体に重大な影響を与えるため注意が必要です。
鉄が不足すると貧血を起こします。マグネシウムは酵素の活性化、筋収縮や神経情報の伝達、体温や血圧の調整に役立ちます。
亜鉛は体内で作ることができない必須微量ミネラルで、酵素の活性化、 身体の成長と維持に必要な栄養素です。
犬はお米を食べても大丈夫?
結論からいうと、わんちゃんはお米を食べても大丈夫です。日本では、ドッグフードが販売されるまでは、人間のごはんの残りに味噌汁をかけたものを食べることが一般的でした。
ドッグフードが販売されるようになり、犬に必要な栄養素が研究されて総合栄養食が生まれました。
先に紹介したように、お米は栄養豊富で積極的に取り入れてよい食材ですが、適量を与えることが大切です。
生米はNG
犬に生米はNGです。犬に与えてよいのは「炊いたお米」のみです。人間と同様に、犬も生米を食べると消化不良や下痢を起こすおそれがあります。
炊いたお米はアルファ化しており、消化しやすくなっています。一方で、生米に含まれるデンプンは、消化しにくい「ベータ化」の状態です。加熱調理すれば、消化しやすいアルファ化の状態になるため、食べさせて問題ありません。
玄米は消化しにくい
お米と一口でいってもさまざまな種類があります。「玄米」「発芽玄米」「もち米」「雑穀米」などが代表的です。
玄米はぬか層が残った状態のもので栄養豊富ですが、消化が悪いため粒のままではなくペーストにするなどの工夫をしましょう。
発芽玄米は玄米より消化しやすいものの、白米よりは消化が悪いため、かなり柔らかく炊くかペースト状にすればわんちゃんにあげてもよいでしょう。
もち米は、白米と同じように炊いて与えることが可能です。雑穀米は麦、粟、ひえなどを混ぜた白米で栄養価が高いメリットがあります。ただし、雑穀米も白米に比べて消化が悪いため、柔らかく炊いたりペーストにしてから与えましょう。
お米アレルギーに注意
アレルギーというと、肉や魚といった動物性タンパク質が原因となるケースが多く見られますが、お米や大豆類などの植物性タンパク質が原因で起こることもあります。
はじめてお米を食べるときには、かゆみや嘔吐・下痢が起こらないかどうか観察しましょう。
肥満・糖尿病の場合は避ける
お米には炭水化物が多く含まれています。炭水化物が多い食材は糖分が高く、血糖値を高めやすい特徴があります。
カロリーも高いため、過剰摂取には注意しなければなりません。過剰に摂取すると糖尿病のリスクが高まり、肥満を招きます。
糖尿病と診断されているわんちゃんは、糖尿病用の療法食を中心に食べるようにして、お米は控えましょう。
お米入りドッグフードのメリット
最近では、お米を原材料に使用したドッグフードが増えています。わんちゃんにお米入りドッグフードを与えるメリットは以下のとおりです。
腸内環境を良くする効果が期待できる
お米は「難消化性デンプン(レジスタントスターチ)」を適量含みます。難消化性デンプンは、食物繊維と同様の機能をもつ、犬の消化酵素のみでは利用されにくい炭水化物です。
腸内の善玉菌(乳酸菌・ビフィズス菌など)に利用されて腸内環境を整えるだけではなく、血中コレステロール、中性脂肪の減少、血糖値の急上昇を抑制する働きもあります。
難消化性デンプンと食物繊維の大きな違いは、ミネラル吸収の作用です。食物繊維は、ミネラルの吸収を阻害するといわれています。一方で、粘度が低く腸内細菌に利用されやすい難消化性デンプンは、大腸でミネラルの吸収を促進することがわかっています。
食物アレルギーの犬でも食べられる
何らかのアレルギーがある犬は年々増えています。約40%の犬が食物アレルギーをもつ、あるいは食物アレルギーの可能性があるといわれています。アレルギーによって引き起こされる症状は、皮膚のかゆみや嘔吐・下痢、鼻炎などです。
ドッグフードの植物系の原材料としてよく使用されているのはトウモロコシ、小麦、ジャガイモなどです。このような原材料にアレルギーがあるものの、お米に対してアレルギーがない場合は、お米が原材料のドッグフードを食べることができます。
お米入りドッグフードのデメリット
一方で、お米の入ったドッグフードには以下のようなデメリットもあります。
軟便や下痢になるおそれがある
ドッグフードを急に変更すると、軟便や下痢になることがあります。主な原因は、いつもとは異なるものを消化する際に消化不良が起こることや、そもそも体質的に合わない食物不耐性、免疫反応が関係するアレルギーなどです。
お米入りのドッグフードは、トウモロコシや小麦などの植物性タンパクに対してアレルギーがあるわんちゃんにおすすめですが、お米に対してアレルギーがある場合は軟便や下痢になってしまうおそれがあるでしょう。
アレルギー体質のわんちゃんは、フード変更の際に注意が必要です。
種類が少ない&高価
お米入りのドッグフードは、ドライフードに原材料としてお米が含まれているものがメジャーですが、 レトルトのおじや、トッピングとして利用できるお米だけで作られた副食などもあります。
しかし、全体的には種類が少なく、値段も高い点がデメリットです。アレルギー用のフードやこだわりのプレミアムフードとして発売されている商品が多くみられます。
おすすめのお米入りドッグフード
【まとめ】お米は犬が食べても大丈夫!アレルギーに注意しながら与えよう
お米が原材料として使用されているドッグフードの効果やメリット・デメリットについて解説しました。
お米はわんちゃんが食べても問題なく、栄養豊富でおすすめできる食材です。炭水化物が多く含まれており、特徴的な難消化性デンプンを含むため、消化管の環境を整えたり、中性脂肪・コレステロールを下げたりする効果が期待できます。
ただし、玄米は消化があまり良くないため、調理方法を工夫する必要があります。ドッグフードであれば、白米のものでも玄米のものでも加熱処理されているため消化に問題はないと思われますが、おなかを壊しやすいわんちゃんは玄米入りのものは避けるのが賢明でしょう。
また、アレルギー体質のわんちゃんは、お米が向いている場合と、下痢になってしまう場合があります。少しづつ様子を見ながらあげるようにしてください。
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