執筆者:大熊 真穂
獣医師。現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経 ...プロフィールをもっと見る
ブリーベリーは、実に含まれているアントシアニンの抗酸化作用が有名です。
では、人間と同じように犬がブルーベリーを食べても問題ないのでしょうか?
この記事では、ブルーベリーが持つ栄養と犬に与えた際の健康上のメリット、与える際の注意点などをまとめました。
犬にブルーベリーを与えても問題はない?
犬にブルーベリーを与えても問題はありません。
ブルーベリーは食物繊維が多く、アントシアニンが豊富な果物です。
甘味があるのはもちろん、ドッグフードのように粒が小さく食べやすいため、喜んで食べる犬が多いでしょう。
ただし、与えすぎには注意しなければなりません。
ブルーベリーはイチゴや梨・スイカなどよりもカロリーが高く、与えすぎると肥満の原因となります。
体重に合わせた適切な量を与えましょう。
ブルーベリーの栄養素
ブルーベリーには目によいといわれており、人間の場合には眼精疲労や視力の改善にも効果が期待できます。
ブルーベリーに含まれる主な栄養素は以下の通りです。
カロリー:可食部100gあたり
それ以外の栄養素:100gあたりの重量(g)
カロリー | 48kcal |
水分 | 86.4g |
たんぱく質 | 0.5g |
脂質 | 0.1g |
炭水化物 | 12.9g |
食物繊維(水溶性) | 0.5g |
食物繊維(不溶性) | 2.8g |
食物繊維総量 | 3.3g |
※引用元:文部科学省│日本食品標準成分表2020年度版
ここからは、ブルーベリーが持つ栄養特性についてご紹介します。
アントシアニン
アントシアニンは、ブルーベリーなどの青紫色の果物などに多く含まれているポリフェノールの一つです。ブルーベリーの他には、ナスや紫キャベツ・黒豆などにも多く含まれています。
アントシアニンは抗酸化作用を持ち、細胞を活性化させる働きがあります。
人間のデータでは、アントシアニンは目の網膜にある血管や神経の細胞を保護する作用があり、目の疲れを回復させるという研究結果があります。
ビタミンA
ビタミンAは、目の健康や皮膚・喉などの粘膜の形成や、健康維持に関する働きを持つ脂溶性ビタミンの一つです。脂溶性のため、水で洗っても栄養が失われることはありませんが、熱にはやや弱いという特徴があります。
ブルーベリーを犬に与える際には、熟した生の果実をおやつとして与えると、加熱によるビタミンAの損失が少ないでしょう。
さらに、ビタミンAには抗酸化作用もあり、免疫機能を正常にする働きやアンチエイジング効果も期待できます。
食物繊維
不溶性の食物繊維が非常に多く含まれています。
食物繊維は消化酵素による分解・吸収はできず、直接栄養として利用することはできません。
しかし、大腸内で腸内細菌により分解されることで腸内環境を整え、さまざまな生理機能に役立つ効果が期待できます。
また、便秘を解消する効果も見込めます。
犬にブルーベリーを与える健康上のメリット
実はブルーベリーが人間と同じように、犬の目の疲労や視力回復に効果的かどうかは明らかとなっていません。
しかし、先述した研究ではマウスでも同様の効果が見られたことから、犬の目にもよい影響を与える可能性が高いと言われています。
実際に、動物用の医薬品会社が、犬猫用のブリーベリーエキス入りサプリメントを販売しており、ロングセラー商品として長い間使われています。
また、ブルーベリーの果実そのものはサプリメントのような効果が得られなくても、食品添加物が含まれておらず低脂肪でヘルシーなため、市販のおやつよりも安心して与えられます。
犬は甘いものを好む傾向がありますが、ブルーベリーは犬の身体に負担をかけないうえに喜んで食べてくれるおすすめの食材です。
そのほか、ある症例報告では、ブルーベリー茎エキス含有サプリメントが腎機能低下の犬に有用であることが確認されています。
犬に与えてよいブルーベリーの目安量
栄養が豊富で健康上のさまざまなメリットがあるブルーベリーですが、与えすぎは肥満や下痢・嘔吐などの消化器症状につながるおそれがあるため、体重に合った適切な量を与える必要があります。
ブルーベリーを与える場合は、おやつとして与えるのがおすすめです。
おやつは、基本的に全給餌量の10%を越えないように量をコントロールしなければなりません。
与えてよい具体的な量は以下の通りです。
体重当たりの1日量のカロリーより、おやつとして与える量を算出しました。
体格及び目安の体重 | ブルーベリーの1日量 |
超小型犬(~4kg) | ~9gまで:小さめの粒10粒 |
小型犬(~10kg) | 9g~18g:小さめの粒10~20粒 |
中型犬(11kg~25kg) | 19g~36g:大きめの粒15~30粒 |
大型犬(26~44kg) | 37g~55g:大きめの粒30粒~46粒 |
超大型犬(45kg~) | 56g~:大きめの粒47粒~ |
※避妊去勢済みの成犬の一般的なドッグフードのカロリー(100g中350kcal)で
一日量の10%で算出
ブルーベリーを与えるときの注意点
ブルーベリーを犬に与える際には、与えすぎに注意することに加えて、以下のようなポイントを押さえておく必要があります。
・体格の小さい犬にはつぶして与える
・ジャムやジュースなどの加工品は与えない
・毎日続けて与えない
体格の小さい犬にはつぶして与える
超小型犬などの体格の小さい犬は、粒の大きさによってはそのまま与えると食道に詰まる危険性があります。
飲み込みやすいよう、少しつぶしてから与えましょう。
つぶしても愛犬が飲み込みにくい場合は、スムージーにするか、皮を取り除いて与えてください。
ジャムやジュースなど加工品は与えない
ジャムやジュースなどのブルーベリーの加工品は、砂糖が使われているため犬に与えるのは控えるべきです。
ブルーベリーに含まれる果糖と、加工品に含まれた砂糖によって糖分の過剰摂取となり、肥満や糖尿病などの病気を引き起こすおそれがあります。
また肥満は、ガンや呼吸器疾患・膵炎の原因となるだけではなく、慢性炎症につながり、寿命が短くなるという報告もあります。
愛犬の健康のために与えたはずが、逆に健康トラブルの原因となってしまうことのないよう、与えるのは熟した果実のみにしましょう。
毎日続けて与えない
一日の許容範囲量であっても、毎日続けてブルーベリーを与えるのはおすすめできません。
ブルーベリーに限らず、身体によいとされている食材でも、毎日同じものを繰り返し与え続けると、アレルギーや食物不耐性の問題が発症するリスクが高まります。
色々な食材をローテーションすることで、それぞれの食材のメリットを最大化し、相乗効果が得られるのです。
さらに、ブルーベリーを初めて愛犬に与える際は、一日の目安量を一度に与えるのではなく、まずは少量を与えましょう。
消化器症状や急性のアレルギー症状が出ないがどうかを確認する必要があります。
万が一愛犬の体調に変化が見られた場合は与えるのをやめ、症状に応じて動物病院を受診しましょう。
ブルーベリーを与えてはいけないケース
基本的にブルーベリーは、量と与え方に気をつければ犬の身体に負担にならず、健康維持にも役立つ食材です。
しかし、以下のような場合は、ブルーベリーを与えることは控えましょう。
消化器症状がある犬や子犬・シニア犬
犬は肉食動物に近い動物のため、健康状態がよくても、ブルーベリーのような食物繊維の多い食べ物の消化はあまり得意ではありません。
そのため、もともと消化器症状がある犬や、子犬・シニア犬など腸の免疫機能が不安定なライフステージの犬には、下痢や嘔吐などの症状が発症・悪化するリスクがあります。
アレルギー疾患がある犬
もともとアレルギー疾患がある犬には、ブルーベリーを与えないようにしましょう。
また、ブルーベリーを与えたあとに消化器症状や皮膚の赤み・痒みなどの症状がでた場合にもすぐに中止しなければなりません。
症状が悪化すると、アナフィラキシーショックを起こして呼吸困難となり、最悪の場合、命に危険が及んでしまいます。
なお、ブルーベリーとよく似た果物である「ブドウ」は、生の果実も、干しブドウなどの加工品も、犬が食べると急性の腎不全を起こす危険性があるため、絶対に与えないでください。
犬にブルーベリーを与えると腎不全になるって本当?
先述の研究報告とはまったく違う結果ですが、犬がブルーベリーを食べて腎不全になったという報告があるという噂を聞きます。
しかし、どれくらいの量で中毒症状が出たのかや、科学的根拠を示す論文や詳細な情報は不明です。
腎機能が低下しているシニア犬や愛犬の体調に不安がある場合は、念のためかかりつけの動物病院で相談することをおすすめします。
まとめ
ブルーベリーは、健康的で犬が好むおやつとして与えられる食材です。
おやつとして与える場合は「全給餌量の10%以内の量までにする」「体格の小さい犬にはつぶして与える」「加工品は与えない」「毎日続けて与えない」などのポイントに注意しましょう。
適切な量と方法でブルーベリーを与え、愛犬の健康維持に役立てて下さい。
参考文献:
腎機能低下犬におけるブルーベリー茎エキス含有サプリメントの効果
文部科学省│日本食品標準成分表2020年度版
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