執筆者:原 京子
動物看護士、ペットショップでの生態管理、動物園飼育スタッフなどを経験 ...プロフィールをもっと見る
犬が寝ている姿は、可愛らしいものから少しおかしなものまでさまざまで、見ていて微笑ましいですよね。
いくつかある寝姿のなかでも「丸まって寝ている」とき、犬はどのような気持ちなのでしょうか。
この記事では、犬が丸まって寝る心理や、注意すべき寝姿や、安眠できる環境づくりのポイントについて解説します。
犬が丸まって寝るときの心理
私たちに色々な寝相があるように、犬の寝姿もさまざまです。
そのなかでも、通称ワンモナイトとも呼ばれる、アンモナイトのように丸まって寝る姿には、どのような理由があるのでしょう。
寒いから
犬が丸まって寝る理由として一番多いのが、寒いからです。
丸くなることで、大切な内臓が冷えないようにしたり、体の表面積をなるべく小さくしたりしています。
寒い冬場に多く見られますが、愛犬が丸まって寝ていたら、部屋の温度が低すぎないか確認しましょう。
巣穴で眠る習性
元来犬は、狭い穴倉を寝床にして生活をしていました。
穴倉の中では、丸まって寝るのが基本です。
その習性から、狭い場所で丸まって寝ることが多い個体も少なくありません。
緊張している
寒くもなく、狭い場所でもないのに丸くなって寝ている場合は、緊張している可能性があります。
犬にとってお腹や鼻先は急所であるため、天敵から守るために丸くなって弱点を隠すのです。
緊張や警戒している可能性がある場合には、その原因を解消してあげる必要があります。
そのほかの寝姿で分かる心理
犬には、丸まって寝る以外にも、さまざまな寝姿があります。
ここでは、寝姿で分かる犬の心理を紹介します。
横向き寝
体を横向けにし、四肢を伸ばして寝ているときは、非常にリラックスしている状態です。
完全に熟睡しているケースも多く、少しの物音では目を覚まさないこともあります。
この姿勢で寝ているときは、そっと寝かせてあげましょう。
仰向け寝(へそ天)
通称へそ天と呼ばれる仰向け寝は、もっとも無防備でリラックスしている状態です。
犬にとって弱点であるお腹をさらけ出して眠ることは、飼い主さんを心から信頼している証です。
「安心」「信頼」「幸せ」を感じている、とてもよい状態だといえます。
添い寝
飼い主さんが寝ている横や足元などで眠る添い寝は、飼い主さんを信頼している状態です。
また、飼い主さんに体をくっつけて寝ている場合は、寒さ対策として、飼い主さんで暖をとっていることもあります。
どちらの理由にせよ、飼い主さんを信用していないと添い寝をすることはありません。
うつぶせ寝(スーパーマン)
両手両足をピンと伸ばしたまま、うつ伏せで寝ているときは、元気が有り余っている証拠です。
子犬に多く見られ、起きてすぐに遊べるよう、この姿勢をとると考えられます。
この寝姿が見られたときは、起きたらたくさん遊んであげましょう。
こんなときは要注意! 体調が悪いときの寝姿
犬は会話ができない代わりに、さまざまな仕草で気持ちを伝えてきます。
寝姿もその一つですが、なかには体調が悪いときに見られるものもあります。
ここでは、体調が悪い際によく見られる、注意すべき寝姿を紹介します。
四肢を開いて横向き
四肢を開いての横向き寝は、暑がっている可能性があります。
お腹を開いて体温を外へ逃がそうとしているため、この寝姿をとると考えられます。
リラックスしている状態と似ていますが、「足を開いている」「パウンティング」をしているなどの違いが見られます。
祈りのポーズ
祈りのポーズとは、前足を伸ばして腰を上げた状態です。
このポーズは、膵炎などによって激しい腹痛を起こしており、寝ても立ってもいられないことからとることがあります。
ほかにも、「耳が後ろに傾いている」「パウンティングをしている」「食欲がない」などの変化が見られるときは、ストレスを感じている可能性が高いです。
体が激しく動く
寝ているときに体が激しく動く場合は、脳の病気が疑われます。
たまにであれば問題はありませんが、毎回発作のように激しく動いたり、寝言をいったりする場合は病気を疑いましょう。
注意すべき寝姿をしているときの対処方法
上記のような注意すべき寝姿を発見した場合、飼い主さんはどのような行動を取るべきなのでしょう。
まず試してほしいのが、以下の2つの方法です。
- ・気になる寝姿を動画に収める
- ・無理やり起こさない
おかしな寝姿をしていると感じた場合、その様子を動画に収めることが大切です。
動物病院に連れて行ったとき、口頭で説明するよりも、動画で実際に見せたほうが分かりやすいためです。
気になる寝姿の全体や顔の表情などを、しっかりと撮っておきましょう。
また、苦しそうに寝ているからといって、慌てて起こすのはよくありません。
普段は温厚な性格でも、痛みや違和感などがある場合、急に起こされると正常な判断ができずに噛みつくことがあります。
動物病院を受診する際でも、緊急な場合を除き、愛犬が起きてから連れて行くようにしてください。
その他の寝ているときの仕草
犬は寝姿以外に、仕草からも気持ちを読み取ることができます。
主な仕草とその心理は、以下の通りです。
体がぴくぴく動く
犬が寝ているときに体をぴくぴくさせるのは、夢を見ているからだと考えられます。
犬が夢を見るのかは、明確にされていませんが、足をぱたぱたさせて走っているように見えたり、穴を掘っているように見えたりすることもあるため、夢をみていると推測されます。
寝言
犬の寝言は、声色や鳴き声もさまざまですが、どれも夢によるものだと考えられます。
夢はレム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)の繰り返しに関係性があり、犬もこの2種類の睡眠を繰り返しているため、夢を見ているのではないかと考えられています。
いびき
犬がいびきをかくのは、リラックスしている状態です。
しかし、肥満や呼吸器系の炎症が原因のいびきは、息苦しさからくるもので、睡眠の質を悪くするおそれがあります。
苦しそうないびきの場合は、動物病院に相談すると安心です。
犬にも睡眠障害はある?
私たちが心身の健康を保つために、睡眠は必要不可欠ですが、それは犬にとっても同様です。
犬は、成犬で1日12~15時間の睡眠を必要とします。
しかし、一度にまとまった睡眠をとるのではなく、一度の睡眠は浅く短いことが特徴です。
浅い睡眠を繰り返す犬であっても、何らかの影響で睡眠を妨げられ質が悪くなると、体や精神状態に悪影響が出ます。
症状としては攻撃的になる・吠える・食欲不振・元気がなくなるなどの精神的な異常のほかに、免疫力や抵抗力が低下してしまいます。
犬が安眠できる環境とは
愛犬が良質な睡眠をとるためには、環境づくりが欠かせません。
犬に適した睡眠環境は、以下の通りです。
- ・暗くて狭い場所
- ・適度な広さ
- ・人通りが少なく静かな場所
- ・トイレと距離がある場所
- ・クレートやデッドスペースをうまく利用する
- ・夏場や冬場は気温にも気を付ける
犬の寝床は、リビングなど人目につく明るい日陰が適しています。
静かだからといって、廊下や玄関など人が行き来する場所は、犬にとって落ち着いて眠ることができないほか、寒暖差も大きいため適しません。
リビングでも、人が行き来する場所やテレビ・ドア・窓のそばは避け、部屋の隅やデッドスペースなどへの設置がおすすめです。
犬の寝床を複数作って置いて、気温や気分などに合わせて、好きな場所で寝てもらうのも、安眠できる方法です。
また、直射日光や寒暖差のない場所が推奨されます。クレートやペットベッド・ケージをうまく活用するのもよいでしょう。
とくにシニア犬の場合は、ペットベッドがあると、体への負担を減らすことができます。
犬は狭く暗い穴倉を寝床としていたため、習性として狭い場所を好む傾向があります。
しかし狭いといっても、犬が一周回れるほどのスペースは必要です。
また、巣穴の中を清潔にしていた習性もあり、寝床が汚れるのを嫌います。
そのため、寝床とトイレは離れた場所に置き、ケージ内に設置する場合は仕切りがあるものがよいでしょう。
夏場や冬場の温度管理も、愛犬が安眠するために欠かせません。
夏場はエアコンを使用して室内を24~26℃に保ちましょう。
冬場はエアコンでの暖房のほかに、ペットヒーターや毛布などを活用して寒さ対策を行うのがおすすめです。
まとめ
- 犬が丸まって寝るのは、「寒い」「緊張している」「習性」の3つの理由がある
- 犬は寝姿によって気持ちが異なる
- 病気が関連している寝姿もある
- 寝姿のほかに、寝言などの仕草でも気持ちが分かる
- 犬が安眠するには、環境づくりが大切
犬が丸まって寝ているときは、寒さ対策・急所を隠している・穴倉で寝ていた習性の3つの理由が考えられます。
もし丸まって寝ていたら、部屋は寒すぎないか、犬にとって何か緊張や不安に感じることはないかを確認しましょう。
部屋の隅や狭い場所、暗い場所で丸まって寝ていたら、習性からくるものと考えられるため、とくに心配する必要はありません。
しかし、なかには病気が関連している寝姿もあるため注意が必要です。
ここで紹介した注意すべき寝姿を参考にして、異変を感じたらすぐに動物病院を受診しましょう。
「愛犬に合うドッグフードがわからない・選べない」と思いませんか?
愛犬の情報を入力するだけで、合う可能性のあるフードを診断します。