執筆者:今井 貴昌
日本獣医生命科学大学卒。地方の動物病院と都内のグループ動物病院で数年 ...プロフィールをもっと見る
豆腐は、タンパク質や脂質など体の基礎となる栄養素を豊富に含み、体の調節をして健康を維持増進させる「機能性食品」としても注目されています。
また、肌の調子を整える大豆イソフラボンを含むことから、美容食としても有用な食材です。「TOFU」という世界共通語も認知されてきました。
そんなスーパーフードの豆腐ですが、犬にはどのような効果が期待できるのでしょうか。
この記事では、豆腐の栄養素や犬に与えるメリット・体重別の目安量・与える際の注意点についてまとめました。ぜひ参考にしてください。
豆腐の持つ栄養素とカロリー
一般財団法人全国豆腐連合会によると、豆腐には木綿・絹ごし・充填(じゅうてん)・寄せ(おぼろ・ゆし)の4種類があります。
100gあたりの各カロリーは以下の通りです。なお、豆腐1パック(1丁)は約300gとなっています。
木綿豆腐 | 72kcal |
絹ごし豆腐 | 56kcal |
充填豆腐 | 59kcal |
寄せ豆腐 | 50kcal |
参照:カロリーSlism
豆腐の三大栄養素は、タンパク質と脂質・炭水化物です。また、レシチン・イソフラボン・カルシウム・ビタミン類などの成分が豊富に含まれています。
ちなみに大豆サポニンは苦みの原因となるため、一般的に市販されている豆腐からは除去されていることが多いそうです。
各成分の含有量と期待される効果
豆腐100g中に含有されている主な成分は以下の通りです。
食物繊維 | 約120mg |
レシチン | 約19mg |
イソフラボン | 約20mg |
カルシウム | 約50mg |
ビタミンK | 約12μg |
参照:カロリーSlism
ここからは、各成分の特徴と期待できる効果について詳しく見ていきましょう。
食物繊維
食物繊維は、可溶性食物繊維(水に溶ける)と、不溶性食物繊維(水に溶けない)に分けられます。
豆腐に含まれる食物繊維は、不溶性食物繊維です。体内で溶けないため、水分を含みながら大腸へと移動します。その結果、糞便量が増えるとともに便が出やすくなるのです。
また不溶性食物繊維は、いわゆるプレバイオティクスの役割を果たします。
プレバイオティクスとは、大腸内の特定の細菌の増殖および活性を選択的に変化させることより、宿主に有利な影響を与え、宿主の健康を改善する難消化性食品成分です。
プレバイオティクスについての詳しい説明は以下のサイトを参考にしてください。
公益財団法人 腸内細菌学会│プレバイオティクス
レシチン(レクチン)
レシチンは、フォスファチジルコリンとも呼ばれる細胞膜の構成要素です。人では、認知症予防や動脈硬化予防・脂質代謝改善・美肌効果などがあるとされています。摂取上限は設けられておらず、中毒症状も報告されていません。
ただし、人には良い効果が期待できるレシチンですが、犬には注意が必要であるという研究もあります。(※1)
レシチンは「抗栄養素」とも呼ばれ、ビタミンやミネラルの吸収を阻害する成分です。また、消化不良による腹部膨満感や嘔気、下痢などを引き起こすことも示唆されています。
そうはいっても、レシチンを大量摂取した場合の報告であるため、たまに少量の豆腐を与える程度であれば、下痢や嘔吐などの症状がなければ問題ありません。
※1:dogs naturally│5 Things All Dog Owners Should Know About Lectins
イソフラボン
大豆イソフラボンはポリフェノールの一種であり、女性ホルモンのエストロゲンと類似した化学構造を持っています。
人にはさまざまな有効性が証明されている一方で、摂取過多には注意が必要です。イソフラボンがエストロゲン類似物質であるということは、体内のホルモンバランスに少なからず影響を及ぼすためです。
食品安全委員会の報告において、人では一日の摂取目安量の上限(約70~75mg/日)に30mgが上乗せされるようであれば摂取過多とされています。
まだ研究段階ではありますが、30頭の犬を用いた実験にて大豆イソフラボンが高濃度含まれているフードを与え続けた結果、ホルモンの値に影響が出たという報告(※2)もあります。
この報告における高濃度イソフラボンフードには、体重1kgあたり1.8~2.6mgのイソフラボンが含まれていました。
まだデータが不足しており、摂取上限や実際の有害性については研究が待たれている状態です。そのため、一概にイソフラボン配合フードが有害であるとはいえません。
カルシウム
カルシウムは生体内でもっとも多いミネラルと言われています。骨や歯に貯蔵されているのはもちろんのこと、血中や細胞内にも存在し、生命活動に欠かせないミネラルの一つです。
血中のカルシウム濃度は厳密に維持されています。
一般的に、獣医療にてカルシウムが問題となる場合、もっとも命の危険があるのは血中のカルシウムが不足してしまう状態です。これを低カルシウム血症と呼びます。
低カルシウム血症の原因は多岐にわたりますが、血中カルシウム濃度が一定値を下回ると、食欲不振や虚脱・痙攣・意識消失などの症状が現れます。
逆に血中カルシウム濃度が上昇(高カルシウム血症)すると、腫瘍性疾患や上皮小体機能亢進症・アジソン病などを考慮されます。悪性腫瘍による高カルシウム血症は犬ではもっとも多い原因のため、精査をするとともに注意が必要です。
ただし健康な子であれば、豆腐の食べすぎによる高カルシウム血症は生じないため、心配はいりません。
ビタミンK
ビタミンKの主な作用は、血液凝固と骨形成です。
血液は、複雑な反応の繰り返しにより必要に応じて凝固します。その過程にさまざまな因子が関与しますが、その因子を生成するためにビタミンKが必要となります。
また、ビタミンKは骨に存在するオステオカルシンというたんぱく質を活性化させ、骨沈着を増加させます。
したがって、ビタミンK不足では出血傾向が認められるようになりますが、一般的にその原因は末期の肝臓病(凝固因子の一部は肝臓にてビタミンKを材料に作られるため)であることが多いです。
一方で、ビタミンK過多による毒性は報告されていません。
エラー! ハイパーリンクの参照に誤りがあります。
犬に与えてもよい豆腐の量の目安
ここまで豆腐の高い栄養価について述べてきましたが、実際どれくらいの量であれば愛犬に与えてもよいのでしょうか。
豆腐を嗜好品として与える際には、一日の適正摂取カロリーの10%未満にすべきであると言われています。
摂取カロリー(RER・DER)についてはこちらの記事を参考にしてください。
愛犬のフードをうまく切り替える方法と、切り替えるべきタイミング
代表的な犬種の適性体重から概算した10%にあたる豆腐(木綿)の量を以下の表にしました。木綿以外の豆腐は、記事冒頭の各カロリーを参考にしてください。
なお、豆腐は1パック約300gとして計算しています。
犬種 | 目安体重(kg) | RER(kcal) | 10%RER(kcal) | 推奨量(木綿) |
トイプードル | 1.8~2.7 | 109~147 | 10.9~14.7 | <20g (さいの目切り 5切れ未満) |
チワワ | 1~3 | 70~160 | 7~16 | <20g (さいの目切り 5切れ未満) |
MIX犬 | <10 | <393 | <39.3 | <60g (1/5パック未満) |
柴犬 | 10.35 | 404 | 40.4 | <60g (1/5パック未満) |
ミニチュアダックスフント | <4.95 | <232 | <23.2 | <30g (角切り1個未満) |
犬に豆腐を与える際の注意点
豆腐は大豆が主原料であるため、アレルギー症状には注意が必要です。
アレルギー性疾患は、大きく「食物アレルギー」と「アレルギー性皮膚炎」に大別されます。
大豆の摂取によるアレルギーは食物アレルギーですが、代表的な症状として、軟便や皮膚炎が挙げられます。食物アレルギー性の皮膚炎では、目や口の周りの炎症や外耳炎が特徴的な症状となるため、獣医師に確認したうえで、アレルギー検査を実施するかを検討しましょう。
加えて、先に述べたレチシンが関与した下痢が生じるおそれもあるため、豆腐を与えてから何らかの不調が見られたら控えるようにしましょう。
まとめ
豆腐は、基本的には犬に与えても問題のない食べ物です。ただし、アレルギー症状や下痢や軟便などを生じるようであれば、無理に与える必要はありません。普段のご褒美やちょっとしたトッピングとして、上述した目安量を参考に与えてみましょう。
いかがでしたでしょうか。
この記事を通してみなさんが幸せな愛犬ライフを送れることを切に祈っております。
「愛犬に合うドッグフードがわからない・選べない」と思いませんか?
愛犬の情報を入力するだけで、合う可能性のあるフードを診断します。