執筆者:大熊 真穂
獣医師。現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経 ...プロフィールをもっと見る
「愛犬には少しでも身体に良いものを与えたいから、国産のドッグフードなら安心」と考えている方は多いでしょう。
たしかに、国産ドッグフードは品質低下や風味の劣化が少ない点が特徴です。しかし、国産ドッグフードを選ぶときには注意点もいくつかあります。
この記事では、国産のドッグフードのメリットとデメリットを解説します。おすすめの国産ドッグフードや、愛犬にあったドッグフードの選び方についてもまとめましたので、ドッグフード選びで悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
国産ドッグフードとは
日本国内で市販されるペットフード(対象は犬と猫のペットフードです)は、「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」により、以下5つの表示が義務付けられています。
- ペットフードの名称
- 原材料名
- 賞味期限
- 原産国名
- 製造業者、輸入業者または販売業者の名前または名称および住所
この表示で、原産国名に「日本」という表示があれば国産ドッグフードです。
国産ドッグフードのメリット
国産ドッグフードの主なメリットは以下の2つです。
酸化による品質低下が起こりにくい
国産ドッグフードは、製造から手元に届くまでの時間が外国産のものよりも短いことが特徴です。
とくにドライフードは、製品の性質上酸化しやすいため、輸送時間や保管期間が短いほうが酸化による品質低下の可能性が低くなります。
小型犬用ドッグフードの種類が豊富
日本は小型犬の飼育頭数が多いため、小型犬の身体や特徴に合わせた国産ドッグフードの種類が豊富です。また、手作り食の代用やトッピングとして利用できるものも増えています。
国産で産地の記載があるものはさらに信頼性が高く、ふるさと納税の返礼品に指定されているドッグフードもあります。
このように、愛犬の健康管理と同時に国内の地方経済のちょっとした応援ができることは、国産ドッグフードだけが持つメリットです。
国産ドッグフードのデメリット
一方で、国産ドッグフードには以下のような注意点もあります。
原材料もすべて日本製とは限らない
「原産国名に日本とあれば国産のドッグフードである」と述べましたが、原産国とは最終加工工程を完了した国を表します。
最終加工工程とは「実質的な変更をもたらす行為」であり、ウエットフードのレトルト殺菌工程や、ドライ・ソフトドライフードの押し出し成型行程(原料を加熱・加圧して成型・加工すること)などのことです。
そのため、国産ドッグフードだからといって、原材料もすべて日本のものを使用しているとは限りません。
たとえば、海外からの原料を国内製造のドライフードの粒と混ぜて製品化していても、製品の大部分を国内製造の粒が占めるのであれば、国産と表示することが可能です。
原材料もすべて国産にこだわりたい方は、メーカーのホームページなどを確認し、ご自身が安心して愛犬に与えられる内容かどうかを判断しましょう。
外国産よりも国産のペットフードが必ずしも安全とはいえない
実は、日本のペットフードの安全基準は、アメリカやヨーロッパと比較してかなり緩いといわれています。
ペット先進国のアメリカでは、アメリカ政府と各州の2段階の法により人間の食品と同様の厳しい規制があり、AAFCO(Association of American Feed Control Officials;米国飼料検査官協会)のペットフードの栄養基準は、日本を含め国際的な基準として確立されています。
また、ヨーロッパ(EU域内)では、人間の食品の衛生管理と同様の衛生管理(HACCP: Hazard Analysis and Critical Control Point)が、ペットフードにも義務付けられています。
一方、日本では「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」が2009年に施行される前までペットフードに関する法律は存在していませんでした。
現在も自主的に人間と同様の安全管理を行っているペットフードメーカーはあるものの、アメリカやヨーロッパのような食品の安全基準と同等の規定はありません。そのため、国産のドッグフードであれば安心とは限らないのです。
なお、日本にペットフード安全法ができた背景には、2007年にペットフードのメラニン汚染による健康被害が発生したことがあります。
世界的なペットフードのリコールに発展したこの件で、日本国内でも同ペットフードが販売されていたにも関わらず、法律の規制手段がないためペットフード業界の自主的な取り組みに委ねるしかなかったことがきっかけとなりました。
国産ドッグフードか外国産ドッグフードはどちらを選ぶべき?
メリットやデメリットをふまえると「国内産なら安心」「海外産のほうがかえって安心」という考え方でドッグフードを選ぶことはおすすめできません。
国産にこだわりすぎず、ドッグフードのラベルを確認して愛犬の身体に合ったものを選ぶことが大切です。
なお、ドッグフードを変更する場合は、一気に変えるのではなく、10日ほどかけて少しずつ変更する方法がおすすめです。
獣医師おすすめの国産ドッグフード
最近では、飼い主さまに「先生、手作り食はどう思われますか」とご質問を受けることが非常に増えてきました。
その際には、「手作り食をメインで与えるのであれば、動物栄養学について学ぶことをおすすめします」とお答えしています。
なぜなら、「人間の身体に良いものを何となく混ぜ合わせたレシピ」の食事では、体調を崩すケースが多いからです。カルシウムとリンのバランスが悪い、十分なタンパク質が摂れていない、犬にとって消化が悪いといった事態に陥りやすくなります。
ココグルメシリーズのドッグフードは、原材料も国産にこだわって作られています。
手作り食の代わりに与えるほか、普段食べているドッグフードにトッピングとして利用することも可能です。安全性を考慮して手作り食を与えたいものの、動物栄養学の知識がなく食事のレシピに迷われている方は、ぜひ試してみてください。
愛犬の身体にあったドッグフード選びのポイント
愛犬のライフステージや体質、嗜好性によって選ぶドッグフードは異なりますが、愛犬の身体に合ったものを選ぶことが大切です。
身体に合うドッグフードとは、その犬にとって消化や吸収が良いフードのこと。高価なドッグフードが必ずしも消化吸収が良いフードとは限りません。
では、消化吸収の良いドッグフードは何を基準に選べばよいのでしょうか。
消化吸収がしっかりできているか否かは便の状態で、栄養状態が充実しているかどうかは被毛や皮膚の状態でチェックします。
それぞれ詳しく解説します。
便の状態
消化吸収がしっかりできている便の状態は、ティッシュでつまんでも崩れずに地面もほとんど汚れない固さです。
また、便の回数は食事の回数プラス1回くらいで、量は少なめが理想といえます。
被毛・皮膚の状態
栄養状態が良い犬の被毛は艶があり、毛量も多い傾向があります。
また、かゆみや赤み、湿疹など皮膚のトラブルが発生しにくい状態です。
犬の特徴にあったドッグフードを選ぶ
犬種やサイズ、生活環境によっても適したドッグフードは異なります。
たとえば、超小型犬であれば口やあごが小さいため、粒が小さく食べやすいものが合っています。
中型犬や大型犬は、身体が小さい犬よりも骨や関節に負担がかかりやすく、とくに太らせないように注意しなければなりません。
また、運動が得意で活発な犬と、ハードな運動を好まない犬では、消費カロリーが大きく変わってきます。いろいろなドッグフードを試して、愛犬の特徴や生活環境に合っているかをチェックしてみてください。
国産ドッグフードのラベルの見方
ドッグフードを選ぶ際には、パッケージのラベルを確認することが大切です。ここではドッグフードのラベル表示とチェックポイントについて解説します。
ドッグフードのラベル表示
ドッグフードのパッケージのラベルには、法律やルールによって決められた情報が記載されています。
前述のとおり、ペットフード安全法により定められている情報(ペットフードの名称・原材料名・賞味期限・原産国名・製造業者、輸入業者または販売業者の名前または名称および住所)は安全確保のための情報です。
消費者であるわたしたちが適切な製品を選ぶための情報としては、ペットフード公正取引協議会が作成した「ペットフードの表示に関する公正競争規約」により、以下の表示が義務付けられています。
- ペットフードの目的: 総合栄養食・間食・療法食・その他の目的食
- 内容量
- 給与方法
- 成分: (粗)たんぱく質、脂質(粗脂肪)、粗繊維、(粗)灰分、水分の重量比%
安全かどうかは原材料名をチェック
原材料名は、多く使用されている順(水分を含んだ重さベース)に記載されています。
そのため、最初の5つを見れば、そのフードのおおよその構成がわかります。
さらに、原材料名にはペットフード製造に使用されている添加物を含むすべての原材料を表示しなくてはなりません。
愛犬の健康のためには、できるだけ人工的な食品添加物が使われていないフードを選ぶことをおすすめします。
【まとめ】国産ドッグフードを選ぶときは原材料を確認しよう
国産ドッグフードには、製造から手元に届くまでの時間が短いため酸化しにくい、飼育頭数が多い小型犬用のドッグフードの種類が豊富などのメリットがあります。
一方で、国産だからといって全ての原材料が国産とは限らないほか、海外産より必ずしも安全性が高いとはいえません。
原材料や添加物の有無などドッグフードの内容を意識しつつ、便と皮膚・被毛の状態をチェックして愛犬の身体に合ったものを選ぶことが大切です。
「愛犬に合うドッグフードがわからない・選べない」と思いませんか?
愛犬の情報を入力するだけで、合う可能性のあるフードを診断します。